第1-27話 あたいの目論見って、何だ!?
もうどれくらい前になるだろうか。ヒサゴがまだレッカと2人で、シティーアドベンチャーに勤しんでいた頃…
彼女は、そのシティーアドベンチャーすら、まともにこなせないでいた。
(同期の野郎共は順調に上に行ってて、パーティーランクを上げすぎない工夫までしてるって言うのに…)
今、ヒサゴが受注しているクエストは、盗賊である事を隠して貸家に住み着いた男の追い出し。だが、童顔で小柄な彼女が凄んだ程度で、海千山千の盗賊は嘲笑うだけで気にも留めなかった。
(女ってだけで、孤児ってだけで、何でこんな…)
「…進展無しか…」
あいつの弱み…追い出すためのネタは既に見つけてあった。あいつは盗賊ギルドが禁じ手にしている麻薬の密売に手を染めている。例えば小火騒ぎでも起こせば、あいつは慌てて麻薬を持って貸家から出て来るだろう。そこを押さえれば、あいつはおしまいだ。だが、そんな都合の良い小火なんて起こせる訳が無い。
「そろそろ何とかしないと…」
ヒサゴがそう呟きながら、路地裏の水路にかかった橋を渡ったその時、
「やっぱり『南都』なんかに来るんじゃ無かった!!」
誰かの声がした。すぐ目の前の家の前だ。そこにいたのは、とんがり帽子に胸元の開いたへそ出しビスチェとミニスカートという格好をした、若い女性。
(あの娘は、確か、今日、ギルドにやって来た、魔法使いの、確か名前は…アゲハ、だっけ…!?)
でもあの娘、今、何て言ってた…!?
「『北都』に...帰ってやる!!一刻も早く!!」
その言葉を、確かにヒサゴは聞いて、そして考えた。ヒサゴ達の問題はただ単に今受けているクエストの進捗が良くないだけでは無い。そもそも戦力が足りないのだ。そしてアゲハは、恐らく『北都』から、本人としても不本意な形で追われ、『北都』に帰りたがっている。そのために一番手っ取り早いのは、『南都』で実績を積む事だろう。『北都』で頑張っていたという事は、実力も悪くはないはずだ。
新たな戦力を欲しているヒサゴと、実績を欲しているアゲハ。その2人の思惑が、ヒサゴの頭の中で組み合わさった。
(アゲハを、自分達のパーティーに入れよう。)ヒサゴは思った。そのためには何か、話の糸口が必要だ。後はスカウトの話術でどうにでもなる。
(えーっと…何でもいいからあの子の興味を引かなきゃ…でも魔法使いの興味を持ちそうな事って…魔法…あ、そう言えば…)
ヒサゴはすぐそこの家が看板も出ていないスクロールショップで、だいぶ前に自身の芸の足しにと結構高いスクロールを買った事を思い出した。スカウトの自分が魔法を使えば、彼女はきっと食いついて来るだろう。
「もう夕方か…」
ヒサゴは独り言を装ってアゲハに聞こえる大きさの声で話し、腰のランタンを取り出し、術式を走らせた。
「ラン、ファイヤー」
そしてヒサゴの目論見どおり、アゲハはヒサゴに興味を示し、彼女達の冒険者パーティーに加入した。アゲハの実力は悪くないだろうと思っていたが、ランクBだったのは想定外だった。彼女を加えた女ばかりの3人パーティー、『ファングドフラワー』は順調に戦果を上げて行った。そして、今、
実力者を引き入れてパーティーを立て直した手腕を評価され、ヒサゴはランクCへ昇格し、ヒーラー無しのたった3人でアースドラゴン討伐ミッションを受けさせられる事になったのだ…。




