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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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依頼への幕間

 アーシャとフィリアがエターナルの支部から帰るなり、ソウリュウは慌ただしくなった。

 警告音と共にコンテナが運び込まれ、金属音は絶える事無く響く。

 スタッフ達は艦内を駆けまわり、作業を行う手を緩めようとしない。

 そんな騒がしい中で、フィリアは自分の装備をチェックしていた。


「……寄せ集めのガラクタだが、あの子の物よりはマシな筈」


 布で顔に着いた油を拭き取り、フィリアはスパナで完成したアーマーを小突いた。

 ベースとなったアーマーの元の持ち主、旧型強化人間の少女が思い浮かぶ。


「(……貴女には感謝しますよ、私には、これが無かったので)」


 続けて調整を開始すると、背後から少女の声が響く。


「どうだ?新装備とやらは」

「あ、サーバルさん、はい、これで、どんな危険地帯でも対応できますし……ドレイクさんが来ても、次こそはマスターを守ります」

「まだ根に持ってたのか」


 斬られた個所をさするフィリアの視界の隅に、ドラゴノイドの影が映った。

 アーシャ達と共に完全に圧倒され、見逃された悔しさが燻っている。


「ええ、次は絶対、勝ってみせます」

「けど、修理に使ったパーツって、解放戦線共の兵器から回収した奴だろ?」

「え、ええ、あの熱波を逃れた物ですよ」


 フィリアは、積み上げられているガラクタを手にした。

 外見は無事でも、蓋を開ければ、焦げたコードと溶けた基盤が零れ落ちる。


「となると、この前頼んだ物は、無理があったか?」

「いえ、そちらの重要な部分は、私の物を転用したので、後は既存のパーツで十分でした」

「そ、そうか、悪いな、なんか」


 後頭部をかくサーバルへ、フィリアは頼まれた物を手渡した。

 稼働前の装備を見て、サーバルは笑みを浮かべる。


「ありがとうよ、コイツさえあれば」

「……ただ、私の武装も万能ではありません、過信は禁物です」

「分かっている、この前みたいなドジは踏まねぇよ」

「はい、どうかご無事で、マスターの命の為にも、サーバルさんの存在は不可欠です」

「はは、お前も言うようになったな……けど、絶対に死ぬなよ、フィリア、アイツの為にも」


 笑みを浮かべたサーバルは、頭を撫でて来る。


「それで、その、マスターは、どこに?」

「特別格納庫さ、レッドと一緒に」

「特別、格納庫」


 喉が詰まる思いをしながら、フィリアは特別格納庫へと目を向けた。


「やはり、使うんでしょうか?あの危険物」

「だろうな、こんなに早く封印解く事になるとはな」

「また使って、マスターが危険にならないと良いのですが……いろんな意味で」

「……だな」


 ――――――


 タイタンバスター・サラマンダーが安置され、相変わらず灼熱な特別格納庫。

 前回の戦いが原因で、ロックはより厳重な物となっている。

 そんな機体を眺めるレッドの隣に、アーシャは立っていた。


「まだ乗りたいのか?こんなの」

「……ああ、死にかけはしたが、俺とアイツは相性がいい」

「相性って、ケフュレスは飲み込まれてた、とか言ってなかったか?」

「……」


 息を飲むレッドの表情は、ヘルメット越しでも読み取れた。


「確かに、俺はただの受信装置のようにされたな」

「だろ?だったらやめとけよ、コマンダーも、封印処置って言ってただろ?」

「……だがよ、おかげでコイツが何を想ってんのか、よくわかった」

「想う?機械だろ?これ」

「ああ、大半は機械化されたが、それでもコイツは怒っていた」

「怒り?」


 アーシャが首を傾げると、機体へ歩み寄ったレッドは装甲に手を置く。


「ああ、ソイツだけが読み取れただけだが、次は飲まれねぇ……コイツの怒りも、全部俺の物にしてやる」

「……最終的にどうするかはお前の判断だが、私に飛び火させるなよ」

「そいつは分かっている、次は手綱を手放さねぇ……後は、焼け死なないかどうかだ」

「……」


 レッドの真剣な声を耳にしながら、アーシャはサラマンダーを見上げた。

 心なしか、サラマンダーに睨まれている気がする。

 肺が押しつぶされそうな熱波で、息が焼け焦げる。

 気付けば、アーシャの足は一歩下がった。


「拘束、大丈夫だよな?」


 ヘルメットの中で冷や汗をかくと、特別格納庫の扉が開く。


「だーいじょうぶ、外部干渉されないと外れない様になってるから」

「……ケフュレス、本当だよな?嫌な予感しかしねぇぞ」


 固唾を飲み込みながら、アーシャはサラマンダーを睨む。


「ここで蚊みたいに潰されるとか、絶対嫌だからな」

「あはは、ホントだよ、だから安心して」


 紙袋片手に格納庫に入って来たケフュレスに、アーシャは肩を叩かれた。

 そして、ケフュレスはレッドへ話しかける。


「レッドくーん!良い物持って来たよ~」

「……良い物?」

「そ、この前アーシャちゃんが戦った連中が着てた奴の、改良版だよっと」


 朗らかな声と共に、ケフュレスは紙袋の中身をレッドへ手渡した。

 それを見て、アーシャはベルガスシティでの戦いを思い出す。


「そう言えば、そんなの着た奴らが居たな」

「そ、ウィルソンさんに頼まれて、レプティルさんと解析してたの」

「……コイツでどうなるんだ?なんか分厚いが」

「うん、従来型より性能良いから、丸焼けにはならないよ」

「……つまり、飲まれる可能性はあるって事か?」

「まぁねー」


 ケフュレスに手渡されたスーツを広げたレッドは、不気味な笑い声を響かせた。

 アーシャも思わず、そのスーツに釘付けとなる。


「そんな物がねー、まぁ、確かに手こずったか」

「あはは、量産は無理だったけど、その内アーシャちゃん達の分も作るよー」

「……そうか」

「けど……」

「ん?」


 小首を傾げたアーシャは、妙に声を重くしたケフュレスへ目を向ける。

 いつの間にか、ケフュレスはレッドの胸倉を掴み上げていた。


「ッ、なんだよ」

「……いい?再使用に関しては、私の方から口利きしておくけど、アーシャちゃんが危険になるようなら、私がサラマンダーごとぶっ壊すから」

「……わ、わかったって、そう怒るな」

「……」


 ケフュレスから放たれる殺気に、アーシャまで巻き添えをくらった。

 彼女から放たれる赤黒いオーラで空気は重く沈み、行き場を求めるように圧しかかる。

 全身の鳥肌が逆立ったアーシャは、思わず二人に背を向ける。


「そ、それじゃ、わ、私も、調整があるから」


 ゆっくりと特別格納庫から出ると、アーシャはヘルメットを脱ぐ。

 青ざめた顔で、格納庫の扉を目にする。


「アイツのあんなとこ、初めて見たな」


 そう言いながら、アーシャは自分の腕を見る。

 先日マキナから頂いた、追加兵装のガントレットが目に映る。


「マキナにしては、意外と良い物送って来たな……添えてあった手紙はきもかったが」


 手紙の内容『結婚指輪ではないが、主に送る、若きタイタンの勇者へ』と言う文面を思い出した。

 寒気に襲われながらも、アーシャは足を進める。


「ま、まぁ、コイツのテストとか有るのは本当だし、さっさと戻るか」


 ガントレットをいじるのを止め、アーシャは拳を握り締める。


「今度は、誰にも奪わせやしない」


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