開戦の炎
ソウリュウは予定通りの航路を辿り、マキナの縄張り近郊へと辿りついた。
時を合わせるように艦内中にアラートが響き、艦橋内の空気は重くなる。
「大気中のパーティクル粒子、戦闘濃度を確認しました」
「付近で高熱源を感知、戦闘が続いているようです」
オペレーター達からの報告を耳にし、コマンダーは杖を握り締める。
「……マキナとの連絡は?」
「試みていますが、依然不通です、そもそもこの濃度では、かなり制限されています」
「……わかった、戦闘態勢に移行しろ」
「押忍!」
オペレーターは、コマンダーの言葉の復唱を行った。
喉に張り付くような空気を吸い込み、コマンダーは目を細める。
「コマンダー、どうするつもりだ?」
「……一先ず、彼女の安否だけでも確認する」
「無事じゃなかったら?」
「すぐにこの場を引き上げる」
隣に立つレイブンの質問に答え、コマンダーは外へ目を向けた。
粒子に阻まれる視界の中に、いくつもの閃光を見つける。
「……激戦だな」
「ああ」
「……砲撃戦、用意」
「砲撃戦よーい!」
レイブンの復唱に合わせ、オペレーター達は端末の操作を開始。
彼等の操作に合わせ、砲塔が動きだす。
「……こちらへ注意を引く、敵艦を目視し次第、砲撃を開始、そっちはお前に任せる」
「任せろ」
艦の指揮を任されたレイブンは、眼鏡をかけ直す。
鋭い目で外を睨みつけ、敵の艦艇を捉える。
「敵は……また奴らか」
「……リバティフリューゲル」
「ああ」
敵艦に刻まれているエンブレムに息を飲み、レイブンは拳を握り締める。
「だが、これも依頼だ、主砲用意!目標、敵ナイフヘッド級!撃ちぃ方ぁ始めー!」
怒号のようなレイブン指示で、ソウリュウの主砲が火を吹いた。
――――――
その頃。
ソウリュウの主砲の音が格納庫にも響き渡り、兵士達の動揺の声が響く。
「い、いつぶりだ?この艦が主砲撃つなんて」
「さぁな、それだけ酷いって事だろ」
彼等の声を耳にしながら、アーシャは機関銃に弾帯をセット。
愛用の手斧を砥石で研ぎ上げ、その輝きに笑みを浮かべた。
「……おし、フィリア、そっちはどうだ?」
「システム面には、特に問題有りません」
アーシャの隣で、フィリアは追加装備を装着していた。
体格はアーシャと並び、中身が小さなフィリアとは思えない。
「……やっぱ、違和感凄いな」
「そうでしょうか?」
自身の腕を眺めるフィリアを前に、アーシャは首を傾げた。
「そりゃ急にデカくなったような物だからな、クソ」
「クソとか言うなよ」
話しかけて来たサーバルは、悪態をつきながら視線を逸らした。
そんな三人の元へ、ケフュレスも合流する。
「ほーら、みんな、ロリが大人になる哀しみもわかるけど、そろそろだよ」
「ああ、そうだな」
「一部違うけどな」
ケフュレスの言葉の一部を無視し、アーシャ達はヘルメットのバイザーを下ろす。
武器を手に取ると、コマンダーのアナウンスが響き渡る。
『……各隊に通達、ライトニングチームは最前線へ出て敵艦の破壊を行え、ファインチーム、艦の左舷に展開、クラウディチーム、お前達は右舷に展開しろ、レインチーム、甲板上で対空警戒を行え』
バイザーに表示された図面に、展開する部隊の位置が表示された。
指令の終了と共に艦のハッチは展開、部隊は勇ましい声と共に続々と戦地へ出撃。
彼等を横目に、アーシャ達は未だに待機する。
「なんだ?私達は居残りか?」
『……スコールチーム、お前達はヘイルチームと共に、各所の遊撃にあたれ』
「押忍」
ヘルメットの中で笑みを浮かべたアーシャは、手斧を掲げる。
「そう言う訳だ、近づく奴らは片っ端からぶちのめすぞ!」
『押忍!』
アーシャの掛け声で、三人も武器を掲げた。
高揚させた士気に乗せて、アーシャ達も戦場へと駆けだす。
既に敵兵の波が押し寄せ、砲撃が降り注いでいる。
