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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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子猫と巨人

 幼少のアーシャの手には、壊された縫いぐるみが包まれていた。


『かわいそうに』


 そう言いながら、アーシャは手にしている縫いぐるみを修理する。

 幼い手で針を巧みに扱いながらも、彼女の表情は哀れみに満ちていた。


 ――――――


「……懐かしい夢、見ちまったな」


 目を覚ましたサーバルは、ベッドに横たわりながら呟いた。

 そして、開いた目で捉えた景色を見つめる。


「(……まだあの世では無いか)」


 目に映るのは、オリーブ色のテントの天井と簡単な電灯。

 そして、腕に注入されている点滴だ。

 軽く痛みの走る頭に触れると、包帯の感触が手に伝わる。

 そんな事よりも、サーバルは見ていた夢を思い返す。


「そういや、アイツがいじめっ子に喧嘩振ったの、あの縫いぐるみが原因だったな」


 いじめっ子に縫いぐるみを壊されたと、泣きじゃくる持ち主。

 それを知ったアーシャは行動に移し、夢の中のように修理していたのだ。


「……だから決めたんだ、アイツとダチになりたいって」

「誰とダチになるって?」

「ウミャ!?」


 聞き覚えのある声に反応し、サーバルは上体を勢いよく上げた。

 頭の耳もピンと立てながら、ゆっくりと横を向く。


「……あ、アーシャ、居たのか」

「ああ、オセロットに見舞いに行ってくれって」

「そ、そうか」


 横にはパイプ椅子に座ったアーシャがおり、彼女を見たサーバルはすぐに視線を逸らした。


「(全然気づかなかった、さっきの聞かれてないよな!?)」


 と言う心配で冷や汗をかきながら、サーバルはゆっくりと視線を戻す。


「……で?その、兄貴は?」

「ああ、アイツなら、夜警にでるぜ、妹に近づく奴はぶっ殺すって」

「……たく、相変わらずか……てか、夜警って、戦況は?」


 改めて周りを見渡すと、多くのヴェイザー兵が寝込んでいた。

 聞こえてくる音も、焚火の音やサーチライトの動く音位だ。

 銃声らしい音は拾えない。


「解放戦線なら引いたぜ、艦船五隻失って」

「そうか、流石兄貴達だな」

「ウチが落としたのは三隻だ、他は後から来た連中がやった」

「後?」


 意外な回答に首を傾げると、アーシャは携帯を取りだす。

 ボタンを操作し、画面をこちらへ向けて来る。


「……おいおい」


 流れて来た映像に、サーバルは目を細めた。

 後から来た傭兵団は二つ、いずれもかなりの手練れ達だ。

 彼らは特徴的なタイタンバスターを駆り、介入早々敵艦を一隻ずつ轟沈させた。

 他の艦船たちも損傷を被り、解放戦線たちは夕日へと消えていった。


「……ヴァルキリーの槍、それにブラッドライガーどもか」

「ああ、どっちにもAランク傭兵を抱えてる連中、厄介な競合相手だ」


 携帯をしまいながら、アーシャはため息をついた。

 そして、目を鋭くしながらサーバルは睨まれる。


「ま、募る話もあるが、コマンダーからだ」

「ッ」


 コマンダーの名前を聞き、サーバルは息を飲んだ。


「……調子が悪いのなら、今回は休め、強制はしない、だそうだ」

「……ま、そうだよな」


 コマンダーらしい、内心そう思いながら、サーバルは自分の胸を抑えた。

 本音は、明日も参加したい。

 だが、サーバルはその本音を飲み込む。


「どうする?行くと言えば」

「いや、今回は降りる、そうした方が良さそうだ」

「……そうか」


 愛想笑いをしながら答えると、アーシャは寂しそうに頷いた。

 そんな彼女を前に、サーバルは思わず笑みを浮かべる。


「そんな顔すんな、ま、俺の代わりにせいぜい稼いでくれ……相棒」

「……」


 握った拳を突き出すと、アーシャは目を丸めた。

 そして、我に返ったように微笑む。


「任せろ、相棒」


 意図を察してくれたアーシャは、拳を軽く当ててきた。

 満足したサーバルは深呼吸を行い、改めてアーシャを見る。


「……任せるついでに、その、ちょっと、散歩に付き合えるか?」

「動いて大丈夫なのか?」

「ちょっとしたリハビリだ、それに、もうすぐ点滴も終わりそうだしな」

「……分かったよ、けど、気を付けろよ」


 その後、サーバルは医療班の了承を得た。

 そして簡易診療所のテントから出て、アーシャと共に砂の大地を歩く。


「……やっぱ、この時期の夜は冷えるな」

「ああ、そうだな」


 冷たい夜風に肌を撫でられながら歩き、サーバルはアーシャの事を見上げる。

 心なしか、また大きくなったように見えた。


「……アーシャ」

「何だ?」

「俺は、実は……」


 夢で見たアーシャの姿、今日一日彼女と関わって考えた事。

 ようやく決心の着いたサーバルは、気まずそうに口にする。


「俺は、お前の姉になりたかったんだ」

「……急にキモイ事言うなよ」

「……ああ、俺もちょっとそう思った」


 自分で言っておきながら顔を青ざめるサーバルは、アーシャと適当な所に座る。

 ついでに気持ちの悪さを和らげるように、空を見上げた。


「……で?何だよ、急に」

「……最近のお前とフィリア見てて、モヤモヤしたんだ、それが何か解んなかった」

「あー、だから最近、様子おかしかったのか」

「ま、まぁな(平常心のつもりだったんだが)」


 鼓動を早めながら、サーバルはアーシャから目を離す。

 一度息を整え、再び目を合わせる。


「それで、その、色々考えて、思い出して、俺はお前の姉になりたかったんだって」

「……いや、何でだよ」

「いや、その、重症の患者治療してる感じでぬいぐるみ修理してるお前見てると、なんか、庇護欲が」

「おい」

「いや、その……お前が離れるのが嫌で、てか、フィリアに、隣を取られるのが複雑って言うか」

「……」


 顔の火照りを我慢しながら告げると、アーシャは黙ってしまった。

 その事に身体を震わせ、首をゆっくりと彼女の方へ向ける。


「バカ猫が、それで突っ込んだのか?」

「……」


 アーシャの言葉が胸に刺さり、サーバルは黙って頷いた。

 その後で、案の定アーシャの大きなため息が響く。


「全く、頼りにならない姉だ」

「や、止めてくれって、もうそんな気は無い」

「そうなのか?」

「ああ、今は、ただの相棒で、親友ってのが丁度良い」

「……そうか」

「じゃ、明日、頑張れよ」

「おう」


 二人はもう一度グータッチを行い、今日は解散した。


「俺が居ないからって泣くなよ」

「泣くかよ」

「その調子だ」


 笑みを浮かべ合い、サーバルは診療所へと戻った。


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