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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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標的

 シルフィードが現れた瞬間、艦橋内は静まり返った。

 誰も声を発さない空間に、通信が入り込む。


『久しぶり、間に合って良かったよ』

「……やはり貴様か、ナインケルパー」


 コックピット内の映像が艦橋のモニターに映り、コマンダーは画面を睨みつけた。


『うん、まぁそんな怖い顔しないでよ』


 そのセリフと共に、ナインケルパーは操縦桿を動かす。

 彼女の操縦に合わせたシルフィードは、両肩と両腰の砲台を展開。

 ソウリュウの前に出ると、彼女は口を開く。


『安心してよ、今回ボク味方だから』


 ほほ笑みと共に、シルフィードの攻撃が開始された。

 竜巻状の粒子ビームが連続で発射され、敵の機体のコックピットを次々撃ち抜いた。

 一部は空中で爆発し、大量発生した風の刃が機体を斬り裂く。


『ほらほら!雑兵はボクがやるから、アンタは味方を回収しなって!』

「……どういう風の吹き回しだ」

『今はどうでもいいでしょ!もうじきマキナも来るから、早く!』

「……わかった、甲板上の部隊に通達、直ちに地上へ降り、撤退を援護しろ」


 甲板の部隊は手薄となった空中の警戒網を抜け、次々と地上へ降下。

 ナインケルパーもそれをアシストし、頃合いを見てライフルで方角を指す。


『彼女は向こう!突破口は切り開いてあげる!』


 その言葉と共に、シルフィードは飛行形態へ変形。

 先行して敵の部隊を蹴散らし、ソウリュウの進行ルートを形成する。


「……感謝する」

「ソウリュウ!面舵一杯!生き残っている砲台は、全て敵艦へ向けろ!!」

「押忍!」


 操舵手の手によって、ソウリュウはナインケルパーの後に続く。


 ――――――


 地上では、撤退戦が繰り広げられていた。

 展開中の部隊は防御陣形を組み、ソウリュウの後を追う。


「退け!退けぇぇ!!」

「歩兵はタンクを盾にしろ!」


 戦車を遮蔽物に、歩兵部隊は移動していく。

 アーシャを抱えるサーバルも、彼らと合流していた。

 そんな彼らの頭上で、フィリアはドレイクとの戦闘を継続していた。


「残念ながら、ここから先は通しませんよ!」

「厄介だな、お前は!」


 ドレイクから放たれる電撃を、シールドによって拡散させた。

 その途中で、シールドに衝撃が襲い掛かる。


「グ!」

「打撃は無理のようだな!」

「ッ、この!」


 姿勢を戻したフィリアは、握り締めるビームサーベルを振り抜いた。

 ドレイクの刀とぶつかり合い、火花を散らす。


「よくやる」

「……」

「だが、時間を稼いでいたのは、お前達だけじゃない」

「どう言う」


 鍔迫り合いの中で、ドレイクは二本の筒を取りだした。

 それを見た瞬間、フィリアは再び盾を構える。


「ッ!」


 次の瞬間、目の前が光に包まれた。

 すぐに攻撃を行うも、もうドレイクの姿は無い。


「……また見逃された、いや、今回は逃げられたか」


 中に浮くフィリアはナイフを腕にしまい、ソウリュウへと帰投。

 甲板上に集結しているスコールチームと合流し、アーマーを解除する。


「ッ」


 感情抑制が消え、疲れとは別に一気に心拍数が大きくなり、呼吸も荒くなる。

 すぐさまアーシャの元へ駆け寄り、目を閉じる彼女の顔に手を置く。


「マスター!!」

「……ッ」


 味方が続々と帰投する中で、アーシャはゆっくりと目を開く。


「……フィリア」

「マスター、良かった」

「ああ、心配させやがって」

「もう、次はお仕置きだよ?」


 サーバル達の軽口が響く中で、アーシャはゆっくりと起き上がった。

 身体を引きずり、敵の方へと手を伸ばす。


「……」

「おい、どうした?」

「……マックス」

「ッ」


 涙を流すアーシャは、届くはずの無い手を伸ばし続ける。

 だが、その手は甲板に着く。


