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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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衝突

 震えながらオセロットと対峙するアーシャ、彼女の死角をフィリアはゆっくり歩く。


「……はぁ」


 睨むようにアーシャを見たフィリアは、ため息を零す。

 そして、アーシャの膝へとローキックを炸裂させる。


「フンッ!」

「ギッ!」


 アーマーを展開したままのフィリアの足は、ただの長ズボンのアーシャの脛に直撃。

 骨に電流でも流れたような痛みが、アーシャの足を通る。

 激痛で涙目になり、蹴られた個所を抑えながら暴れる。


「イダダダ!何しやがる!?フィリア!!」

「……」


 完全に冷え切った目を向けて来るフィリアは、構えを解除したオセロットを横目にアーマーを解除。

 ふくれっ面を浮かべながら、しゃがみ込んだ。


「それはこっちのセリフですよ!人の気持ちも知らないで!!」

「……気持ちって」


 珍しく顔を赤くしながら怒鳴って来たフィリアは、胸倉まで掴んで来た。


「何で置いて行こうなんて考えたんですか!?何でなにも言ってくれなかったんですか!?」

「し、仕方無いだろ!フィリア、お前はまだ子供、ここに居た方が、お前にとって幸せな事だろ!」

「勝手に決めないでください!こっちがどんな思いで居たのかも知らずに!」


 滅多に出す事のない大声に驚きながらも、アーシャは顔に青筋を浮かべた。


「どうしたんだよ、そんな急に!」

「ワガママも言う事にしたんです!シュカのように、必要な時に自分を出せるように!!」

「ッ」


 シュカの名が出た瞬間、アーシャの胸に痛みが走った。

 胸を抑えて俯くと、震えた声を出す。


「……やっぱり」

「ん?」

「やっぱり、ソイツの方が良いんだろ?」

「え」


 右腕をさするアーシャは、表情を曇らせながら孤児院の方を向く。

 フィリアと仲違いをした記憶が過ぎり、更にシュカの姿までも浮かび上がる。


「ソイツがいいから、私から距離を置いていたんだろ?」

「……」


 シュカと居る時のフィリアの表情は、いつもアーシャと居る時よりも明るく見えた。

 当時の彼女を思い浮かべるだけで、胸が張り裂けそうになる。

 呼吸も徐々に荒くしていると、フィリアの両手に顔が包まれる。


「……マスター」

「……」


 小さな手で顔を包まれるアーシャは、フィリアの事を見上げた。


「デイ!」

「ギャ!」


 すると、フィリアの頭突きがアーシャに直撃。

 今度はアーマー無しの一撃だったので、フィリアも軽く涙を浮かべる。


「か、勝手に決めないでください!彼女と私は友達!それ以上でもそれ以下でもありません!」

「でも、私と居る時より楽しそうだったぞ!」

「そりゃそうですよ!彼女から自分を得る事を教わったんですから!!」

「じゃぁ、何で私に聞かなかった!?聞いてくれればいくらでも」

「そんな風に見えなかったんですよ!!」


 お互いに大声で叫び合い、オセロットは完全に蚊帳の外。

 彼の事を完全に忘れる二人は、構わず言い合いを続行する。

 その末に、フィリアは涙を零す。


「それに私は!私、は……」

「ふぃ、フィリア」


 初めて見るフィリアの涙に、アーシャは言葉を失った。

 そして、フィリアは苦しそうに言葉を出す。


「貴女と、対等になりたい、お互いに、支え合える仲になりたいんです!互いに、守り合える関係になりたい」

「……」


 号泣しながら告げられたフィリアの本音に、アーシャは完全に固まってしまう。

 荒くなったフィリアの呼吸だけがアーシャの耳に入り、袖で涙を拭うフィリアだけが目に映る。


「フィリア」


 ようやく動いたアーシャは、そっとフィリアの頬を撫でた。

