再会の戦場
銃弾飛び交う戦場で、アーシャとサーバルは上空を見上げていた。
「チ、今回は子分連れか」
「らしいな」
上空を移動するドレイク達を見るなり、二人は武器を握り直す。
先頭のドレイクが帯電を始め、アーシャは前へ出る。
「……来るぞ!」
一気に接近して来たドレイクの攻撃は、アーシャの手斧と衝突。
紫電が飛び散り、衝撃で砂の地面は削れる。
「よう、久しぶりだな!小娘!」
「ああ、元気そうでなによりだ!!」
顔を合わせ、ドレイクの刀を受け流す。
続けて二人の武器はぶつかり合い、甲高い金属音と共に衝撃波がまき散らされる。
「少しは腕を上げたか!」
「こっちも遊んでるだけじゃないんだよ!!」
隙を突いたアーシャの回し蹴りが、ドレイクの腹部を突く。
後方へ吹き飛んでいくドレイクは、煙の昇る腕部を見せつけてくる。
「本物に、一歩近づいたな」
「本物?」
「だが悪いな、今回は遊んでる暇はない!」
突き出されたドレイクの指に合わせ、アーシャにビーム砲が降り注ぐ。
「アーシャ!上だ!」
「チ!」
弾幕の中をホバー移動で動き、ビーム砲を回避。
一部はシールドで防いだが、対ビーム装甲の表面が融解する。
「クソ!思ったより威力が!」
上空へと機銃掃射を行うも、上の部隊には当たらない。
「コイツ等!」
「以前の奴の同型だ!」
次々と粒子ビームが降り注ぎ、避け続けるアーシャにドレイクが迫る。
「今回こそ死んでもらうぞ!」
「チ!」
舌打ちしながら手斧を構えると、アーシャとドレイクとの間に粒子ビームが放たれた。
熱砂が巻き上げられ、開かれた二人の間合いにフィリアが立つ。
「どわ!?」
「マスター!ドレイクの相手は私が行います、彼等は貴女達が!」
アーシャの前に降り立ったフィリアは、腕部よりナイフを取り出す。
ビーム刃と、ドレイクの刀がぶつかり合う。
「ッ!その声、あの時の奴か!」
「ええ、今回は殺します」
「ま、任せたぞ!!」
斬撃を辺りに散らしながら、フィリアはドレイクを相手取った。
二人を横目に、アーシャは六人の強化人間部隊を目にする。
「つっても、降りて来る気配無いぞ!」
「……」
空から一方的に繰り出してくる銃撃の中で、アーシャは周囲を見渡す。
友軍は他の敵部隊の抑え込みに追われ、強化人間部隊の相手をしている暇はない。
艦砲射撃は対空防御などで、そもそも期待できない。
「す、スコール3!」
「まっかせて!」
アイドルの様なポーズを取ったケフュレスは、ドレイクのように帯電。
緑色の電撃を両手に移動させ、一気に放出する。
「必殺!運命の叫び声!!」
「相変わらずどんな技名だよ」
「歳考えて欲しいよな」
サーバルと耳打ちしていると、緑色の電撃は空一帯に広がった。
飛んでいたミサイル群は敵味方問わず爆散し、空の部隊も巻き込まれる。
「けど、回復魔法以外の魔法久々に見たな」
「ああ、いつも狙撃ばっかで」
強化人間部隊達の飛行ユニットは爆散し、力無く落下していく。
地面へと落ちる彼らに向けて、アーシャは手斧を構えた。
「さて、これで一掃できたか?」
「あはは、残念、あれ、ちょっとだけ痺れさせるだけで、倒す事はできないよ」
「……そうなると」
ケフュレスの言葉で気を引き締めたアーシャは、ゾンビのように立ち上がる兵士達を捉える。
「トドメは私らか」
「らしいな」
「あー、それだけじゃないかも」
「え?」
ケフュレスが指さした方を向くと、同じ量の強化人間部隊が空より襲来。
新たな部隊は、ソウリュウへ向けて進軍していた。
「お、おいおい、マジかよ!何人いるんだ!?」
「知るか!けど、地上の連中だけでも、私達でやるぞ!」
「じゃ、私は甲板に上がって、援護してくるねー」
「た、頼んだぞ!」
その宣言通りに、ケフュレスは足元に作った風で一気に甲板へ飛び乗る。
彼女を見送り、アーシャとサーバルは戦闘体勢へ入った。
「……来るぞ!」
凄まじい速度で迫って来る強化人間達に、アーシャ達は肉薄。
三人ずつ相手取り、距離を取ったサーバルと異なり、アーシャは彼らの攻撃を受け止める。
「チ、こいつ等!」
