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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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二人の巨人

 戦艦コンゴウに敷設されているマキナの自室。

 足を踏み入れるのも躊躇われる程整頓され、埃一つ無い程清掃された部屋にアーシャは招かれた。


「今宵は感謝するぞ、余の誘いを承諾してくれて」

「……いや、うん、ああ」


 いつに無く声を弾ませるマキナは、棚から茶器を吟味して取りだした。

 常備している複数の茶葉から一つ選び、慣れた手つきで紅茶を注ぐ。

 中央の卓に座りながら彼女の作業音を聞きながら、アーシャは俯く。

 湯気と共に立ち昇る香りが、静かな部屋に広がっていく。


「(結局謝る事もできなかった……フィリア)」


 フィリアと微妙な空気なった瞬間が、ずっと脳裏にこべりついていた。

 おかげで出された紅茶の香りすら、認識する事ができない。


「しかもそのままお茶会……」

「……少々込み入った話をするつもりが、そちらも、それどころでは無かったか」

「……いや、何でも、無い」


 ソファに腰掛けるアーシャの隣に、マキナは座って来た。

 マキナを横目に、アーシャは紅茶を傾ける。

 おかげで、多少は気分が落ち着く。


「美味いな」

「ウム、落ち着く成分の入った茶だ、余達タイタンでも、少量で効果が出る」

「……そうか」


 マキナの言葉を聞きつつ、アーシャは再度紅茶を飲む。

 ソーサーにカップを置き、目を細めた目をマキナへ向ける。


「それで?今回はなんだ?」

「……なに、昔話に付き合って欲しいだけだ」

「昔話だと?」

「ウム、余とて、半分はエルフの身、今の世代に色々と話す義務がある」


 長い髪をかきわけたマキナは、長い耳を動かした。

 軽いため息と共に、アーシャはクッキーをかじる。


「わかった、歴史のお勉強でもするか」

「ウム、その心意気は良い」

「いいから早くしろ」

「よかろう、では話そう」


 紅茶を一口飲んだマキナは、一度咳払いする。


「余達タイタンは、かつて人類の守護者と崇められていたのだ、だが、紆余曲折あり、世界の歪みとみなされてしまった」

「……」


 孤児院で読んだ本と、まるで違うマキナの言葉。

 予想外の言葉に、アーシャは頭を抱えた。


「私が聞いた歴史と、随分違うな」

「当然だ、だが、余に流れているエルフの血は、当時はエルフとも同盟族であった証だ」

「なるほどな」


 自らの腕を撫でるマキナを横目に、アーシャは首を縦に振った。


「だがそれでも、魔王様の家系は抗い続け、多くの種族があのお方の後に続いた、魔族などと侮蔑されても」

「けど、アンタ等は負けた、異世界から転生した勇者共に」

「ウム、奴のもたらした異世界の機械工学と、持ち前の学習能力に、余達は押しつぶされた」


 淀んだ声を出しながら、マキナは自分のインナースーツを引っ張る。

 そんな彼女を見つつ、アーシャは講習で得たスーツ概要を思い出す。


「それが、今やその技術で生きながらえてる、か、やるせないな」

「それもあるが、この生体ファイバーは、元よりタイタンの技術なのだ」

「え……つまり、これは先祖の技術を勇者が解析したって事か?」


 息を飲んだアーシャは、改めて自分の着ているスーツを見つめだす。

 だが、誰も教えてくれなかった話に、表情を強張らせてしまう。

 茶器を置いたマキナは話を続けようと、一度大きく息を吸い込んだ。


「ウム、お主がタイタンの力を暴走させた時も、その服は、破れはしなかっただろ?」

「……そう言えば」


 フィリアから聞いたが、あまり覚えてはいない。

 ドレイクと初めて対峙した時に少しだけ巨大化し、メイジギアはその衝撃で大破。

 だが、スーツだけはそのままだった。


「現存する多くの技術は、余達と勇者の技術が合わさった物、それに淘汰されるのはよい、だが、同胞達が、あのような醜き姿に……」

「……マキナ」


 震える身体を抑えるように、マキナは両腕を組んだ。

 僅かな沈黙の後で、瞳から静かに涙を零した。

 即座に取りだしたハンカチで拭うも、それだけでは治まらない。


「私的な頼みとなるが、お主を、今や数少ない、タイタンの戦士として頼みたい」

「……」


 固唾を飲み込んだアーシャの両手は、マキナの大きな手に包まれた。


「此度の戦い、首謀者は完膚なきまで叩きのめして欲しい」


 充血した目を向けて来るマキナのセリフに、アーシャはため息をついてしまう。

 彼女の手を離し、カップの紅茶を飲み干す。


「聞いていれば、昔話じゃなくて、ただの恨み辛みか」

「……そうなるな、すまぬ」

「いや、正直、先祖や同胞は大事だが、お前程ではない」


 アーシャの正直な言葉に、マキナは俯いた。

 だが、そんな彼女を横目に、アーシャは指の関節を鳴らす。


「だがな、今回の首謀者も、ビーキーパーズの連中と同罪だ」


 声を低く震わせ、アーシャは右腕の火傷痕に手を置く。

 動かなくなった両親の姿。

 焼け落ちる家々。

 そして、今回の戦いで再会したマックスや、他の村人たちが連れて行かれる様子。


「私が、この手で八つ裂きにしてやるさ」


 燃え落ちる村の上で、誇らしくなびいているビーキーパーズの旗。

 過去が思い起こされ、アーシャは何度も指を鳴らした。


「その気概があれば、あの童との和解も容易だな」

「……」


 マキナの発言で、アーシャから漏れ出るオーラは急に縮まった。

 表情も落ち込んでいき、目も焦点が合わない。


「い、いや、その……そ、それは、また、別、と言うか」

「お主……意外と脆弱なのだな」

「うるせぇ……」


 マキナに替えのお茶を淹れてもらいながらアーシャは俯き、答えを出せずに沈黙した。


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