 だが、それでもアーシャは首を横に振る。


「……マスター」

「それでも、私は」


 身体は震え、声も掠れさせるアーシャは言葉を続ける。


「フィリアを連れて、行けない」

「……分からずや」

「……どう思ってもらっても構わない」


 アーシャのそんな言葉に、フィリアは大きく息を吸った。

 そして、何かを言おうと口を開けた時。


「見苦しいぞ!」

「ッ」

「ッ」


 ずっと黙っていたオセロットが遮り、二人は彼の方へ目を向けた。

 彼は刀を改めて構え、今度は魔力を集中させ始める。


「そんなお前達に戦場に出る資格はない……子供斬るのは、不本意この上ないが」


 オセロットの身体の周囲に流水が発生し、刀も水で覆われ始めた。

 そして、彼は真剣な眼差しで睨んで来る。


「今度は正真正銘の惨刺水明、手加減無しだ」


 力を解放したオセロットから、魔力が雨のように打ち付けられる。

 全身の表皮が痺れるような感覚に陥り、二人は息を飲む。


「……チ」

「……」


 完全に戦闘体勢をとったオセロットに対し、二人は立ち上がった。

 フィリアはアーマーを展開し、アーシャは斧を構える。


「マスター、提案が」

「な、何だよ」


 フィリアの口から出て来た提案には、アーシャはすぐに首を横に振った。

 だがフィリアは譲らず、その間にオセロットは技の準備を完了させる。


「余裕だな!」


 その叫びと共に、オセロットは激流のように突進。

 周辺の水はドリルのように回転して地面をえぐり、攻撃の範囲は遥かに大きい。

 比較にならない速度で二人を飲み込もうと迫る彼へ、フィリアは前へ出る。


「えい!」

「ヌ!?」


 フィリアはオセロットの腕にしがみ付き、突進の軌道をずらす。

 おかげでアーシャには命中せず、バランスを崩すオセロットへドロップキックを放つ。


「この!」

「グ」


 フィリアの足はオセロットの頬に命中するも、彼は足の動きに合わせて首を回す。

 衝撃は流され、完全なダメージにはならない。

 その筈だった。


「デイ!」

「ギュッ!!?」


 しかし、アーシャの肘が逃げ場を失わせた。

 二人の攻撃に挟まれたオセロットの顔はきしみ、初めてマトモに入ったダメージによろける。


「グ、う」


 後ろへと下がるオセロットに容赦せず、アーシャとフィリアは彼の腹部に向けて打撃を入れる。


「これで!」

「どう!?」

「ッ」


 回復したオセロットはすぐにフィリアの腕を掴み、投げ飛ばした。


「うわ!」

「この!」


 投げ飛ばされたフィリアに代わって、アーシャだけが打撃を繰り出す。

 しかしその打撃は受け止められ、アーシャの姿勢が崩れるように投げ飛ばされる。


「チ!」

「……」


 すぐにフィリアと共に構え直し、黙るオセロットを睨む。

 そして、オセロットの逆立っていた頭の猫耳は、力無く折れる。


「止めだ」

「や、止めだと?」


 そう言いながらオセロットはコートをはおり、刀も納めた。

 本当に帰って行きながら、最後に呟く。


「これ以上は無駄だ……見たい物は、見れた」

「……」

「……」


 その言葉を最後に、オセロットは孤児院の門を潜って行く。

 途中で二人に聞こえない程度の声で、口元を動かす。


「……やっと、踏み出せたか」


 彼の姿を見送ったフィリアは、少し湿った校庭に尻餅をついた。


「何が、見たかったんでしょう」

「……アイツは、昔からよくわからないんだよ」


 隣に座ったアーシャは、ゆっくりとフィリアの方を向いた。

 そして、自分の手をフィリアの手の上に置く。


「フィリア」

「は、はい」

「その……いや、なんでもない」

「……」


 また頬を膨らませたフィリアから、アーシャは目を逸らした。

 それでも、二人は絡めている手の力を強めた。


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