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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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風の執行者

 アーシャ達の住まうマーセナルタウンから、かなり離れた区画にて。

 解放戦線の展開している基地の空域を、戦闘機が警戒していた。


「コンドル1より、コマンドマシン、定時連絡、異常なし」

『了解、引き続き警戒せよ、世界に人類の祝福を』

「世界に人類の祝福を」


 時間を見たコンドル1は、更に上空の機体へ連絡を入れた。

 それと同時に、もう一機の機体が通信範囲まで近づいて来る。


『なぁ、聞いたか?サンバンチの連中、壊滅だとよ』

「聞いている、何でも、我らが崇拝する勇者様の遺品が使われたようだ」

『ああ、背信者の分際で、身の程知らずにも程がある』

「コンドル2、言いたい気持ちもわかるが、それは我々の使命の後だ」

『はいよ、使命に戻る』


 コンドル2との通信を終えるも、コンドル1は操縦桿を握り締めた。

 そして、コックピットにぶら下げているお守りを目にする。

 勇者が好きだったという花をモチーフにして、首飾りにしたものだ。


「(勇者様、貴方が思い描いた世界、我々がきっと)」

『コンドル1!』

「何だ!?使命に戻れと!」

『さっきからコマンドマシンとの連絡が取れない!』

「何だと!?」


 コンドル2からの報告を受けて、再びコマンドマシンとの連絡を開始。

 回線に異常が無い事も調べ、マイクに言葉を入れる。


「こちらコンドル1!コマンドマシン!応答せよ!」


 先ほどまで聞こえていた声では無く、雑音がスピーカーから響く。

 最悪な事態を想定し、火器の安全装置を外す。


「異常事態発生につき、自己判断で火器を使用!コマンドマシンの安否を確認する!」

『了解!』


 旋回した瞬間、僚機のコックピットに緑色の光が刺しこんだ。

 光によって赤熱化し、機体は原型を留めない程爆散した。


「コンドル2!」


 名前を呼んだ頃には、味方の機体は下の砂漠へと墜落。

 すぐに空を見上げ、直感的に操縦桿を引く。

 僚機を墜落させた光が機体を掠めるも、飛行能力は損なわれない。


「ッ!コイツは粒子ビームか?どこだ!?」


 再度上空を見上げると、空間の歪みを視認した。


「レーダーには映らない……まさか!」


 旋回したコンドル1は、引き金を引く。

 搭載されている機関砲が火を吹かせるも、翼が音もなく切断された。


「な、何!?」


 機体は制御不能に陥るが、脱出レバーに手をかける。


「クソ、何としてでも、報告せねば!」


 ハッチが強制的に解放され、続けてコンドル1も射出された。

 シート状のメイジギアも鎧の形へ戻り、飛行ユニットが展開。

 急いで基地へ向かう。


「ッ!?」


 だが、そんな彼をあざ笑うかのように、目の前が揺らいでいた。

 その事に気付いた瞬間、姿を徐々に現していく。


「や、やはり!」


 現れたのは、戦闘機と言うにはあまりにも重武装な機体。

 その姿を見るなり、コンドル1は護身用のライフルを構える。


「勇者様の名を汚すな、人類種の裏切り者があああ!!」


 その絶叫と共に引き金を引くも、被弾する前に機体は眼前から消える。


「ど、どこだ!?」


 周辺を見渡していると、全身に衝撃が走った。

 感覚は全て失われても、コンドル1は進もうとする。

 腕を伸ばし、口を動かす。


「……せかいに、じん、るい、の」


 警句を唱えようとした瞬間、コンドル1の身体は光に包まれた。


 ――――――


 その頃。

 基地の本部も、コマンドマシンの喪失に気付いた。

 管制塔では、異常事態の観測に当たっていた。


「ダメです大佐!やはり、コマンドマシンとの連絡は取れません!」

「クソ、一体何が起きている、奴らが落とされては、空の連中と連絡が」


 頭を悩ませていると、本部へ爆音が鳴り響く。

 音のする方を見ると、次々歩哨の部隊が空からの攻撃にやられていた。


「こ、今度は何だ!?」

『HQ!こちらパトロール!敵襲で、う、ウワァァ!!』

「どうなっている!?レーダー、各種センサー、爆発以外何も観測できません!」


 オペレーターからの言葉に、大佐は窓の枠を殴りつけた。

 次々降り注ぐ粒子ビームとミサイル達で、基地は攻撃を受け続けている。

 その機体を見て、大佐は固唾を飲み込む。


「シルフィード……」

「ッ……人類種の、裏切り者」


 大佐と管制官のやり取りを終えると共に、出現したシルフィードが変形を開始。

 飛行機型から人型へと姿を変え、緑色のセンサーアイが輝く。


「……ギ」


 爪が食い込む程拳を握り締め、歯が砕けんばかりに食いしばる。

 目を見開き、大佐は叫ぶ。


「背信者めが、どれだけ勇者様の描いた理想を歪める気だ!!」


 管制塔内に彼の絶叫が響き渡り、窓は緑色の光に包まれる。

 熱で周辺は赤く染まり、大佐を含めたスタッフ達は施設ごと蒸発した。

 その光景を見ていた一人の兵士は、ヘルメットを脱ぎながら空を仰ぐ。


「……あ」


 今の彼に思考する余裕も、祈る気もない。

 ただ目の前の惨状と共に空の暴力へ目を向け、持っていた銃を手放した。


「(燃えていく、共に戦って来た同志たちが)」


 待機していた機体はビーム砲によって薙ぎ払われ、滑走路もミサイルで潰された。


「俺は、ベッドの上で目覚める、そうだろ?」


 夢は覚める事無く、シルフィードは着地。

 ライフルを構え、残党へ向けて攻撃を放つ。

 直撃すれば消滅し、しなくともその余波で人は骨か炭となる。

 勇敢な者がロケットランチャーを放つも、蚊に刺された程度の反応だ。


「あ……ああ」


 次々逃げていく同志たちを尻目に、兵士は膝から崩れ落ちた。

 そして近くに命中したビーム砲の余波に襲われ、逃げていた兵士諸共消滅した。


 ――――――


 優雅に空中に立ち尽くすシルフィードは、生存者の有無を確認していた。

 その機体のコックピットで、パイロットは後頭部で両手を組む。


「……報復完了っと、昔は楽しめたのに」


 端末を操作し、依頼主へと送信する。

 退屈で体を伸ばし、アクビをしながら返信を待つ。


「ん、返信きたっと」


 しばらくすると返信が届き、内容に目を通す。

 すると、彼女はあからさまに落胆する。


「……はぁ、休め、か……まいっか、最近戦ってばかりだし」


 操縦桿を引き、機体を戦闘機へと変形させた。

 そして魔法で姿を消し、移動を開始する。


「世界の歪みは、僕たちで正さないとね」


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