高低差のある砂上を突き進む四人は、特に敵の戦力が集中する箇所へと向かう。
「マスター、やはり敵はリバティフリューゲルと認識できます」
「だろうな、スコール3、4、遠距離攻撃でアーマードナイトに攻撃!スコール2!私と近接戦闘!」
『押忍!』
アーシャとサーバルはシールドを構え、敵の銃撃を潜り抜けながら歩兵へと接近。
銃撃をシールドで受け止め、敵を睨む。
「つか、ジャンク屋一つに差し向ける戦力かよ!?」
「マキナの奴、何しやがった!?」
展開しているのは、敵陣の横腹を突いたとは思えない程の数。
重装甲の部隊を前面に出し、後方から砲撃が行われている。
手斧を手に取ったアーシャの後方で、サーバルは新装備を展開する。
「けど、ソイツの試し切りに丁度いいな!」
「ああ!お互いにな!」
その会話と共に、サーバルは左腕の赤く輝く刃を見せつけた。
彼女の弾んだ声に応えるように、アーシャもガントレットを光らせる。
「行くぞ!!」
シールドを構える部隊へ飛び上がったアーシャは、手斧を振り下ろした。
『くらうかよ!』
分厚い装甲に手斧は阻まれるも、その刃は盾に亀裂を作る。
「んなもんで、防げるかよ!」
より力を込めると、ガントレットにも光が灯った。
敵の盾を粉砕し、ヘルメットを捉える。
『う、ウワアアア!』
ヘルメットを叩き割り、肉と骨を断つ感触と共に身体を引き裂く。
その一撃は、最終的に地面をえぐる。
「……っと、威力やば」
予想外の破壊力に、ガントレットを見つめた。
その隙は、他の歩兵が見逃す事は無い。
「貴様、よくも!!」
「やれやれ、もっと早くよこせよな、これ」
背後から巨大な鉈を振り下ろす敵兵に、見向きもしなかった。
その余裕を証明するかのように、敵兵の両腕と首は斬り落とされる。
「……どうだ?ソイツの切れ味」
「悪くねぇが、お前、今度そんな事やっても助けねぇぞ」
「悪い、お前に見せ場でもと思ってな」
「……見せ場ってなぁ」
互いに背中を当て合い、周囲を見渡す。
気付けば敵兵に囲まれ、逃げ場も無くしていた。
「コイツ等吹っ飛ばすだけでいいだろ?」
「それもそうだな、さっさと蹴散らすぞ!」
「おう!」
二人はそれぞれの武器へ、魔力を充填する。
「見せてやるよ、修行の成果ってのをな!」
サーバルのブレードが振り抜かれると共に、炎をまとった竜巻が発生。
一直線に突き進む炎の竜巻で、敵兵は焼かれ、斬り裂かれる。
一部の砂はガラス化し、燃えカスが散乱した。
「私だって、伊達に鍛えてた訳じゃねぇぇ!!」
ガントレットの補助で手の平に魔力を収束し、一気に突き出す。
青い魔力の塊が放出され、地面をえぐりながら前進。
囲っていた敵兵は、次々削り取った。
「マキナの奴、マジで良い物送って来やがったな」
「ああ、けど、少し残ったな」
「まだ未熟って事か」
二人の視界に映るのは、装甲の剥げたアーマードナイト数機。
むき出しのフレームで立ち上がり、反撃に移ろうとしている。
「……バックアップ!」
彼等を見たアーシャが叫ぶと、赤い粒子ビームと砲撃が二人の頭上を通過。
ボロボロの敵機体は完全に破壊され、砂の上に崩れ落ちた。
「ふぅ、相変わらずの狙いだな」
「ああ」
死体の山の中で、アーシャは後方のフィリアとケフュレスへ親指を立てた。
その流れで、サーバルともグータッチを交わす。
その時だった。
「ッ!?」
「ッ!?」
二人に襲い掛かった電流のような気配。
嫌でも忘れられない気配に、鳥肌が一気に逆立つ。
「この、気配」
空気は凍りつき、周囲が止まったように思えた。
敵兵は逃げ場を失くすように展開を始め、アーシャ達は武器を握り直す。
「間違いない」
「ああ、あのドラゴン野郎だ!」
一緒に振り向いた先に、紫電の翼を纏う影が視界に映る。
数名の部隊を引きつれたドレイクと、アーシャは目を合わせた。
「今度は逃がさねぇ」