「う、うう……」

「マックス、さん」


 その名前を聞き、フィリアは目を細くした。

 胸の奥が焼けるように痛み、感情が膨らみだす。


「確か、マスターの昔の女」

「ふぃ、フィリアちゃーん?どこでそんな言葉覚えたのー?」

「……いえ、別に」


 冷や汗をかいているケフュレスを横目に、フィリアはアーシャの元へ歩み寄る。

 未だに涙を流す彼女へ、ゆっくりと手を伸ばす。


「マスター」

「……フィリア」

「マックスさん、居たんですね?」

「ああ」


 隣に座ると、アーシャは胸に顔をすり寄せて来た。

 弱々しく震える彼女の頭を撫でていると、視界の隅に艦隊を見つける。


「ん?あの艦隊は」

「あー、マキナさんの艦隊だね、やっと合流できたよー」


 ケフュレスの言葉通り、三隻の艦船は同じエンブレムの描かれた旗を掲げている。

 彼女達を見ていると、空中に航空機を確認。

 人型へと変形したその機体を目にし、フィリアの目の色が変わる。


「あ、あれは!?」

「……シルフィード、ナインケルパーだね、マキナさん、ダブルブッキングしてたみたい」

「ああ、通りであの規模の敵を退けられてた訳だ」

「……はい」


 サーバルとケフュレスの話を耳に挟みつつ、フィリアは拳を握り締めた。

 仲間の死が想起され、機体への怒りが噴き上がって来る。


「けど、今は味方だ(そもそも、パイロットが以前と同じとは限らない)」


 友軍識別信号を目にし、フィリアは怒りを飲み込む。

 アーシャを抱く力も強めていると、戦闘班の一人が叫ぶ。


「お、おい!何か来たぞ!!」


 彼の言葉に反応したスタッフ達は、次々と彼の指さす方を向く。

 フィリアも目を向けると、大量の輸送機が姿を現す。


「輸送機?一体、何を」


 機体下部には、コンテナでは無く円柱状の物体が吊り下げられていた。

 四方八方に展開した輸送機の編隊は、機体下部の物を地面へと投下。

 フィリア達は困惑しながら、全方位を警戒する。


「……あの部隊は」


 頭に疑問符を浮かべるフィリアは、輸送機に刻まれているエンブレムを目にした。

 ハチの巣を模った特徴的なそれは、フィリアの記憶にも有る。


「……ビー、キーパーズ」


 思わず口にした言葉を、フィリアは後悔した。

 腕の中のアーシャの体は一瞬動き、サーバル達は見開いた目をアーシャの方へ向ける。

 サーバルが一早く叫ぶ。


「アーシャを止めろぉぉ!!」

「ウワアアア!!」


 すぐさまアーマーを展開したフィリアは、逆上したアーシャを抑え込んだ。

 だが、完全に抑えきる事はできない。


「マスター!今は落ち着いてください!!」

「逃がさない!殺す!絶対殺してやる!!」

「クソ!」


 サーバル達に続き、スタッフ達は次々とアーシャへ群がる。

 おかげでアーシャは倒れ込み、拘束を振り払おうと暴れ出す。


「離せ!離せ!!私は、私は!!」

「バカやろう!お前今マトモに戦えないだろ!!」

「関係ない!今が、今しか!!」


 スコールの他にも多くの戦闘員たちの拘束は、徐々に解かれていく。

 そんな中で、一人の男が彼らを押しのける。


「退け」

「ッ、兄貴!?」

「オセロットさん!」

「今の貴様に、何ができる!?」


 いつの間にか帰投していたオセロットは、アーシャの胸倉を掴み上げた。

 間髪入れず、硬く握られたオセロットの拳がアーシャの頬に激突。

 血を吐き出しながら、アーシャは甲板を転がる。


「……ッ」

「甘ったれるな!」

「グ、ウ、ウウ……アア」

「……マスター」


 再び泣き出したアーシャは、甲板を涙で濡らす。

 彼女へすがろうとフィリアは一歩踏み出すも、オセロットに止められる。


「待て」

「ッ、ですが」

「周りを見てみろ、今は子守りをしている場合じゃない」

「……」


 オセロットの言葉に従い、フィリアは周囲を見渡す。

 投下された筒からは、大量のサイクロプスと強化人間達が出現。

 気付けば、退路は断たれていた。

 逃げ場はもうどこにもない。


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