共闘
四方八方から、強化人間達の放つミサイルがイムカーへと降り注ぐ。
イムカーの全身が爆炎に包まれるも、身体にススが付いただけ。
続けて機銃掃射が開始され、中には近接武器で接近する者も居る。
「無駄な事を!」
銃弾を気にする事無く、イムカーは近接武器を構える者達へ攻撃。
武器を破壊しながら殴り、振り抜いた腕で叩き潰す。
「ギ!」
「ガギ!」
ノイズがかった断末魔と共に、近づいた者達は力無く倒れ込んだ。
一瞬にして仲間が倒され、他の強化人間達の攻撃の手が緩む。
その光景に、イムカーは笑みを浮かべた。
「これで終わりか?」
その言葉に反応したのか、一部の隊員がアイコンタクトを取って頷く。
再度爆撃と銃撃が行われ、合間にイムカーの腕にワイヤーが撃ち込まれた。
両腕から伸びるワイヤーの先には、強化人間が一人ずつ。
「ほう」
スラスターなどを用いて、二人は必死に動きを止める。
更にもう二人が、イムカーの足に絡みつく。
四肢を封じたイムカーへと、ナイフや剣を持った強化人間達が接近する。
「やれ!」
「甘いんだよ!」
足に絡みついていた二人は、踏みつぶした。
ワイヤーを引っ張り、その先に居る二人を振り回す。
「そぉら!!」
周りの強化人間達へ衝突させ、地面へと叩き潰す。
ワイヤーは解かれ、接近していた強化人間の一人を捕まえる。
「従属種族が、頭に乗るな!」
捕まった一人は、悲鳴を上げる間も無く上半身と下半身を千切られた。
「ッ、クッソ!」
接近していた最後の一人が、イムカーに機銃を叩きこむ。
筋肉で銃弾が弾かれ、ゆっくりと近づく。
「クソ、クソ!!」
「身の程をわきまえろ!」
「ッ!」
機銃でガードするも、銃ごと顔も潰された。
「さぁて、次は、どいつだ?」
積み上げられた死体達に囲まれるイムカーは、周りを見渡す。
折角集まった強化人間達は攻撃どころか、動きも止めてしまっている。
「烏合の衆とはこの事だな」
拳同士をぶつけあい、イムカーは強化人間達を睨みつけた。
その鋭い睨みをぶつけられ、彼らは下がってしまう。
彼らを他所に、二人だけ前に出る。
『……マリー、やれるか?』
「はい、私も、自由になりたいです」
マックスとマリーだけが、イムカーの前に立つ。
彼女達を前に、イムカーは拳同士をぶつける。
「フン、次はお前達か」
「……黙れ」
マリーの重々しい声を響かせると、マックスと共に攻めた。
アーシャに見せていたような連携で、イムカーへ攻撃を加える。
「ははは、いいマッサージだ」
「クソ!」
舐めたように笑うイムカーに、二人は息をつかせる暇のない攻撃を叩きこむ。
だが、眉一つ動かさない。
「どうした?もっと強くやらないと効かないぞ?」
「黙れってんだ!」
マリーの鋭い蹴りが、イムカーの顔面に直撃。
足の下から見えるイムカーの口が、弧を描く。
マリーの足がイムカーの大きな手に捕まれ、マリーは振り回される。
「あああ!」
「どりゃ!」
悲鳴を上げるマリーは、マックスへと叩きつけられた。
二人は地面に激突し、数メート先まで吹っ飛ぶ。
間髪入れず、イムカーの手の平が二人を捉える。
「吹き飛べ!」
紫色の魔力弾が、二人へ放たれた。
地面を削り、空気を斬り裂いてマリー達へ迫る。
「マックス!」
当たる直前で、回復したアーシャが二人を担いで射線から脱出。
大量の岩石が破片として発生し、一部がアーシャの後頭部に命中する。
「グ!」
『アーシャ!』
当たり所が悪く、脳が揺れた。
元々弱っていたアーシャは、普段よりダメージを受ける。
視界は歪み、足から力が抜ける。
「チ!」
舌打ちと共に踏ん張り、鼓動と共に襲い掛かる痛みに顔を歪めた。
二人を下ろし、流れる血を止める。
「……だ、大丈夫か?」
「それは貴女の方です!誰か!」
「大人しく待っていると思うか!?」
マリーの救援に応える者も居たが、イムカーが先に動いた。
三人をまとめて消せる大きさの球体が形成し、投げ飛ばしてくる。
凄まじい熱波がアーシャ達に襲い掛かり、衝撃波で周りの部隊も近寄れない。
視界が完全に紫一色に染まり、アーシャの体は硬直する。
「クソ!」
身構えるアーシャに、影が落ちる。
続けて視界が明転。
凄まじい爆発音が鳴り響き、衝撃波が瓦礫の山を押しのける。
「グッ!?」
吹き飛ばされた事で背中を強打したアーシャは、拳を握りながら立ち上がろうとする。
だが膝が震え、腕も言う事を聞かない。
ぼやける目を上げ、正面に落ちて来た物を目にする。
「な、なに、が……」
徐々にピントの合う視界は、マックスの事を捉えた。
アーシャは、目を見開いた。
「……ま、マックス?……」
うつ伏せから身体を起こしていくと、徐々にマックスの状態が明らかになる。
それを前にし――アーシャは叫ぶ。
「マックス!!」
下半身を失ったマックスへ、アーシャは駆け寄った。
血が、温かいまま流れていた。
一歩歩く度に激痛が走ろうと、彼女の事を抱える。
「しっかりしろ、おい、おい!」
『……アー、シャ』
「ああ、そうだ、私だ、大丈夫だ、大丈夫、助かる」
慰めの言葉を弱弱しい口調でかけるが、マックスは首を横に振る。
『……お別れ、だ』
「バカやろう!やっと会えたんだぞ、それなのに、また置いて行くのか?私を……嫌だ、もう、誰も、失いたくない」
『……もっと早く、言えば』
「言うな」
涙を流すアーシャは、何かを察した。
『俺は、お前が』
「黙れ!」
それでも、マックスは止まらない。
アーシャの腕を掴み、涙を零しながらほほえみかける。
『……好き……だった』
「……」
目を見開きながら、アーシャは零れそうになったマックスの手を掴んだ。
もう動く事も無い彼女の手を握り締め、目から光を失ったマックスの顔を見つめる。
「ははは!悲しむ事は無い、いずれお前もソイツの元に行く」
「……」
頭の中で、何かが切れた。
「……こ、ろす」
震える手でマックスの目を閉ざし、涙を滝のように流す。
あふれ出て来る感情に、アーシャは歯を食いしばった。
「アアアアア!殺す!殺す殺す!!」
マックスの手を握り締めながら、イムカーを睨む。
全身に稲妻が走り、徐々に身体が大きくなる。
それに伴って破損したスーツも伸び、全身から湯気が立ち上りだす。
音が歪み、空間が軋む。
「お休み、マックス」
マックスを下ろし、アーシャは立ち上がる。
倍近くなった身長で、目を丸めるイムカーを見下ろす。
「な、何だ?その姿は」
「……殺してやる。骨の髄まで、魂の一片まで」




