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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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街区の脅威

 アーマメントコロニー上部の街区。

 直径一キロの船体上部に築かれた、難民たちの住居の一角。

 高層ビルの立ち並んでいた町並みは、戦いで血に染まっていた。

 アーマードナイトとサイクロプスの残骸が武器を押しつぶし、直前までの戦いによって一部区画のビルは崩れ去っている。

 死屍累々とした戦場跡の中央で、一機のタイタンバスターが周囲を見渡していた。


「……やれやれ、崩壊戦時の化石共が」


 ケンタウロスに羽を生やしたような見た目のタイタンバスターは、生き残った部下を見下ろす。


『セルゲイ閣下、生存者は我々だけのようです』

『ですが、サイクロプスの殲滅は完了しました』

「フン、この程度の相手で、使えない駒だ……まぁいい、替えなんぞいくらでも利く」


 頭を垂れる四機のアーマードナイトの報告を受けると、セルゲイはランスの血を掃った。

 そして、機体の向きを中央のタワーへ向ける。


「コントロールセンターを掌握する、お前達も早く来る事だ」

『御意!』


 四本の足を駆使し、セルゲイは生き残った部下達に先んじて移動を開始しようとする。

 その時、重々しい足音が響き渡った。


「ん?」


 警戒の為に盾を構えると、まだ無事なビルに巨大な手がかかる。

 握力で窓が割れ、表面のコンクリートが崩れ落ちた。

 そして、ゆっくりと巨大な影が出現する。


「……やれやれ、まだ生き残っていたか」


 補装された道路を砕きながら現れたのは、他より一回り大きなサイクロプス。

 鎧のデザインも異なり、武器も大型剣二本を背負っている。

 セルゲイの駆るタイタンバスターと目を合わせるなり、彼は二本の剣を手に持つ。


『ギュルオオオ!!』

「(いや、今までの奴と何かが違う)」


 明らかに他と異なる雰囲気を醸し出しながら、ノイズがかった雄叫びを響かせた。

 そして、両サイドに居る部下二人へ目配りする。


「……行け」

『え』

「命令だ」

『……ぎょ、御意』


 冷たい目を落とされた二人の内、一人は震えながら突撃する。


『う、ウワアアア!!』


 だが、投げ槍な攻撃を行う部下の機体はすぐに両断された。

 残骸だけが虚しく転がり、もう一人の部下は後ずさりする。


『あ、あわわ』

「使えんな……そこ」

『ヒ!?』

「私の役に立てる事、光栄に思え」

『ガ!!』


 もう一人の部下を盾で殴り飛ばし、サイクロプスへと放った。

 中間辺りに部下が到達すると、セルゲイはランスに魔力を集中。

 仕込まれたギミックが展開され、先端部分が発光する。


「排除する!」


 背部のユニットより光の翼が放出され、発生した推力に押される。

 下半身の四本の足で地面を蹴り、一気に距離を詰めた。


「フ!!」

『グア!』


 ランスは部下を貫き、その奥のサイクロプスへと到達する。


『グォ!』

「チ!」


 地面を削り取る一撃は防ぎ止められ、ランスもいなされた。

 瞬時に次の攻撃を行い、盾でも殴り掛かる。


「コイツ」


 他の個体とは全く異なる二刀流の剣舞に、セルゲイの連撃は対応された。

 それどころか、セルゲイの機体の数か所に切創を着けられた。


「いい気になるな!所詮貴様はこの機体に殺される定め!」


 二本の前足で蹴りを入れ、距離を確保する。

 そして、ウィングユニットを前方へと向けた。


「化石は土へと還れ!」

『ゴゥ!!』


 唸りながら剣を構えたサイクロプスへ、ウィングユニットからのビーム砲が放たれた。

 後方の町を消し飛ばし、サイクロプスも光に飲み込まれる。


「……やれやれ、これで当初の仕事に」

『グォアアアア!』

「チ」


 再びノイズのかかった雄叫びが響き渡ると、燃え盛る炎の中から姿を現す。

 しかし、鎧は剥がれ落ち、身体中のボルトのような物が次々と落ちる。

 足音と共に金属音を響かせながら生身をさらけ出すと、身体中が変化し始める。


『グー』

「……何が起きている?」


 サイクロプスの身体は徐々に膨れ上がり、両腕に持っていた剣は両手に取り込まれた。

 湯気の立つ体表も黒みがかり、体格も一回り大きく変異する。


「……そうか、それが噂の」

『ギュルガアアアア!!』

「強化クローン風情が、鬱陶しい!」


 叫び散らすサイクロプスへ、セルゲイは突進した。

 ランスの狙いを心臓部分へと向け、全体重を乗せた刺突を放つ。

 重々しい金属音が響き渡り、焼け焦げた地面が削り取られる。


「な、何だと」


 だが、セルゲイは目を見開いた。

 ランスの先端は砕け、肝心のサイクロプスにダメージは無い。


「お、おのれ!ただのでくの坊が!」


 一度下がったセルゲイはランスを放棄、代わりの剣に手をかけた。

 その瞬間、サイクロプスは既に間合いを詰めていた。

 反射的に盾を構える。


「グ!?」


 盾は貫かれ、左肩にまで到達した。

 手と融合した剣は深々と突き刺さり、そのまま振り払われる。


「なにぃ!?」


 左肩はゴッソリと千切り取られ、周囲にパーツが散らばる。

 だが、セルゲイは持ち替えた短剣を突き出す。


「この化石めが!」


 短剣とサイクロプスの剣が衝突しあい、互いに赤熱化した。

 しかし、セルゲイの機体が持つ短剣は徐々に押し込まれる。

 次第に短剣の刃が手に到達し、サイクロプスの剣が遅れて到達。

 そのまま右腕を貫かれた。


「バカな!?」


 バランスを崩しながらも、セルゲイはもう一度ウィングユニットを展開。

 砲身をサイクロプスへ向けるも、一手遅れてしまう。


「こんな事……ゆ、許される筈無い!」


 瞬時に繰り出されたサイクロプスの剣に、ウィングユニットは切断された。

 続けて前足も切り落とされ、膝をつく事となる。

 前に立つサイクロプスは、見下すように視線を落としてくる。


「旧時代の腐肉如きに!」


 全てのモニターは暗転し、全てを砕きながら鉄塊が迫る。

 サイクロプスの剣にコックピットを貫かれ、上半身だけが吹き飛ばされた。

 その様子を見ていた残りの部下は、ゆっくりと下がる。


『か、閣下がやられたぞ!』

『く、クソ、引くぞ!』

『ああ!』


 セルゲイの死を前に、生き残っていた部下二名は逃走を開始。

 武器も捨て、少しでも早く逃げられるようにした。

 だが、一方が背後からの攻撃に貫かれる。


『ガ!』

『う、ウワアア!!』


 貫かれた味方を前に、もう一方の機体は尻餅をついた。

 上半身と下半身を千切られる味方を目にしながら、生き残った味方は必死に下がる。

 立ち上がる事さえ忘れながら下がると、手にマシンガンが当たる。


『ッ!し、死ねぇぇ!!』


 闇雲にマシンガンを乱射するも、銃弾は体表に弾かれる。

 ゆっくりと近づいて来るサイクロプスは、銃弾を全く気に留めない。


『あ、ああ』


 やがて銃の弾は無くなり、引き金を引く乾いた音だけが鳴る。

 その時には、サイクロプスが剣を構えていた。


『ウワアアア!!』


 その断末魔を最後に、最後の機体は貫かれた。


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