ガントレットのパワーで三人を引きはがし、すぐに魔力の塊を放出。
一体に命中するも、残り二体が襲い掛かる。
「(前の奴より強い、特に!)」
シールドで片方吹き飛ばすと、最後の一人へと食い掛る。
「コイツ!」
「……」
獣の腕を模ったガントレットで、アーシャの手斧は受け止められた。
拮抗する力を利用し、強化人間の姿勢を崩す。
「ッ」
「技なら!」
すぐさま蹴りを入れ、グレネードランチャーを数発撃ち込む。
強化人間は爆炎に包まれ、砂がアーシャにも降りかかる。
「……ま、まだ来るか!」
爆炎をかき分けながら、ヘルメットを破損させた強化人間が出現。
反応の遅れたアーシャはランチャーをさし出し、敵のガントレットを受け止めた。
弾倉部分は潰され、残っていた榴弾が炸裂する。
「グ!」
破片の衝突でアーシャのヘルメットも破損し、顔が半分以上露出した。
悪くなった視界を確保するべく、ヘルメットは放棄する。
「クソ!」
ヘルメットを砂の上に叩きつけると、懲りずに向かってくる強化人間へ手斧を繰り出す。
刃は相手のヘルメットを捉え、完全に破壊。
代わりに間合いに入られるも、アーシャは攻撃を受け止めた。
「……ッ!?」
ヘルメットの奥にあった顔に、アーシャは目を見開いた。
狼の耳と、額に古い傷を持った少女。
手を震わせたアーシャは、手に汗を握り締める。
「そ、その傷、木から落ちた時の……マック、ス」
息を荒くしながら、アーシャは幼少期を思い出した。
「ッ!」
「グガ!!」
探し人を前にして動揺したアーシャは、腹部に蹴りを受けた。
受け身を取って手斧を構えるも、マックスらしき少女の様子が変わる。
「……な、何が起きて」
「……アァ……」
頭を抱え、苦しむ様子の少女。
声ですらないノイズ音を口から出しながら、彼女は睨んで来る。
次第に、ゆっくりとアーシャへ手を差し伸べて来る。
「……」
彼女の姿に、アーシャも手を差し伸べた。
マックス本人と言う、確証を持って。
「マックス……改造されても、お前は、お前、だよな?」
すっかり警戒を解いたアーシャは、少女と手を握る。
機械の手ではあるが、数年ぶりに手を繋げた。
「マックス、なんだよな?」
表情筋の一つも動かさない彼女と、アーシャは目を合わせる。
返答に目を輝かせると腕を引かれ、マックスの肘が迫った。
「ッ!しま!」
金属の肘が突き刺さり、アーシャは手斧を手放す。
続けて、アーシャの腹部に打撃が繰り出された。
「グ、ゴホッ!!」
血を吐き出したアーシャは、マックスへ目を向けた。
片手で頭を抑える彼女は、ガントレットから爪状のブレードを展開。
「……」
「クソ!」
機関銃を手にするも、震えた指は引き金を引けない。
失う恐怖が身体を金縛りにする。
接近を許し、攻撃を受け止めた。
「……よ、よせ、私だ!アーシャだ!」
「……ッ!!」
一瞬だけマックスの動きは止まるも、すぐにブレードを繰り出してくる。
「や、止めてくれ!お願い!」
「……」
「マックス!」
目を見開いたマックスは、攻撃を続けて来た。
機関銃は斬り裂かれ、続けて盾も壊された。
アーシャは攻撃を受け止め、マックスの両手のブレードをへし折った。
「マックス!!」
「ッ!」
アーシャの叫びに反応し、マックスの動きは止まった。
小刻みに震える彼女の手を、アーシャは再び握り締める。
「……私の元に、戻って来てよ、この時の為に、ずっと、探して」
涙を零したアーシャは、いつになく幼い声を出した。
マックスの腕から力は抜け、アーシャは目を合わせる。
僅かに崩れている彼女の目に、目頭を熱くする。
「ッ!?」
次の瞬間、鼻先に拳が突き刺さった。
鼻はへし折れ、続けざまに顔面に攻撃が集中。
衝撃で脳は揺れ動き、遠のいた意識の中でアーシャは膝をつく。
「……ま、っく、す、お、思い、出し」
すがりつく様にマックスへと抱き着くが、彼女の表情に変化は見られない。
顔を涙で汚すも、アーシャのアゴにアッパーカットが炸裂。
意識を手放したアーシャは、砂の上に倒れた。
「どう、して……」




