表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファイヤーボールって、何だ!? 〜呪文屋ロクスケは術式を走らせる〜  作者: 白洲詠人
第一部 ファイヤーボールって、何だ!?
14/85

第1-14話 『南都』の冒険者って、何だ!?

一方、ヒサゴとレッカが冒険者ギルドに帰って来ると、1組のパーティーがカウンターで手続きをしていた。


「ターゲットは死亡だ…」

リーダー格の男がそういって、チャリン…血まみれの冒険者タグをカウンターに投げる。


「確認しました…クエスト、コンプリートです。」

受付嬢が言う。ヒサゴがクエストボードを見ると…行方不明冒険者捜索クエストの掲示がはがされていた。


それを複雑な思いで見つめていたヒサゴに、レッカは、


「あれって『死んでた』のかな、それとも…」

「さあ…」

「そして、行方不明って、クエスト中の事故だったのかな、それとも…」

「さあ………」


報酬を受け取って男達が去った後、代わってカウンターにやって来たのはスカーのパーティー。明らかに彼等より経験の浅そうな冒険者を2人連れている。スカーは受付嬢に言う。


「パーティーの編成変更だ…」


     ※     ※     ※


同時刻、ロクスケのスクロールショップ…


アゲハ蝶(スワローテイル)………!?」


ロクスケがそう言った次の瞬間、2人は同時に飛び退く。


ロクスケは中腰のまま、アワアワと意味不明な事を言って戸惑い、


アゲハは床にぺたんと座り込んで、左手で短いスカートの裾を押さえ、ロクスケを羞恥と怒りの混じった目で見上げ…だが、アゲハの怒りと羞恥は、驚きへと置き換わる。


(ロクスケが…魔法を使った!)


『奥都陥落』以降現在に至るまで、現役冒険者のほぼ全員が、キンダーガーデン出身の孤児。アゲハと、ロクスケもその1人だ。


キンダーガーデン出身の孤児達は、冒険者として一定期間活動する事で、自身のこれまでの養育費の支払いを免除されるが、それ以外にも、事故等で冒険者としての活動を継続出来なくなった場合にも、養育費の支払いを免除される。


レッカは、『北都落ち』のアゲハの事を、大怪我をして冒険者を続けられなくなったのだと勘違いしていた。これと同じ様に、アゲハも、冒険者を辞めたロクスケの事を、大怪我をして冒険者を続けられなくなったためだと思っていた。


だがスクロールショップで再会した時、ロクスケは店の奥からアゲハの喘ぎ声を聞きつけ、歩いて来て、床に落ちてたスクロールの芯を手に取り、白紙になった事を目視確認した。つまり今のロクスケは目も耳も不自由になった訳ではなく、手足も問題無く動かせる様だ。ならロクスケは何等かの事情で魔法が使えなくなったんだ、魔術師の制服でもあるローブを脱ぎ、(スタッフ)とともに壁にかけていた事もそれを裏付けている。アゲハはそう思っていた。


