表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/126

戦い後の密談

 

 マキナの保有する艦隊の旗艦、コンゴウにて。

 アーシャ達はソウリュウでは無く、この艦へと逃げ込んでいた。

 格納庫で休憩をとっていたアーシャは、フィリアへ戦闘ログを見せていた。


「……第五世代型?以前の奴と違うのか?」

「はい、そっくりですが、マックスさんの状態を見ると、恐らく」


 メイジギアの捉えた映像を元に出されたフィリアの回答に、アーシャは後頭部を掻きむしる。


「こ、この際違いは置いといて、アイツは、その、私の事は覚えていないのか?」

「今のデータだけでは、何とも言えません」

「……そうか、せめて、こっちに引き戻す方法だけでも解らないか?」


 俯かせた表情でアーシャが訊ねると、フィリアは口元を引きつらせた。

 首のチョーカーが僅かに光ると、曇る顔で答えだす。


「……か、可能性が無いわけでは」

「ほ、本当か!?」


 フィリアの回答に、アーシャは彼女の肩を掴んだ。


「はい、ですが、その……」

「や、やっぱり、なんか、有る感じか?」

「……はい、このタイプは、指令船のような物がありまして、それが、どこに有るのか」

「……そうか、けど、可能性があるなら、私は諦めない」


 ゆっくりと手を離したアーシャは、涙ぐんだ目でフィリアの顔を見る。


「……フィリア?」


 彼女の顔は、どこか怒りを孕んでいた。

 その瞳は自分に向けられているのか、別の誰かはわからない。

 だが鋭い彼女の目に、アーシャは痛む胸を抑える。


「そ、その、どうした?」

「……いえ、ただ、その」


 瞳の中に見えた怒りの炎は消え、代わりに潤んだ目を向けられる。


「……私は、貴女の傍から離れませんから」

「あ?」

「たとえどんな未来になっても、私は、私だけは……ずっと、貴女の傍に居ますから」

「ちょ」


 ゆっくりと歩いて来たフィリアは、アーシャの胸に顔を埋めて来た。

 鎧越しでは感じ取れなかった彼女の温かさが伝わり、

 彼女の行動に目を白黒させるアーシャは、彼女の事を抱き返す。


「……ああ、ありがとう」

「……」


 お礼と同時に、フィリアが服を掴む力が強まった。

 心なしかフィリアの顔が熱くなったように思えたが、気にする事無く頭を撫でる。

 今までのお礼と言わんばかりに、暖かく。


「すみません、こんな、わがまま」

「いや、私だって、いつもフィリアの世話になってるんだ、これ位どうって事ない」


 胸から顔を離したフィリアは、いつもより歪な笑みを浮かべた。

 顔も赤く、目も充血しているように見える。


「フィリア」

「ん」


 アーシャは、フィリアの頭に手を置いた。

 そして、微笑みながら告げる。


「私もだ、私も、フィリアから離れたりしないさ」


 手の甲に、フィリアの両手が乗せられる。


「……マックスさんの、救助に成功しても、ですか?」

「……」


 手を止めたアーシャは目を逸らし、口元を引きつらせた。

 救助が成功すれば、フィリアと居られる時間が減る。

 そんな不安を過ぎらせると、手の甲にフィリアの爪が立てられる。


「いった!」

「……私の事も、構ってくださいよ?」


 痛みで手を引き離すと、口元をすぼめるフィリアと目が合う。


「わ、解ってるって」

「……すみません、やり残した整備を思い出しました」

「あ、フィリア!」


 どこかへと歩き去るフィリアに手を伸ばすが、その手は届かない。

 彼女の髪の先と指先が触れ、その手を包み込む。


「フィリア……ごめんな、こんな時、何て言えば良いか、分からないんだ」


 零れ落ちる涙を拭うアーシャは、自分の頬を殴った。


 ――――――


 アーシャから逃げたフィリアは、自分のアーマーにすがり付いた。


「……バカだ、私は」


 涙を拭きながら、フィリアは孤児院で交わした約束を思い出す。


「そうだ、私は、あくまで、友人だ」


 自分で発した言葉に、胸を斬り裂かれた気分だった。

 込みあがって来る吐き気を抑え込み、フィリアは身体を震わせる。

 アーマーに額を当てると、背後から声が聞こえる。


「どうしたの?気分でも悪い?」

「……」


 聞き覚えの有る声に、身体を震わせた。

 だが思い出せない。

 涙を拭い去りながら、フィリアは振り返る。

 なぜだか、嫌な予感が背筋を撫でた。


「すみません、今は、立て込んで……」


 話しかけて来た人物を前に、フィリアは目を見開いた。

 耳が木の葉のように長い、黒髪ショートヘアーの少女。


「そう?じゃ、出直すよ」


 ナインケルパーを見た瞬間、フィリアの息が止まった。

 彼女を見た事で、失われていた記憶の一部が掘り起こされる。


「……」


 何も答えられない。

 先ほどの苦しみを圧倒する程の恐怖に、身体が固まっている。


「(ヒューム由来の黒髪、そして、エルフ由来の耳)」


 思い返される。

 次々と焼かれ、粉砕される仲間達の姿。


「ナイン、ケルパー(そうか、今は名前を変えて)」

「ん?君、どこかで会ったかな?」


 ナインケルパーの顔が、一気に近づいて来た。

 互いの息がかかる程近い。

 心臓が、今にも破裂しそうだった。

 それでも、フィリアは声をひねり出す。


「……い、いえ」

「そっか、じゃ、この戦いの間はよろしくねー」

「……はい」


 今にも消えてしまいそうなか細い声で、フィリアは返事をした。

 止まらない震えを必死に抑えながら、思い起こされた記憶の断片を整理する。


「人類種の、裏切り者……アイツだ、アイツが……」


『コードナイン』そうつづられたファイルが、震える瞳に表示される。

 アーシャ達と出会う前、軍属だった頃の最初で最後の任務。


「私の、最初の排除対象……」


 歩き去る彼女の姿を見ながら、フィリアは拳を握り締める。


「崩壊戦を引き起こした……世界を歪めた元凶」


 その顔を、フィリアは再び焼き付けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