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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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目覚めし300年前の劫火

 ブラッドライガー達は倒れ、倍の数に増えたサイクロプス。

 彼らの攻撃は敗走する傭兵達へと向けられ、口内のビーム砲が次々と放たれる。

 赤い閃光に次々消し飛ばされる傭兵達を横目に、フィリア達ヴェイザーも後退を続けていた。


「撤退だ!固まらず、散開しながら下がれ!」

「チクショウ!こんなのありかよ!?」


 ファイン1の先導によって、撤退を開始するヴェイザー達。

 ライトニングチームは彼らのシンガリを務め、魔法による防壁を展開していた。


『俺達の事は気にするな!早く下がれ!!』


 水の防壁を形成するオセロットは、反撃に銃弾をばらまく。

 そんな彼の近くに、鉄塊が降って来る。


『何だ!?』


 巻き上げられた砂煙が晴れ、落ちて来た物の正体が目に映る。


『……チ!!』


 思いっきり舌打ちしながら見たのは、街区で戦闘していたセルゲイの機体の上半身。

 ガラクタの姿にオセロットは銃に込める魔力の量を増やし、反撃を更に激しくする。


『何がタイタンバスターだ!あっさり壊されやがって!!』

「あの数だからねー、仕方ないよ」


 すぐ近くで狙撃銃を構えるケフュレスは、のんびりとした口調のまま引き金を引いた。

 他の隊員が慌てふためく中、彼女だけは縁日の射的場に居るテンションだ。


『お前はお前でよくのんびりしてられるな!?』

「まぁまぁ、それよりフィリアちゃん、アーシャちゃんの様子はどう?」


 ケフュレスの言葉につられ、オセロットは彼女の後ろにアーシャ達の姿に目を配る。

 サイクロプスが出現してから、アーシャは魂が抜けたように座り込んでいた。

 そんな彼女にフィリアは軽くビンタを入れ、肩をゆする。


「マスター!マスター!……だ、ダメです、目が据わってます」

『アーシャ!いい加減しっかりしろ!』

「あははー、流石に刺激が強すぎたかなー?」

『笑ってないでテメェも何か打開作考えろ!!』


 このままでは、町そのものからも撤退する事になる。

 乱雑に弾倉を取り換えるオセロットは、ゆっくりと迫りくる巨人たちを睨む。

 地面を揺らす彼等の行軍は、まるで壁が迫って居るようだ。


『クソ、ここからの攻撃じゃ、奴らに有効打を与えられないぞ!!』


 オセロットの隣で、ラケルタは大量の重火器を繰り出す。

 大口径の機関砲もミサイルの雨も、盾と鎧に阻まれてしまっている。

 オセロットの攻撃も、見かけ倒しで成果を上げられていない。

 そんな中で、レッドは炎の防壁を展開しながら動こうとしていない。


『……』

『ライトニング1!さっきから何している!?』

『……オセ、ライトニング2』


 おもむろにオセロットを見ると、レッドの機体はまたゆっくり正面を向く。

 そして軽く首を俯かせると、勢いよく顔を上げる。


『やっぱ、どう考えても、あれしか道は無いな』

『あ、あれだと?』

『……ライトニング2!3!少しでも長く時間を稼げ!俺は、あれを取って来る!!』


 そう言いながら、レッドは手持ちの火器と予備の弾倉を放棄。

 すぐに背中の飛行ユニットの火を吹かし、母艦のソウリュウへと戻る。


『おい!お前まさか!』

『必ず戻る!それまで持ちこたえろ!』

『もちこたえろって……』


 レッドが抜けた事で、防壁に穴が開く。

 防御は弱まり、オセロットはすぐ後ろの映像をモニターの一部に映す。

 負傷兵の回収は終わっておらず、壊れたメイジギアを放棄して逃げる者まで居る。


『クソ、やってやるか!』

『おう!』


 弾切れになった銃を放棄したオセロットは、攻撃から防衛に回る。

 より大きな水の防壁を形成し、撤退を支援する。


 ――――――


 一足先に母艦へ帰投したレッドは、スタッフ達が慌ただしく動く格納庫へと到着。

 すぐにアーマードナイトから降りると、彼の目は特別格納庫へと向けられる。


「うし」

「レッド!?」


 早速向かおうとした所で、今回は裏方に回っていたサーバルと出くわす。

