初めてのお出かけ1
森に落ちた二人が意識を取り戻したのは、太陽が中天に差し掛かる頃だった。
「――セレス、大丈夫? セレス、セレス……」
半泣きの雫の声にセレスが目を覚ますと、傍らに何も着ていない雫が泣きそうになりながら座っていた。
どうして何も着ていないの。なんで泣きそうなの。
疑問を口にしようとしたとたん、思い出す。
「あー。そっか、洞窟から落ちちゃったんだっけ……」
「ごめ、セレス、僕がいきなり飛び付いた、から……」
話しているうちに我慢出来なくなったのか、雫は大粒の涙をこぼして泣きだしてしまう。セレスは身体をおこし、雫を慰めようとして、ぐぎゃ、と呻いた。
「セレス!?」
「う、うー。背中が痛い……」
どうやら落ちた時に背中を強く打ったようで、動くと痺れと痛みが広がる。顔をしかめるセレスの姿に、再び雫の蒼い瞳に涙がたまった。
地上に落ちるまで少しでも衝撃を和らげようと雫は頑張った。駆虎の姿でセレスの服を咥え、必死でホバリング、休憩してホバリング、を繰り返したのだ。
それでも最後は力尽き、セレスと共に地上に落下してしまったのだが。
「僕にもっと力があったら……僕の羽がもっと大きかったら……ごめん、ごめんね、セレス」
「雫……」
セレスは痛む身体を慎重に起こすと、泣いている雫を抱き締めた。
「泣かないでよ、雫。私は大丈夫。これでも龍の子なんだし、頑丈なんだよ。それに、雫が頑張ってくれてたの、ちゃんとわかってるし。だから、泣き止んで。ね?」
「うう、セレス……」
雫はこくんと頷くと、両手で顔を拭った。セレスは雫の頭を撫で、視線を山へと向ける。
「さて、どうやって帰ったらいいのやら」
「レーンは?」
「レーン母さんの鱗を置いてきちゃったから、いつ見つけてくれるかわかんないんだよね。帰ってきて、私達が居ないのに気付いたら探してくれると思うけど……」
そこで言葉を切ってセレスは思案顔で周囲を見回した。
「……ここで待ってるのと、もっと洞窟に近いところに移動するの、どっちがいい?」
「え? うーん……セレスはどっちがいいと思うの?」
「迷子になった時はその場から動かない方がいいって聞いたけど、今は迷子っていうより遭難だしね……」
どっちがいいんだろ、と呟きながらセレスは立ち上がった。取り敢えず、動ける程度には回復してきたようだ。
「まあ、しばらく待ってみようか。あと、雫の服も探したいから、少しその辺りを歩いてみよう。服が見つかるまでは元の姿でいてくれる?」
「きゅー」
返事のかわりに雫は駆虎の姿に戻った。ふわふわの毛皮の羽根付き猫は、孵った直後より一回り以上大きくなっている。
セレスは雫を抱き上げると、もう一度険しい山を見上げた。
母龍が帰ってきているのかどうか、気配を読む事の出来ないセレスにはわからない。吐き出しかけた溜め息を飲み込んで、セレスはゆっくりと歩き出した。




