終わらない戦い
地上では、未だに戦闘が続いていた。
前線のレッドとナインケルパーのおかげで持ちこたえてはいるが、圧倒的な数を前にラケルタ達は押されていた。
「負傷者の救助を優先しろ!もう後がない!!」
弾のつきたバルカン砲を鈍器として扱うラケルタは、サイクロプスを撲殺。
その隙を突かれ、機体は被弾する。
「グ!」
腕が千切れ落ち、バルカン砲も手放した。
片手で応戦を行うべく、ラケルタは雄叫びを上げる。
「まだだ、まだだぁぁ!!」
もう一体のサイクロプスに殴り掛かろうとした時、上空のスカイエデンの一部が爆発。
サイクロプス達の、特徴的なヘルメットの赤いセンサーアイの光が消えた。
同時に、サイクロプスは次々と倒れ込み、強化人間達も沈黙する。
「なんだ?まさか」
周囲を見ると、同様の現象が各所で起きている。
空でも、戦闘機が勝手に墜落している。
疑いようがない事実に、ラケルタは上を見上げた。
「終わった、のか?」
近くの兵士達は尻餅をつき、武器を手放す。
彼らを横目に、ラケルタは残った腕を掲げる。
「オセロット達、やりやがった!!」
同時に、歓声が戦場を包んだ。
誰かが泣き、誰かが笑う。
武器を掲げ、雄叫びを上げる者も居る。
だが、ソウリュウからのアナウンスが現実に戻す。
『各員!離れろ!墜落するぞ!!』
レイブンからの注意喚起。
スカイエデンは落下を開始し、その巨体より空気が唸る。
伸びた影に気付き、彼らは上を向いた。
落ちて来る空に、誰もが理解する。
――逃げなくては
「逃げろ、逃げろ!!」
「負傷者を装甲車か船に乗せろ!急げぇぇ!!」
逃げ惑う中、スカイエデンは落ちた。
下に居た部隊を押しつぶし、衝撃で砂の津波を引き起こす。
同時に突風が吹き荒れ、逃げ遅れた一部の隊員は巻き込まれた。
静寂が訪れ、砂を含んだ風が静かに過ぎ去る。
「……大丈夫か?」
被った砂を払いながら、ラケルタは機体を立ち上がらせた。
下には数名の兵士がうずくまり、震えていた。
「あ、ありがとうございます」
「ああ」
立ち上がったラケルタは、意識を集中。
レッドとナインケルパーの気配は瞬時に察知するが、肝心のメンバーの気配が感じ取れない。
「……くそ、どういう事だ?」
冷や汗をかきながらも、ラケルタは更に意識を集中。
微かに、アーシャの気配を感知。
続けてオセロット達の気配も感じ取るが、一人足りない。
「……感じられない、ケフュレスの気配が」
奥歯を噛み締め、ラケルタは拳を握った。
――――――
スカイエデンのサーバールーム付近の通路で、オセロットはサーバルに覆いかぶさっていた。
目を覚まし、痛む節々をおさえながら立ち上がる。
「つ……サーバル、大丈夫か?」
「……ゲホ!な、何とか」
「よかった……」
割れたヘルメットを捨て、オセロットは頭の耳をと鼻をさえわたらせる。
重傷を負った兵士のうめき声、施設が崩壊する音。
焼け焦げた鉄の臭い、誘爆した火薬の臭い。
肝心の気配がない。
「……ケフュレス」
拳を握り締め、爆発に飲まれた彼女の事を思い出す。
涙と息を飲んだ。
「クッソオオオ!」
床を殴りつけた拳が震える。
呼吸が乱れ、上手く息が吸えない。
「……グ、恨むぞ、俺の、判断ミスを」
あの時、目を逸らさずに居れば。
一瞬でも気を抜かなければ。
そんな後悔に襲われ、オセロットは息を吐き出す。
「すまん、ケフュレス」
「……兄貴」
サーバルの声が震えている。
いつもの戦士らしさは無く、歳相応の少女の声だ。
サーバルの声を聞くなり、オセロットは立ち上がった。
涙を拭い、鼻もすする。
「……行くぞ、アイツの為にも、他の奴らは必ず連れて帰るんだ」
「……」
数秒黙ったサーバルは、表情を強める。
「……おう」
オセロットはサーバルと共に走りだし、フィリアとアーシャの捜索に移った。
二人共耳と鼻、そして気配探知も使う。
敵の気配は先ほどより減り、捜索はしやすい。
「……ッ!」
しばらく走っていると、聞き覚えのある呼吸音と声が聞こえて来る。
「兄貴!」
「ああ、フィリアだ!」
音のした方へ駆け出すと、通路の壁にもたれかかるフィリアを発見。
ぐったりする彼女に、オセロット達は駆け寄る。
「フィリア!無事か!?」
「……オセロット、さん」
「よかった、あんな化け物相手によく」
「怪我はないな?」
二人でフィリアを介抱すると、彼女のアーマーのヘルメットが格納。
アーマーより、幼さのある顔が露出した。
「……ま、マスター、は?」
「アイツはまだだ、これから探しに行く」
「……敵が」
「安心しろ、メインサーバーは破壊した、もうロクな奴は残ってない」
背負う為にフィリアへと手を伸ばすと、彼女の手に止められた。
顔を青ざめ、目を見開くフィリアは、首を横に振るう。
「……残ってます、まだ、肝心な、奴が」
「残ってる?誰が?」
「私同様、第七世代の奴が」
フィリアの報告を遮るように、船体が揺れる。
とてつもなく不自然な揺れに、二人は立ち上がった。
「なんだ!?」
「何か誘爆したのか!?」
どの予想とも異なると、二人は感じた気配で察する。
「いや、何だ、この重油みたいな、粘つく気配」
「……」
驚く二人を他所に、フィリアの顔は更に青くなった。
そして、オセロットの足が掴まれる。
「いそい、で、マスターが、危ない」
「……サーバル、急ぐぞ!!」
「押忍!」
フィリアを背負ったオセロット達は、アーシャの元へ急ぐ。
粘りを含んだ不快な気配のする方へ。




