新しい依頼
次の日、アーシャとフィリアはエターナルの支部へと向かっていた。
「たく、コマンダーめ、よりによって、マキナの依頼なんて」
「けど、パッタリ連絡が途絶えたとの事ですし」
「そうだけど……う、寒気が」
鳥肌を立てながら体を震わしたアーシャは、以前を思い出して両腕をさする。
断りたかったが、レイブンからの圧力に屈して引き受ける事となった。
「……えっと、依頼を受け取りに行くだけ、ですよね?」
「……ああ、そうなんだけどよ」
「な、何か?」
冷や汗をかくフィリアの為に、アーシャは嫌な過去を掘り起こす。
「い、以前は、その、依頼書に、婚姻届とウェディングドレスが同封されてた」
「うえ……ご、ごめんなさい」
「いや、私が勝手に言っただけだ」
思い出した事で、アーシャの胸はムカついた。
忘れる為に、二人は少し足を速める。
「はぁ、そろそろ着くな」
「はい」
整理券を受け取った後で、依頼受注用の窓口へフィリアと赴く。
「……ここが受注ようの窓口ですか」
「ああ、プライバシー保持のために、個室になってる」
電話ボックスのような広さの部屋へ入り込み、扉を閉めて目の前の端末へ目を向ける。
ライセンスを読み取らせ、マキナからの依頼へ目を通す。
「……お、おいおい」
「マスター?い、依頼内容は?」
「きゅ、救助要請だそうだ、しかも、ほ、報酬は……ま、前金で、50億」
「そ、そんなに?」
何度確認しても、内容に変わりは無い。
あまりの金額設定に、端末を操作する手が震えてしまう。
「ひ、表示ミスか?ぜ、全部で、100億だぞ、これって……」
それどころか、嫌な予感まで過ぎって操作のミスを連発する。
「あ、やべ、画面戻った」
「あ、あの、何か不都合でも?」
「不都合と言うか、こういう交渉無しの高額依頼って、だいたい良くない事が起こるっていうか」
「よ、良くない事って」
「依頼主によるが……アイツの場合、この金額だと……命に係わるかもな」
「……」
青ざめた顔のフィリアを横目に、依頼の受注を終えたアーシャは内容の入ったカードを受け取った。
その次に、目の前の端末からケースが出現する。
「それは?」
「……マキナからのプレゼントらしい」
ケースを目の前に持って来ると、アーシャは目を細めた。
「はぁ……キモイ物じゃないと良いんだが」
「……例えば、何ですか?」
「……言ってない筈なのに、サイズがぴったりの下着、とか」
「……」
顔を青ざめたフィリアを横目に、アーシャはケースを下ろした。
深いため息と共に、二人は個室から出て行く。
「そ、それで、その……結局マキナさんと言うのは、不審者なんですか?技術者なんですか?」
重たい足取りで、アーシャ達は支部から撤収。
そのうえで、フィリアの質問に答える。
「……サーバルと買い物した時、ジャンク屋の話をしただろ?ソイツの事だ」
「あー、その方でしたか」
「ああ」
あまり思い出したくないマキナの姿を思いだし、アーシャは話を続ける。
流れるような長い金髪と、そこから現れる長めの耳。
そんな彼女に、言い寄られる姿を思いだす。
「(やべ、また寒気してきた)」
「それにしても、そんな方とお知り合いとは」
「まぁ、知り合いと言うより、ビジネス相手だ……」
そう呟きながら、アーシャは今までの依頼を思い出す。
「けど、アイツが大金支払ってまで助けを呼ぶなんて、ただ事じゃないな」
「と言うと?」
「……伊達に、昔から生き残ってる連中じゃないって事だ」
「そんな人が、救援要請」
お互いに目を合わせ合った二人は、アイコンタクトを取り合う。
最近の事も脳裏に過ぎり、アーシャ達の目つきは鋭くなる。
「……急いだ方がいいですね」
二人は手を繋ぎ、母艦へと戻る。
最後の温もりが、この繋がりで終わらない事を心のどこかで願いながら。




