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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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月夜の山猫

 孤児院からでたアーシャは、校庭の中央付近で立ち止まった。

 曇り空が欠け、降り注いだ月光で猫耳を生やした人物と鉢合わせする。


「……オセロット」

「何をしている」

「……」


 夜だと一際目立つ彼の猫目に睨まれたアーシャは、反射的に荷物を下ろし、上着も脱ぎ捨てた。

 そして、身体を震わせながら答える。


「フィリアは置いて来た……私では、守りきれそうにない」

「……はぁ」


 深いため息をついたオセロットは、いつものダサいコートを脱ぎ捨てた。

 上半身の仕上がった肉体を晒す彼は、腰の得物に手を置く。


「最近はしおらしくなったと思ったら、頭はまるで成長してない」

「……」


 向けられた殺気に反応したアーシャは、すぐにバッグから愛用の手斧を取りだす。

 そして、オセロットも腰の刀を引き抜く。


「な、なんのつもりだ」

「……これ以上、貴様のような奴に背中を預けたくない」


 そう言いながら、オセロットは最も得意とする突きの構えを取った。

 その姿を見たアーシャは、冷や汗をかきながら防御姿勢を取る。


「私を、殺す気か?」

「殺しはしない、だが……二度と戦場に立てない事は、覚悟しておけ」


 凍てつく空気の中、アーシャはまばたき一つできなかった。

 それだけの間で、次の瞬間には串刺しになる未来が見えてしまう。


「行くぞ!!」

「ッ!」


 セリフを言い終えた次の瞬間。

 オセロットの刀は手斧と接触し、甲高い音と共にアーシャの横腹を掠めた。

 だが、攻撃はそれで終わらない。


「それで避けたつもりか!?」

「ガ!」


 間髪入れず横薙ぎが繰り出され、アーシャは吹き飛ばされた。

 傷口は更に深くなり、出血によって服が汚れる。


「グ、が」


 立つ事さえ辛く思いながら、アーシャは立ち上がった。

 負傷箇所を抑え、苦痛に顔を歪めていると、また同じ構えを取るオセロットを捉える。


「(これが、惨刺水明)」


 またもや同じ構えを取る彼へ、アーシャは睨みつける。


「何故だ、何で、こんな事を!?」

「……匂いでわかる、今のお前はいつも以上に不安定だ、そんな状態で戦場に立たれたら、部隊全体が危険にさらされる」

「けど、フィリアは」


 刀を軽く振るったオセロットは、また突きの構えを取った。

 殺気を放つ彼を前に、アーシャは刺された部分を抑える。

 あざ笑う事無く、オセロットは真剣その物の顔を浮かべる。

 無防備に立ち尽くすアーシャは、手斧を力無く構える。


「以前から危ういと思っていたが、もはや我慢ならん」

「ッ!」


 再び放たれたオセロットの突きは、どんどん接近してくる。

 とても退けられる状態では無く、アーシャは目を瞑る。


「(フィリア)」


 その時、アーシャの体に襲ってきた重みで崩れ落ちる。


「グ!?」

「チ!!」


 僅かに見えた白い装甲板にオセロットの刀はいなされ、アーシャは地面に伏せた。

 おかげで、オセロットは通り過ぎて行った。


「……フィリア?」

「……」


 アーシャの上に乗ってきたのは、アーマーを展開したフィリア。

 彼女はアーシャから離れると、守る様に両手を広げる。


「な、何で」

「……あんなデカい音、目も覚めますよ」


 頭部だけアーマーを解除したフィリアは、鋭い目で睨んで来る。

 心当たりのあるアーシャは、少し身じろぎした。


「え、えっと、その」

「……まぁ、募る話も有りますが、オセロットさん、何故こんな事を?」


 言葉を詰まらせていると、フィリアは大腿部からナイフを取り出す。

 ドレイクに使用したビーム刃を展開し、オセロットに向けて構える。


「……離れろフィリア、子供は、もう寝る時間だ」

「寝ていられる状況ではないでしょう」


 後頭部をかきむしるオセロットの言う事を聞き入れず、フィリアは一歩出る。

 そんな彼女に、アーシャは手を伸ばす。


「……フィリア」


 しかし、フィリアはその手を軽く払った。

 彼女の目はアーシャの上着や荷物の方へ数秒向けると、更に冷えた目をアーシャへ向ける。


「……マスター、まさか、私を置いて行こうと?」

「ち、ちが……い、いや、そう、だが……」

「信じて、いたのに……けど、先ずは」


 怒りを孕むフィリアの声は、とても太いものだった。

 心なしかナイフを持つ力も強まり、表情も強張っている。

 そんな彼女に、アーシャは目を逸らしてしまう。


「……どうする?アーシャ、その子も俺の突きに巻き込むか?」

「……」


 オセロットからの言葉に、立ち眩みから回復したアーシャは立ち上がる。

 そして、フィリアの前に立つ。


「……こ、この子は、き、傷つけさせない」


 そんなアーシャに対し、オセロットはまた突きの構えを取る。


「やれるものなら、やってみろ」


 虚勢を張りながら仁王立ちするアーシャは、その後ろで表情を曇らせるフィリアに気付かなかった。


「……勝手な事、ばかり」


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