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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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コマンダーの憂鬱

 執務室での作業を終えたコマンダーは、老いと疲労で痛む体を伸ばす。

 一息つき終えると、デスクの引き出しより一枚のカードを取りだした。


「……ここしばらく、妙な事も多い、頼むぞ」


 そう呟きながら、コマンダーはカードをパソコンに接続。

 コードを入力し、コール音を響かせた。

 数秒同じ音を聞き続けていると、画面が切り替わる。

 中央に宝石を模ったエンブレムが映り、スピーカーのマークが小さく表示される。


「……久しいな、マキナ」

『ああ、そちらも息災のようで何よりだ』


 鳴り響いて来たのは、上品な女性の声。


「……それで、以前送ったメッセージの件だが」

『……フム、リバティフリューゲルと言う藪を突いてしまった件であったな』

「……ああ」

『とは言え、主らと関わり、余の陣営まで危機にさらされるなぞと言う事は、願い下げなのだがな』

「……」


 予想通りの回答に、コマンダーはキーボードを叩く。

 今回の戦いはもちろん、ここ最近起きている事をまとめたレポートをマキナへ送る。


「……事態は俺達が思っている以上に深刻だ」

『何だと?』

「……これらに対抗するにも、お前の所の技術が必要になる」

『フム……』


 資料は全てマキナの元へと転送され、しばらくの沈黙が続く。

 何度か腕時計を見ていると、通信機より何かを叩いたような音が響く。


「……マキ」

『ヌア!!』

「ッ」


 掛け声のような重たい声が響いたと思ったら、今度は何かが崩れ、壊れる音が鳴り響いた。

 それだけでなく、マキナは息を荒くしながら通信を再開してくる。


『おのれ!また我らの同胞を醜悪な姿に変えおって!!』


 彼女の怒号は収まらず、次々と物にあたっている。

 その中には、静止しようとする使用人達の声まで聞こえる。


『崩壊戦の頃から何も学んでおらん!余たちタイタンを、いったい何だと心得るか!?』

『怒りをお静めください!』


 使用人たちの説得が功を成したのか、マキナの怒号は収まった。

 しばらくして、ようやくマキナは通信に出て来る。


『すまぬ、取り乱した』

「……ケフュレスによれば、クローン兵士との事だが」

『ウム、我々タイタンの誇り高きエリート戦士の複製である……が、なんと醜い』

「……心中、お察しする」


 悔しさのにじみ出る声のマキナは、通話に入り込む程大きく深呼吸する。


『……しかし、解放戦線か、よく絡まれるが、彼等が使われた覚えは無いな……しばしまたれよ、改めて資料に目を通す』

「……構わん」


 マキナは何も言わず、茶器の触れ合う音を響かせる。


『……フム、主の言う通り、これは同盟を考えるのも頷けよう』

「……言っておくが、アーシャはマスコットでは無いぞ」

『先手を取られたか』


 これまで彼女との取引では、必ずアーシャに関連する条件が含まれていた。

 なので、予め釘を刺しておいた。


『仕方あるまい、此度はアーシャの事は諦めよう』

「……そうしてくれ」

『では、話を戻し、同盟の件であるが』

「……ああ、そちらにも悪い話ではない筈だ」

『確かに』


 不安と期待に鼓動を早めながら、コマンダーは身を乗り出す。


『だが先ず、こちらが提示する資料を後程送って欲しい、それを見てから決めよう』

「……分かった、後程そちらへ送る」


 曖昧な返事に軽いため息を零しつつ、コマンダーはマキナからのメッセージに目を通す。

 把握すると共に、通話終了のボタンを押そうとする。


『それから、事と次第によっては、主らを招くことになる、あるいは、主らの方から来るやもしれんな』

「……何故そう思う?」

『サイクロプスが投入されたという事は、主らもサラマンダーを使っていてもおかしくは無いからの』

「……相変わらず、察しが良いな」

『忌々しいが、そやつのオーバーホールは、こちらで行う他あるまい』

「……あれが味方になる、俺達との同盟はメリットが大きいぞ」

『わかっておる、ではな』

「……ああ」

『……解せぬな』


 今度こそ通話終了のボタンを押し、カードを取る。

 息を吐き出したコマンダーは、背もたれへ体重をかける。


「(一体、何が起きている、崩壊戦時の暗部が、次々と)」


 ようやく一息つけると、軽く目を閉じる。

 だが、すぐにパソコンから電話の呼び出し音が鳴る。


「ッ……マキナ?いや、違うな」


 再度カードをパソコンへ差し込み、コマンダーは電話に出る。


『コマンダー!聞こえているか!?』

「……何の用だ?ウィルソン」

『あ、アズカニダが、陥落した!!』

「なんだと!?」


 ウィルソンからの報告に、コマンダーはパソコンに食いついた。


「……デマでは無いのか?」


 席に腰を落とし、コマンダーは荒く息を吐く。


『ウチの諜報部隊からの報告だ、間違いない』


 険しい声のウィルソンより、データが送られて来る。

 彼らの部隊が捉えた写真が複数画面に表示されるも、ほとんどブレの酷い画像だ。

 逃げる事さえ許されない市民達の姿と、破壊の限りを尽くされた町が映されている。

 その中には、見覚えのある姿が散見されている。


「……こいつ等、強化人間か」

『ああ、恐らく、以前俺の町で暴れた奴と同型だ』


 画像をよく調べてみると、リバティフリューゲルのエンブレムが目に付く。

 頭に手を置くコマンダーは、息を乱す。


「……なぜだ、いくらアイツ等が愚かとは言え、リバティフリューゲルに楯突くマネはしない筈」

『考えられるとしたら、町で作られる高値がつく工芸品だが……』

「……守備隊はどうした?(以前から、タイミングが合いすぎている)」

『各所で解放戦線に動きがある、アイツ等も他の傭兵も、そっちに行っていたようだ』


 ウィルソンの言葉を他所に、コマンダーは思考を巡らせる。


「(だが、リバティフリューゲルと解放戦線の思想は相反している筈だ)」


 頭を熱くしながら、コマンダーは以前からの事情を掘り起こす。


「……一先ず、こちらでも背景を洗う、待っていろ、何か有ったらすぐに連絡しろ」

『頼んだぞ、巻き添えはゴメンだ』


 通話は切られた事で、重たい空気が漂う。

 深いため息をつき、コマンダーは胃に痛みを感じた。


「……盤上がかき乱されたか」


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