乗っ取られた意識
イムカーに精神を乗っ取られたマックスを睨むアーシャは、右腕を握り締めた。
焼け爛れた感触が、今も右腕の中で燻っている。
「今度は奪わせない、貴様に奪われた物、全て返してもらう」
手斧を構え直したアーシャは、柄が軋む程力を込めた。
マックスに近接格闘の構えをとらせるイムカーは、鼻で笑い出す。
『ふん、お前なんぞ知らん、高値で売れそうな身体だがな』
「……思い出させてやるよ」
どす黒い声と共に、アーシャはマックスへと接近。
手斧とガントレットへ魔力を注ぎ込み、マックスの四肢へ狙いを定める。
「私は、アーシャ!その子と、同じ村の出身だ!!」
攻撃は受け止められ、発生した衝撃波はマックスの後方へ突き抜ける。
『このガキと同じ……そうか、あの村の娘か!!』
「チ!」
舌打ちしたアーシャの右腕に、焼けるような痛みが走った。
それでも、アーシャは手斧を振り抜く。
先ほどとはまた違う戦闘スタイルを見せつけるマックスの手で、それらは全て防ぎ止められた。
『成程、よく見れば見覚えがあるな……そうか、最後まで抵抗していたタイタンの娘か!?』
「その通りだ、ヒョロガリジジィ!!」
焼け焦げた臭いと、イムカーの笑い声が蘇った。
「その子から、出て行きやがれ!!」
鈍い金属音が響き渡ると共に、マックスの左腕は抵抗と共に立ち切られた。
切断面が赤く熱を帯びる彼女の腕は、力無く地面に落下。
金属音のみが響き渡り、アーシャは笑みを浮かべる。
だが、彼女はダメージを気にせずに反撃してくる。
『油断したな!』
「な、ガ!?」
鋭い蹴りが腹部に刺さり、アーシャは後方へと吹き飛ぶ。
すぐに体勢を戻し、マックスを睨む。
「チ、アイツには、効果無しかよ」
『当然だ、今のコイツは、俺の人形だからな!!』
高笑うイムカーは、すぐ近くにウェポンケースを展開。
中から予備の腕を取りだし、マックスへと装着する。
『さぁ、続きだ!また楽しんだ後で売り払ってやる!!』
「……見つけたら、必ず殺す!!」
こめかみがピクリと跳ねた。
再度マックスと衝突。
二人を中心にクレーターが形成され、ぶつかり合う刃から火花が散る。
「お前に故郷を焼かれて8年!お前の事を追い続けてきた!!」
『嬉しいな!また俺の私腹を肥やさせてくれるのか!?』
「その腹をかっさばきに来たんだよ!!」
怪力でマックスを押しのけ、アーシャは追撃の為に踏み込む。
『だが、貴様にコイツを殺せるか!?』
「……ッ!」
アーシャの動きが、一瞬止まる。
イムカーはその瞬間を見逃さず、アーシャへとタックルを繰り出す。
『ヌンッ!』
「グ!」
そこから続けて、大振りの打撃を次々繰り出す。
血を吐き出しながら殴られるアーシャに、トドメの蹴りが繰り出される。
『ソラッ!!』
「ガッハッ!!」
重たい蹴りを受けたアーシャは、タワーの中へと突っ込んだ。
全身にガラスとコンクリート片を浴びながら、数階分の床を突き抜ける。
デスクなどの調度品を押しのけながら、アーシャはようやく止まる。
「グ、ア……」
痛みをこらえながら立ち上がると、自分の作った穴からマックスが昇って来る。
『よくここまで生き残れたな!その様で!!』
「良い仲間に巡り合えたおかげだ!!」
身体に着いた物を掃いながら立ち上がり、アーシャはデスクを掴む。
容赦なくマックスへ叩きつけ、セラミックで出来たデスクは粉々となる。
『その程度か!?』
「もっとやってやるよ!」
マックスの肩を掴んだアーシャは、背中のスラスターを点火。
壁を次々突き破り、最終的に踏ん張るマックスに止められた。
『やはり、この娘が気になりすぎるようだな!』
「うるさい!貴様こそ、いい加減姿を現したらどうだ!?」
『そんな事を言われて、出て来ると思うか!?』
その返答に、アーシャは奥歯を噛み締めた。
このまま戦ってもマックスを傷つけるだけ、頼みはオセロット達だ。
彼らがコントロールセンターを破壊しない限り、マックスは傀儡のまま。
その考えが過ぎり、アーシャは再び手斧を構える。
「だったら、引きずりだす!」
気勢を張り、アーシャは歯を食いしばる。
「そして――マックスを!連れ戻す!!」
解放されたアーシャの魔力は、艦内中に伝播した。




