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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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逃げ道

 別の方角にて。

 レッドはサラマンダーを駆り、サイクロプスの群団を相手に孤軍奮闘していた。

 その機体の中で、レッドは頭を振るった。


「はぁ、はぁ、はぁ、黙れ……手綱を握るのは、俺だ!!」


 脳内に響く言葉を振り払い、レッドはサイクロプスを殴り殺した。

 代わりにフォームは乱れ、バランスも大きく崩れる。


「ッ、チクショウ、俺じゃ、無理なのか?」


 踏ん張って立った状態を維持し、歪んだ視界でサイクロプスを睨む。

 自己嫌悪に陥りかける彼に、通信が入り込んだ。


『手綱引くより、合わせた方が良いよ』

「ッ、その声」


 通信をしてきたのは、対極の方角に居る筈のナインケルパー。

 いつの間にか上空に機体が浮かび、文字通りの高みの見物を行っていた。

 彼女からの通信を受けながらも、レッドはサイクロプスと応戦する。


「何の用だ!?お前の担当は向こうだろ!?」

『いやー、粗方殺しちゃって、暇で』

「もうかよ、つか、お前の話し方緊張感薄れるんだよ!!」


 怒りながらも、レッドはサイクロプスを蹴り飛ばした。


「(チクショウ、同じメサイアシリーズに乗ってるってのに、何でアイツはあんな余裕なんだよ!?)」

『ほらほら、アドバイスしてあげるから、集中!集中!』

「だからテメェの声で集中途切れるんだよ!!」


 彼女の駆るシルフィードは、チアガールのような動きで応援を開始。

 額に血管を浮かべたレッドは、サイクロプスを締め上げた。

 首の骨を折り、別の標的へと目を向けようとした時。

 多数のアーマードナイトたちが群がり、動きを止めて来る。


「クソ!(あの女に気を取られてる隙に)」

『そこで排熱使ってみな、そうすれば振り払える』

「チ!」


 舌打ちしながらも、レッドは彼女に従った。

 装甲表面の粒子が剥離。

 次の瞬間、熱波が周囲の機体を蒸発させた。


「(……少し楽になったか?)」


 排熱と同時にレッドの頭の重みは解消、視界が僅かに戻った。


『来るよ!』

「分かっている!いちいち指図するな!!」


 怒鳴るレッドは、機体の口内に魔力を収束。

 向かってくるサイクロプスへ、一気に放出した。


「消えろ!!」


 ブレス攻撃によって、サイクロプス達は蒸発。

 その代わり、大量の魔力消費で片膝をついてしまう。


「はぁ、はぁ、クソ……ウッ!」


 消耗による疲労で、胃の内容物が逆流しかけた。

 なんとか飲み込むと、無理矢理立ち上がる。


『良かった、今ので全滅だね』

「……まぁ、今回は助かった」

『それはどうも』


 嬉しそうな声で、シルフィードの手が差し伸べられた。

 その手を取り、レッドのサラマンダーは立ち上がる。


「(けど、こんな奴に教官たちが負けたとか、信じられねぇ)」


 過去に大敗をもたらした存在へ目を向けると、胸の奥が熱くなった。

 今すぐにでも殴り掛かりたい欲求を抑え、母艦の方へ向く。


「そろそろ、十分か」

『……各隊に通達、もう十分だ、退却を開始する』

「お、丁度良いな」

『だね、今日は、少しは楽しめたよ』


 軽口を言い終えると、二人はマキナの艦へと帰投して行った。

 しかしレッドの背中を追うナインケルパーは、一度空中で立ち止まる。


「ん?」


 電流のような気配が、彼女の頭に突き刺さった。

 未だに視界の悪い箇所、曇天の空を睨みつける。

 センサーには反応はない。

 だが、確かな存在に彼女の口元を歪ませた。


「……やっぱり、この依頼、受けて正解だったね、シルフィード」


 操縦桿を撫でたナインケルパーは、機体を変形。

 立ち止まっていた後れを取り戻すべく、艦へと向かう。


「さぁて、この先、もっと面白くなりそうだ……それに、レッド、君も死なせはしないよ、今度遊ぶかもしれないから、ッ!」


 ひとり言を不気味に呟いていると、ナインケルパーの頭に声が響く。

 痛みと共に響くその声に、ナインケルパーは不満で鼻を鳴らした。


「……どうかな?ボクとしては、彼の方がまだ楽しそうだけどね」


 表情に影を落としながら頭の言葉に答えると、また新たに声が響き渡る。


「ま、その辺は経過しだいで決めようか……うん、ここで君と争っても、意味無いし」


 徐々に顔に光を取り戻していくと、ナインケルパーは唇を舐める。

 そして、ペダルを大きく踏み込む。


「どちらにせよ、今は、今を楽しもうか!」


 機体の加速で襲い掛かるGを身に受けながら、ナインケルパーはマキナの艦へと向かう。

 次の遊びを、心から楽しみにして。


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