最悪の再会
アーシャがマックス達と衝突した衝撃で、隔壁は連鎖的に吹き飛んでいた。
気付けば甲板の上に上がり、アーシャは二人と睨み合う。
「はぁ、はぁ」
手斧を構え、サブアームのシールドを展開した。
バルカン砲の残弾も確認しながら、足に力を込める。
狙いは、完全に機械化しているマックスの四肢だ。
「行くぞ!!」
踏み込みによって甲板は潰れ、マックス達との距離を詰める。
牽制でバルカンを放ち、手斧を構える。
「ウヲオオ!!」
怒号と共に手斧を振り下ろすも、マックスのガントレットに阻まれた。
真下にクレーターが形成されようと、彼女は姿勢一つ崩さない。
「チ!」
舌打ちと共に切り返し、もう一人の少女からの攻撃を受け止めた。
彼女の持つ双剣によってバルカン砲は破損し、すぐさま放棄。
サブアームのシールドでマックスを殴り、少女へと手斧による反撃を繰り出す。
「コイツ等!」
吹き飛ばした筈の2人はすぐに復帰し、間合いを詰めて来た。
二人の持つ武器が輝き、アーシャは盾を構える。
「ッ!」
マックス達の一糸乱れぬ連携攻撃に、アーシャは押される。
シールドの装甲が一枚、また一枚と剥がされていく。
反撃すら許されない猛攻に、シールドは決壊する。
「チ!」
空いていた左手から地面に向けて魔力を放ち、爆炎で二人の視界を遮った。
爆炎に紛れながら退避したアーシャは、シールドをサブアームごと捨てる。
そして、二人の気配を感じ取りながら手斧を構える。
「いい気に、なるな!!」
アーシャは一気に攻勢に出た。
連携の隙を突き、ガントレットによるパワーの補助を受けた攻撃を繰り出す。
それでも、二人に攻撃は届かない。
互いに互いをカバーし、逆に防戦に陥りそうだ。
「……この動き」
甲高い金属音が響き渡り、猛スピードで動き回る三人の手で街区は崩壊していく。
そんな中で、アーシャは二人の戦い方に微笑みを浮かべる。
「はは」
衝撃波で崩落するビル群、踏み込みで陥没する地面。
ぶつかり合う度に、三人の武装も悲鳴を上げだす。
マックスのガントレットのブレードは砕け、相方の少女の双剣も欠ける。
「……グガッ!!」
マックスの飛び蹴りがアーシャの腹部を突き刺さり、間髪入れずに頭部に衝撃が走る。
ヘルメットの許容を超えた一撃で、バイザーは破損。
顔をむき出しにしながら、街区で最も高いビルの真下へと吹き飛ぶ。
「グ、ゴフッ!!」
ヘルメットを捨てながら、アーシャは立ち上がった。
手斧もしっかり握り締め、目の前に立ったマックス達を見る。
「……はぁ、はぁ、まるで……はぁ、私とサーバルだな」
マックス達の戦い方は、歴戦の戦友同士の様だった。
ただ操られているだけのような物ではない、勘による連携だ。
「そうか、マックス……お前にも、新しい友人が、できた」
口から血を垂らしながらも、アーシャは笑みを浮かべた。
救うべき命が、また一つ増えた。
「だったら、お前もまとめて助けてやる!必ずな!!」
戦意を震わせたアーシャは踏み込み、マックス達へ接近。
先ほどとは打って変わり、先に相方へ食いつく。
CQCで掴み、投げ飛ばす。
「オラッ!!」
投げると共に、少女へと魔力弾を撃ち込んだ。
手から放たれた魔力弾によって、少女は後方へと大きく吹き飛ぶ。
街区に突っ込み、爆炎の中に消えた。
「まだ生きてる……」
爆炎の中にまだ消えていない少女の気配を感じつつ、マックスへ狙いを切り替える。
「次はお前だ、マックス!」
マックスの攻撃を受け止め、容赦無く顔面に斧を数回叩きつけた。
割れたヘルメットからマックスの顔が現れても、アーシャの顔に動揺はない。
「ウヲオオオ!!」
雄叫びと共に、アーシャは手斧を振り抜いた。
マックスは瞬時にガントレットで防がれるも、衝撃でビルの上層へと吹き飛ぶ。
砕けた壁から姿を現す彼女を目にしながら、アーシャもビルへと足を付ける。
「行くぞ!!」
スラスターを巧みに使い、垂直の壁を走り抜けた。
上層のマックスは迎撃のミサイルを放って来るが、アーシャはそれらを回避。
砕けるビルの瓦礫さえ足場に、アーシャは昇り詰める。
「ッ!!」
気付けば、マックスの交換されたブレードが伸びた。
ブレードを輝かせながら、マックスは急降下。
爆風をかき分けたアーシャは、彼女と衝突する。
「ギッ!!」
再び顔を合わせても、彼女の表情は一つも変わらない。
能面のような顔に憤りをあらわにしながらも、アーシャは攻撃を再開。
取っ組み合いながら落下して行き、二人は地面と衝突する。
「ガハッ!」
手斧を手放してしまったアーシャは、横に居るマックスへ目をむけた。
落下で痛めたわき腹を抑えながら、また血を吐き出す。
マックスはどこも痛まないのか、ゆらりと立ち上がる。
「……ヌン!」
「ッ!」
立ち上がられる前に、アーシャはマックスを殴った。
だが、マックスは踏みとどまり、反撃の拳が繰り出される。
交互に拳を繰り出し合い、二人の顔はどんどん青紫色に染まる。
骨はきしみ、鼻から血が流れようと、二人は引かなかった。
「はぁ、はぁ……へへ、まさか、お前と、こんな殴り合う事に、なるなんてな」
「……」
殴り合ったせいか、マックスは言葉に反応したように顔を上げた。
彼女の変化に気付いたアーシャは、口元の血を拭う。
「なぁ、マックス……覚えてるか?村の一本杉、木登りして、さっきみたいに一緒に落ちたよな」
「……」
「でも、お前はオデコに、その傷を……二人そろって、めっちゃ怒られたな」
笑顔で話していると、アーシャの目から涙が零れた。
「けど、あの一本杉は、私達の思い出、確か、根っこのとこに、タイムカプセル埋めたな」
鼻をすすりながら、アーシャはマックスにゆっくりと近づく。
彼女の身体は震えだし、機械の四肢の挙動がおかしくなる。
アーシャはゆっくりと手を伸ばし、笑みを浮かべる。
「もう帰る所なんて無いが、私達には、家族が居る……一緒に行こう、マックス」
「……」
震える機械の手が伸ばされた。
時が止まったように、世界の音が消える。
互いの指先が触れ合い、ゆっくり絡めていく。
この事実は、涙で歪む視界がしっかりと捉えた。
今度こそ、彼女としっかり手を取れた。
『……そうはいかないな』
「ッ!?」
急にマックスの目が赤くなり、またもやアーシャは不意打ちを受けた。
咄嗟に身を捻るも、メイジギアの装甲が歪む。
すぐに距離を取り、落していた手斧を回収する。
「……その声」
『貴様が誰であろうが、これ以上はこちらの信用に関わる、悪いが死んでもうぞ』
「……キッ!!」
このセリフで、アーシャは確信した。
今のマックスは、マックスではない。
かつて自分達を奴隷として捕まえた、ビーキーパーズの頭目。
「また引き裂くのか、私とマックスを……イムカー!!」




