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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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失いたくない暖かさ

 ある日の夜。

 アーシャは汗だくで目を覚ました。


「は!?はぁ、はぁ……」


 肩で息を始めたアーシャは、身体を丸めた。

 発作を抑えようにも、焼けた夜が視界の端に張り付く。


「(なんだ、これ……なんで)」


 次第に右腕の火傷痕が熱を発し、アーシャは右腕を握り締める。

 燃えた家と家族達が脳裏を過ぎり、焦げた臭いが鼻の奥を焼く。

 視界は涙で滲み、枕を濡らす。


「なんで、だ?急に」


 自分の感情に戸惑っていると、目の前のカーテンが開く。


「ッ!」


 反射的に後ろへ下がるも、視界に入った人物が誰か悟る。

 おかげで、震えは僅かに収まる。


「……フィリア」

「マスター、ご無事ですか?」

「……」


 パジャマ姿のフィリアの言葉に、アーシャは静かに頷いた。

 彼女は周囲を見渡すと、ゆっくりとベッドに入って来る。


「では、今回も」

「……ありがとう」


 弱々しくお礼を言うと、カーテンはフィリアの手で閉じられた。

 そして布団にフィリアが潜り込み、アーシャは彼女と手を繋ぐ。


「……また、怖い夢ですか?」

「違う、急に、怖くなって、目が覚めた」

「……最近、色々ありすぎましたからね」

「ああ」


 先日の改造された同胞達の姿が、脳裏に浮かんだ。

 思い出すだけでも、視界が歪む。


「なんであれ、どうぞ」

「ありがとう」


 もう彼女の胸を借りるのに、躊躇は無かった。

 伸ばされた腕の間に入り込み、フィリアに抱き着く。

 不思議な心音と、彼女の温かさに、アーシャは表情を緩ませた。


「……ゴメンな、情けないマスターで」

「良いんですよ、私だけの弱いマスター、役得です」

「……なら、もっと弱くなってもいいよな?」

「え?」


 フィリアの言葉に甘えたアーシャは、フィリアを抱く力を強めた。


「もう、あんなのは、嫌だ」


 少し力を込めただけで、折れてしまいそうな身体。

 そんなフィリアに身体を預け、言葉を喉に引っ掛けた。


「もう誰も、失いたくないんだ」

「ッ」


 自分の身体で、フィリアを包み込んだ。

 息を吸う度、胸の奥が裂ける。


「……」

「……ん?フィリア?」

「ちょ……くる、し……」


 フィリアに肩を叩かれたアーシャは視線を落とし、彼女の様子を見た。


「あ」

「プハッ!」

「……ご、ゴメン」


 急いでフィリアの顔を引き離すと、彼女は顔を真っ赤にしながら目を回していた。


「き、気をつけて、下さいね」

「ごめんって」


 少し声を太くして来たフィリアに睨まれながら、アーシャは謝った。

 そして、フィリアの小さな手に、頭を撫でられる。


「……ですが、それだけ恐れている事は、わかりました」

「ま、まぁ、そうだが」

「大丈夫です……何があっても、私は貴女の隣に居ます」

「だと良いんだが」

「……ちゃんと生き残りますよ、そうすれば、何度でも貴女のそんな顔が見れますから」

「……ム」


 真剣に悩んでいると言うのに、フィリアから言われた言葉。

 頬を膨らませたアーシャは、彼女の頬を抓る。


「ムギュ」

「こっちはマジで心配してんだよ」

「ちょ、痛、わかりましたって」


 気の済んだアーシャは、フィリアの頬を手放す。

 少し腫れた頬を撫でるフィリアに、細めた目を向けた。


「さっきも言ったが、私は本当に心配なんだよ……前科有るし」

「う」


 アーシャは、以前フィリアが斬られた個所をさすりだした。

 だが、代わりにフィリアの表情に影ができる。


「了解しました、けど、また置いて行かれるのは嫌ですよ」

「……わ、分かった」


 アーシャはフィリアと手を絡め合い、目を合わせる。

 改めて見るフィリアの綺麗な瞳に、心臓が強く打つ。


「ッ……じゃ、おやすみ、だな、もう眠れそうだ」

「そうですか……でも」

「ああ、今夜も、一緒に、居てくれ」

「もちろんですよ、マスター」


 重くなって来る瞼と、強くなる眠気に身を任せた。

 フィリアの存在を確かめるように、手を強く握り締めながら。


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