第1-28話 命がけのミッションって、何だ!?
冒険者にはパーティーランクが存在し、パーティーメンバー全員のランクの平均値(端数切り捨て)がパーティーランクとなる。このパーティーランクが上がれば、受注出来るクエストの難易度も、報酬も、得られる名声も、そして責任も義務も上がって行く。
これまで『ファングドフラワー』は、アゲハがランクB、ヒサゴとレッカがDで、パーティーランクはDだった。だが、ヒサゴがランクCに昇格した事により、パーティーランクも3人の平均でCに上がった。そして『南都』の冒険者は、意図的にパーティー分けを繰り返して新人を加入させ、パーティーランクを上げすぎない様にする慣習があった。
今回の、『ファングドフラワー』の様に、ランクが上がりすぎて、危険なミッションを受けさせられないために…
※ ※ ※
2枚の掲示物が貼られた瞬間、それまでいつもの騒々しさだったギルドの『酒場』は、静寂に包まれた。冒険者達は皆、それを見て、何が起きたのか察したのだ。
「アースドラゴンだと…」「おいおい、『南都』にそんなやべぇ奴は来ねぇ筈だろう!?」「そうだ!『北都』の冒険者共が全部食い止めてて…」「モンスターは北から来るばかりじゃねぇんだ。大体、『奥都』は今、化け物共の領分だしな…」
冒険者達が噂し合っている。
「うそでしょ………」
アゲハは呟いた。身体の芯が冷えた気がした。そして、心臓が早鐘の様に鳴り響くのを感じた。
(あたし達が、ヒサゴとレッカが、アースドラゴン退治!?出来る訳無い!勝てる訳無い!!第一、あの子達はそんな事、望んで無い!!
しかもアースドラゴンって、あたしが『北都』最後のクエストでしくじった相手!?それが再び…
あああ、あたしの、あたしのせいだ。あたしがあの子達を巻き込んだせいだ…)
アゲハはカウンターのヒサゴとレッカを見つめた。
「ひとまずこれ…Cランク冒険者のタグです。おめでとうございます…」
受付嬢がヒサゴに冒険者タグを渡す。
「ありがと…」
受け取るヒサゴの表情は、アゲハの側からは見えなかった。
「それから…これであなた方『ファングドフラワー』は、『南都』唯一のランクCパーティーになりました。非常にイレギュラーな事態ですが原則は曲げられません。『北都』も『ランクCがいるならそっちでやれ』と言ってます。そして、ミッションですので拒否出来ません。アースドラゴン討伐ミッションは、『ファングドフラワー』に行っていただきます…」
「しょうが無いね…『離宮』の王族には、下々の事なんか見えないんだろうし、『北都』のエリートどもも、あたい等の尻ぬぐいはうんざりなんだろうさ…」
「遺言状等がございましたら、ギルドが引き受けますが…」
「家族なんていない…」
「申し訳ございません…せめて私の伝手で、助っ人のヒーラーを探してみます…」
「助かる………」
受付嬢は、カウンターの中に引っ込んで行った。
「あ、あの…ヒサゴ…ごめ…」
謝罪しようとしたアゲハだったが、ヒサゴはカラカラ笑って、
「あ、あはは…良かったんじゃあない!?これであたい達は、当分、毎食のおかずが一品増えるし、あんたも『北都』に帰る糸口が掴める!!」
「…っ!! 気づいてたの!?」
「スカウトは情報収集が命なんだよ!パーティーメンバーの心理把握も、お・手・の・物!!ま、全てあたいの目論見通り、ってね!!」
おどけて言うヒサゴ。
「それじゃ、ミッション決行までにお互い色々準備しないと。じゃあね!」
「………」
アゲハは、何も言えなかった。
「ようし、野郎どもぉ!!仕事の時間だぁ!!」
男性冒険者の誰かが叫ぶと、
「クエストボード急げ!!ミッション関連のサブクエストが出るはずだ!!」
「割り込みすんなよ!!早い者勝ちの文句無しだ!!」
「新入りはしばらく休んどけ!!パーティー組み直すぞ!!」
これまでのだらけ具合とは別人の様に、一斉に動き出した。
※ ※ ※
「「「ギャハハハハっ!!」」」
いつもの様に下品な笑い声を上げて酒盛りするスカーとベアー等6人。そのすぐ側に、俯いたままのアゲハが立っている。
「………あんた達も、クエスト受けたのね…」
アゲハが言うと、スカーは、
「しょうがねぇだろう!?俺達、こういう時に命張るから、普段バカやっても許されてんだからよぉ!!」
スカーとベアーは、分割したパーティーを、新人を抜けさせてベテランだけで再結成した。受注したのは、斥候。アースドラゴンの偵察クエストだ。モンスターに接近しなければならない危険な任務で、ミッション受注者、つまりアゲハ達に万一の事があれば、逃走支援もしくは代わりに討伐しなければならない。
「『離宮』の王族共は金離れがいいぜぇ!!お陰で俺達ゃ報酬の前金で一杯、生還出来りゃ残り半金でもう一杯、手柄上げりゃあ危険手当でもう一杯だぁ!!」
「「「ギャハハハハ!!」」」
「んで、『祭壇』に入れりゃ、毎日タダ酒にありつけるなぁ!!」
「「「ギャハハハハっ!!!」」」
ギルドの『酒場』の隅にある『祭壇』には、クエスト中に命を落とした冒険者達のタグが、大量に祀られている。『南都』の冒険者は『祭壇』に、クエスト出発前の祈りと、日々の献杯を欠かした事が無い。万一の事があれば、いつでもそこに入るという覚悟の現れなのだろう。
「おおいアゲハぁ!!そんな所に突っ立ってねぇで、こっち来て酌でもしねぇかぁ!?」
スカーの言葉にアゲハは俯いたまま、『酒場』を後にした。
「なぁんでぇ、つれねぇの…」
スカーは呟き、最後にこう漏らした。
「最後になるかもしれねぇのによぉ………」
ビキニアーマー女戦士:「アタシもサブクエスト受ける事にしたんだよぉ…化け物の針路上の村の住民の避難支援。ま、村人の半分は男だから、ブルってる奴にアタシのおっぱい揉ませたら元気になるでしょ。」
ヒサゴ:「村人の残り半分は女で、あんたの胸揉ませられた旦那の家庭が崩壊するの分かってる!?」