 彼女は駆け足でレッドに近づき、鋭い形相で食い掛って来る。


「おい!兄貴とアーシャ達はどうしたんだよ!?まさか一人で逃げ出したんじゃないだろうな!?」

「俺がそんな事する訳無いだろ?大丈夫だ、ちゃんと全員助けてやるさ」

「……そ、そうだな」


 頭の耳が少し垂れさがった彼女を尻目に、レッドはスタッフをかき分けながら駆けだす。


「お、おい!そっちって、あれを使う気か!?」


 サーバルの声を耳にしつつ、レッドは手を振りながら移動。

 無機質な通路を進み、特別格納庫と距離が縮まるにつれて体感温度が高まる。


「(……熱い、いつも以上に)」


 格納庫の扉を開けると、凄まじい熱波に襲われる。

 多少の寒暖差さえ防ぐインナースーツでも、カバーしきれない室温の中へと入り込む。

 中では鈍い金属音が響き渡り、うめき声のような物まで聞こえる。

 レッドは、この熱と音の発生源である鉄の巨人を見上げた。


「……サラマンダー」


 ヴェイザーが唯一保有するタイタンバスターは、鎖に繋がれた獣のようにもがいていた。

 カメラアイも不規則に点滅し、固定用の器具を引きちぎろうとしている。

 起動の為のプロセスを踏んでいないのに、暴れたがっている。


「アーシャの時と同じだ」


 以前アーシャがタイタンの力を暴走させた時と同じ、獲物に牙を立てたくて仕方ない様子だ。


「流石、紛い物とは違う、タイタンを殺す為の本物の機体……」


 その姿に笑みを浮かべたレッドは、リフトを使わずに飛び上がった。

 スイッチでコックピットハッチを開け、久しぶりに中身を目にする。


「焼け死のうが、今はお前の力が必要だ」


 専用のメイジギアが操縦席として中心に置かれ、周囲は球状にモニターが張り巡らされている。

 外よりマシだが、やはり中は熱い。


「(チ、やっぱ熱いな)」


 内心文句を垂れながらも、レッドは席に着き、操縦桿を握り締める。

 魔力を供給し、神経を機体と接続させる。


「グ!……そ、そうだ、それで、いい」


 神経が接続された事で脳に直接情報が供給され、脳に痛みが走った。

 以前は鼻血を垂らした痛み、それを感じながら外の戦況を思い出す。


「……お前の獲物が沢山いるぞ、こんな所で、おちおち寝てて良いのか?」


 機体とのリンクは強まり、サラマンダーのカメラアイが輝く。

 モニターにも光が灯ると、周囲から起動音が響いた。

 視界に表示される現在の規格のメーターは、一瞬で振り切る。


「それで、いい……かつて魔王軍を圧倒したその力、俺によこせ!!」


 試験運用で死にかけた事に身を震わせながらも、サラマンダーの起動に成功。

 それと同時に、ソウリュウの艦橋と通信が繋がる。


『やっと繋がった、コマンダー!やはりライトニング1が、サラマンダーを起動させています!』

『なに!すぐにやめさせろ!』

『……待て』

「……」


 副官であるレイブンの静止を止めると、コマンダーは自身へと映像を移す。

 レッドは彼へと目を向け、睨むように黙る。


『……やれるんだな?ライトニング1』

「やってみせる」

『……以前のように死にかけても、今度は助かる保証はない、それでもか?』

「ああ、もうこれ以外方法も無いしね」


 コマンダーは杖に額を近づけると、大きく深呼吸する。

 そして、顔を上げる。


『……良いだろう、ただし、一つ条件がある』

「……」

「……必ず戻って来い、いいな?」


 予想通りの言葉に、レッドはヘルメットの中で笑みを浮かべる。


「押忍!」

『……第一ハッチ解放、サラマンダーを出撃させろ』

『え、は、はい!第一ハッチ解放!サラマンダーのロックを解除!』


 オペレーターの声に合わせ、サラマンダーの拘束は解除。

 正面のハッチが解放され、外の光が指し込む。

 レッドの操縦でカタパルトに足を着け、発進体勢をとる。


『カタパルト用意、射出タイミングを、ライトニング1へ譲渡』


 電力チャージの機械音が鳴り響き、近くの信号は赤から青へと変わる。


「……ライトニング1、サラマンダー、出撃する!!」


 強烈なGがレッドへ襲い掛かり、サラマンダーは日の目を浴びた。


「待ってろテメェら!コイツで焼き尽くしてやる!!」


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