巨人との会談
戦線から離脱した艦隊は、陣形を組みながら陸を進んでいた。
ソウリュウに残っていたマキナは、その足でコマンダーの元へ赴く。
艦橋へ案内され、屈みながら扉を潜る。
「ふぅ、コマンダー、救援感謝する、直接会うのはこれまた久しぶりだな」
「……ああ、そちらも、サラマンダーの収容、感謝する」
コマンダーに一礼したマキナは、自分の髪をかき分けた。
耳から漏れ出る長い耳をピクピクと動かし、周りのオペレーターへと敬礼。
鋭い目でコマンダーと目を合わせ、空気を凍てつかせる。
「……だが、まだ安心はできん」
「確かに、奴らがこの程度で諦めるとは思えん、それに、いくらか疑問もある」
「……サイクロプス、か」
「ああ」
腕を組んだマキナは、今回も大量に出現したサイクロプスを脳裏に過ぎらせた。
同時に、以前コマンダーの送って来た資料が過ぎる。
「解放戦線が使っていた物と同型であったな、奴らが同盟関係となった話は、聞いてはおらぬか?」
「……いや、だが、何かしらのコネクションがある事は、間違いない」
「ウム、だが今は、奴らがどのような一手を打って来るか、であるな……」
目を細めたマキナは、コマンダーと共に俯いた。
同時に、脳内に浮かび上がって来る。
同志たちが数の暴力に蹂躙され、捕らわれる姿。
無残な現実が脳に焼き付き、マキナの視界が揺らいだ。
「……グッ」
「……どうした?」
「いや、少々疲れが出たようだ、ここまで激しいのは、久方ぶりであったからな」
壁に手をついたマキナは、ゆっくり息を整えた。
そんな彼女へ、レイブンが話しかけて来る。
「マキナ、疲れている所悪いが、例の追加装備、機体がショートしたと言う報告が相次いでいる」
帰投して来た部隊からの報告を読み上げたレイブンの鋭い目が、マキナへ襲う。
彼の言葉を少し考えると、何かに気付いたように手を叩いた。
「ああ、すまぬな、あれは元より規格外の装備なのだ」
「規格外?」
「ウム、発射の度に機体の限度を超えた荷電負荷が肩部を襲ってしまう」
「……なぜそんな物を」
「タイタンバスターを持たぬ余達にとって、あれが生命線であった……故に、整備の指示は、余の弟子に通達しておる」
「レプティルか、わかった、一先ず彼女へ一任するよう通達する」
「ウム、頼む」
レイブンは改めて格納庫へ無線を繋ぎ、レプティルとのコンタクトを開始。
彼を横目にしながら、マキナが思い浮かべるのは一人の少女。
彼女を思い浮かべ、軽く目を閉ざす。
「……コマンダー」
「……何だ?」
軽く目を開いたマキナは、コマンダーのデスクに手を置く。
「無理を承知で申す、今宵だけでよい、アーシャを、貸してほしい」
「……以前にも言ったが、彼女はマスコットではない」
「分かっておる、他意は無い」
「……では、何のつもりだ?」
「伝えておく事があるのだ……頼む、どうしても、彼女と」
デスクに置かれているマキナの手が、僅かに震えた。
寒気と共に、重みが身体にのしかかって来る。
「……」
コマンダーから返答は無く、マキナは首を横に振るう。
「分かっておる、お主が彼女らをどれだけ大事に思っておるのか……すまぬ、忘れてもよい」
「……だが」
デスクから手を離し、頭を下げようとした時だった。
「……」
「ぬ?」
「……先ずは本人に確認を取れ」
「……」
「……そちらも、トップとして色々有るのだろう、今回ばかりはチャンスをやる」
コマンダーからの返答で、張り詰められていたマキナの肩から力が抜けた。
表情も明るさを取り戻し、口元が緩む。
「ま、まことか?」
「……ああ、ただし、最終的にはアーシャの意思だ、そこからは保証しない」
「う、ウム、承知した」
「……それと、対抗策だ、その話を終えた後で彼女の元に行け」
「ああ、そうさせてもらおう」
表情を緩めたマキナは、改めてコマンダーと向き合った。