だが…


「ロクスケ………あんた…魔法が使えるの!?」


「当たり前だろ!?俺は魔術師なんだから…」

抜いた短杖(ワンド)を腰に戻しながら、平然と答えるロクスケ。


「じゃああんた、冒険者を辞めたのって…」


「自主的に、辞めた。」


アゲハの顔から血の気が段々失せてきた。

「じゃあ………養育費は!?活動分を差し引いても、結構な額になるはずよね…!?」


「………結構きついぞ。」


「………」

一瞬、アゲハの意識が飛んだ。そしてアゲハの顔色が青から赤に転じ、


「何考えてんのよ〜〜〜っ!!」

叫ぶ。


「あ、あんた何考えてんのよ!!冒険者辞めて、借金背負って、こんな誰も来ないスクロールショップなんてやって、家賃にも事欠いて…」


「俺は冒険者を辞めてよかったと思ってる。」

またもや平然と言うロクスケ。


「あ、あたし達は、冒険者になるしか、生きてく道が無いの!!冒険者になって!モンスターを倒して!!強くなって!!!みんなから必要とされて!!!!」


「みんなの評価なんか知ったことか!!」


「何も持ってないあたし達は、世間から必要としなけりゃ生きて行けないでしょ!?」


「ああ、俺達は何もかも失った。残された命と身体と自由まで、世間に奪われてたまるか!!」


「誰かが北の大地から攻めて来る化け物を食い止めて、『奥都』を取り戻さなきゃならないでしょ!?」


「それって本当に俺達である必要があるのか!?」


「あんたは世の中に少しは興味を持ちなさいよ!!こんな自分だけの穴ぐらに閉じこもってないで!!」


「俺達に世の中は何をしてくれた!?無いよりましな救済策…いや、苦界に閉じ込めて!!閉じ込められるよりは閉じこもった方がましだろう!?」


「それで食うに困ってちゃしょうがないでしょう!?あんたの言う通り、無いよりましなのよ!!あたし達は冒険者として、生きてくしか無いの!!」


「だからと言って、そんな事してまで…」


ロクスケの言葉にアゲハも心当たりがあった。先日のシティーアドベンチャーの趣旨は、本来、盗賊を借家から追い出す事だけだった。アゲハはそこにビキニアーマー女戦士の告発を付け加えた。あの女をヒサゴ達と共通の敵に見立て、成敗する事で、ヒサゴ達の歓心を買い、アゲハを仲間として受け入れさせた。


アゲハが『北都』へと帰る、その()()として()()するために…


「あ、あの子達だってあたしに感謝してた!!」


「だからってお前…」


「悪い様にはならないはずよ!!もうあの子達は実績を積み始めてるの!!」

それからアゲハは立ち上がり、とんがり帽子を被り、杖を持って、ロクスケに背中を向ける。


「あんたみたいなのがいるから、あたしは『北都落ち』ってバカにされんのよ!!」

吐き捨てて出て行く。


後には、呆然となるロクスケが残された。そして…


ロクスケはアゲハがこの店に来てからずっと感じていた違和感、もとい、既視感の理由に気づいた。


アゲハは、『北都落ち』。ロクスケと同じ『北都落ち』。


かつてロクスケがパラディンのパーティーを追放され、入れ替わりに入って来た魔術師…


「あれが、あいつだったのか…」


     ※     ※     ※


一方のアゲハは…


カランカラン!ドアベルを鳴らして冒険者ギルドに入ると、そこには4人ずつ2組の男達が、向かい合って立っていた。


「じゃ、あばよ。」

一方の4人の右端に立ってた男…スカーは言った。

「ま、これからもここで顔合わすけどな…」

もう一方の4人の左端に立つ男…ベアーと呼ばれる髭面は言った。


「ねえ、どうしたの!?」

アゲハが男共を見つめていたヒサゴとレッカに聞くと、ヒサゴは、


「パーティー分けだってさ。」

と答えた。言われてみれば、スカーとベアーと、あの8人の内6人は、ついさっきまで同じパーティーとして活動していたはずだ。


「喧嘩でもしたの…!?」

アゲハはたずねたが、ヒサゴは肩をすくめて、

「ううん。あいつらのパーティー、最後の1人が昇格して全員ランクCになったから、パーティーを分けて、それぞれランクDを入れたの。」

新しい4人パーティー2組の新人2人は、どう見ても他の6人より見劣りする。


「何でそんな事するの!?それじゃあパーティーランクが下がっちゃうじゃない!?」

実際、ギルド所属パーティー名が記されている掲示板には、新しい2パーティーの名前が、アゲハ達『ファングドフラワー』と同じランクDの欄に記されていた。


「パーティーランクを下げるためによ。下手にランクを上げて、危険なミッションを受けさせられないために、ね。」


何言ってんの、信じられない。アゲハはその言葉を咄嗟に飲み込んだ。


「ま、モンスター討伐出来る様になったのはありがたいけど、あたい達も安全第一で無理せずやりましょ。」

「…ええ。」

ヒサゴの言葉にアゲハは同調した。


今の冒険者は、『奥都陥落』で発生した孤児達が、国に育ててもらった代償に仕方なくやる物、無いよりましな救済策。


誰も『冒険』を求めていない。


命がけの危険に晒され、逃げてもモンスターに殺されるか、仲間だった冒険者に追われるか…だったら命を落とさない様に大怪我しない様に、決められた年月が過ぎて晴れて自由の身になれるまで、安全なクエストをこなして過ごした方が利口。


『北都』のエリートとは違う。冒険なんて馬鹿らしい。それが『南都』の冒険者。


(みんなぬるま湯に浸りきってるわね…ここの連中は!!そして、そのぬるま湯からも逃げた腰抜けまでいる!!でも………


あたしは、違う!!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