相棒
迫りくるタイタンバスターの巨大な足。
それを前に、サーバルは目を閉じる。
「(クソ!)」
重々しい轟音が響き、周囲の砂が巻き上がる。
だが、痛みは来なかった。
肩で息をするサーバルは、ゆっくりと目を明ける。
「……ッ、アーシャ!」
「先行しすぎって、言っただろうが!!」
サーバルの目に映ったのは、タイタンバスターの足を支えるアーシャの姿だった。
早く退避しようとするも、ガス欠の身体は動かない。
「……すまん(クソ、やっぱ、無理しすぎたか)」
次の瞬間、サーバルの身体は後方へ引きずられた。
「全く、お仕置きで抱き枕になってもらうよ!」
「……謝るからソイツは勘弁してくれ」
後ろから聞こえてきたのは、ケフュレスの声。
彼女は狙撃銃片手に、サーバルを引っ張って下がる。
取り残されたアーシャは、更に力を込めだす。
「ヌオオオ!」
『グ、何だ!?』
驚くパイロットの声が響くと同時に、タイタンバスターの頭部に青いビームが直撃。
頭部が爆散した事で、機体のバランスは崩れる。
その隙を突き、アーシャは敵の足を押し返す。
「オラァ!」
足を押された機体は後方へと下がり、アーシャはグレネードランチャーを撃ち込みながら下がりだす。
「この!この!」
そして、敵アーマードナイトの残骸を遮蔽物にして四人は集合。
サーバルはケフュレスに回復魔法をかけてもらいながら、アーシャを前にする。
「バカ猫が!死にたいのか!?」
「……すまん」
胸倉を掴んで来たアーシャから顔を逸らし、サーバルは謝った。
すると、片膝をついたアーシャは肩に手を置いてくる。
「けど、無事でよかった」
「ホント、焦りは禁物だよ、スコール2」
「……ああ」
柔らかなアーシャの声に、胸を痛めた。
以前はかける側だった筈が、今自分がかけられている。
「……アーシャ」
「応援が来ます!」
話しかけようとした瞬間、武器を構えていたフィリアが大声で叫んだ。
彼女の言葉通り、四人の頭上を三機のアーマードナイトが通り過ぎる。
「(兄貴たちか)」
『クエイクバインド!』
ライトニングの一人であるラケルタは、タイタンバスターの地面を変形させた。
地面は崩れ、敵の機体は完全に足を封じられる。
そこへ、もう二機が迫る。
『行くぞライトニング2!』
『人の妹に何しやがる!!』
レッドの言葉に反応しないオセロットは、一緒に武器を魔法で強化しながら接近。
タイタンバスターのコックピットに、二人の武器が突き刺さる。
『スコール1!スコール2を連れて下がれ!』
「ああ!そうさせてもらう!スコール3!スコール4!カバー頼む!」
『押忍!』
サーバルはアーシャに担がれ、そのまま後方へ下がって行く。
「ムーブ!」
その掛け声に合わせ、四人は撤退。
彼女達を守るかのように、ラケルタの機体が立ちはだかる。
『ここから先は通さん!』
彼の重火砲が乱射される音を耳にしながら、アーシャ達はホバー移動を続ける。
アーシャの肩に乗せられたサーバルは、彼女の方へ目を向けた。
「……ごめんな、アーシャ」
「言い訳なら、生きて戻れたらいくらでも聞いてやる」
「……ああ」
運ばれるサーバルの脳裏に、アーシャとの孤児院での思い出が過ぎる。
タイタンとは思えない程小柄な彼女が、いじめっ子に喧嘩を仕掛ける姿。
そんな彼女に、興味本位で話しかけたのがキッカケだった。
「……本当に、デカくなりやがって」
同じ位の身長だった彼女は、いつの間にか自分より大きくなった。
そして以前より、彼女の周りには沢山の友人がいる。
「……なぁ、アーシャ」
「何だ!?」
掠れた声を出すサーバルは、マシンガンで防衛するアーシャに話しかけた。
消耗で意識が遠のく中、サーバルは何とか言葉を発する。
「……俺とお前は、まだ、相棒、だよな?」
「バカが!」
敵兵を蹴り飛ばしたアーシャは、撤退を再開する。
そして、サーバルの質問にも答える。
「いつだってお前は、私の大事な相棒だ!!」
「……ああ、そうだな」
ヘルメットの中で笑みを浮かべたサーバルは、意識を手放す。
「だから死ぬんじゃねぇぞ!こんな所でな!」
アーシャの言葉を薄っすらと耳にしながら。




