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一蓮華《いちれんはな》は溺愛白狐《シロ》に守られている  作者: 猫邑 ゆか


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第5話:お風呂上りは艶やかに①

「華、お風呂どうぞー」


 先にお風呂へ入ったお兄ちゃんが自室へ戻りながら、私へ声をかけてくれた。


「はーい」


 お兄ちゃんに返事を返しながら、どうしても気になっていた、使い古した箒の穂先のようなシロの髪へと目をやる。


 シロの髪は、腰くらいまである綺麗な純白の長髪なのに、手入れはされていないようで、まばらに千切れている。ギザギザの毛先は、少し触るだけでチクチクして、ハリネズミの体毛ってこんな感じなのかな、と想像してみたりした。


 お好み焼きを堪能して、満足そうにソファに寝転んでいるシロへ声をかけた。


「ねぇ。髪の毛、その……ぱさぱさっとして……じゃなかった、わしゃわしゃっと……じゃなくて……少し、傷んでるね」


 チクチク言葉でシロの心を傷付けないように色々考えたけど、結局、気を使った言い方は出来なかった。申し訳ない。


 シロは、自分の髪を一房摘まみ上げ、じっと見つめた後、指先で弾いた。


「そんなもん、髪の毛なんか長くなったら、ガブッと食いちぎればええんや。邪魔やなと思ったら、ちぎる。短かなったらええんや」


「ちょ、ちょっと……そんなワイルドな……。あ、動物?だもんね。せっかく白くて綺麗な髪なのに。メンテナンスしたらきっとさらさら艶々になるよ!まぁ、揃えるくらいしか出来ないけど…私、自分で前髪は切ってるし!絶対格好よくなるよ!切ってあげる!」


 綺麗にシャンプーしてトリートメントして、櫛で丁寧に梳かしたらどうなるんだろう。もしかして、もっと艶々で、さらさらふわふわの気持ちいい毛並みになるんじゃないかと、私は好奇心を抑えきれずにシロに提案した。


「ふぅん……華が言うんやったら……お願いしよかな……」


 私の提案に、シロは少しだけ視線を泳がせ、しぶしぶといった風を装いながらも、満更でもない様子で乗ってくれた。


 掃除が面倒なので、髪の毛が落ちてもいいようにお風呂場へと向かう。

 ここなら床に髪の毛が落ちても、最後にシャワーで一気に流せば、排水口でクルクル回って一か所に集まってくれる。小さなことだが、掃除の手間がぐっと減る。実によく考えられた、便利な仕組み。お風呂掃除の後にこの水が回っている様子をじっと見つめるのも結構好きなんだよね。


 サッと髪の毛を流せるように、シロには上半身だけ裸になってもらった。

 私はTシャツの袖を肩まで上げ、ズボンの裾を勢いよく捲り上げる。

 風呂の椅子に腰かけ、鏡の方を向いている彼の背後へと立つ。


 後ろから見たシロの頭にはふわふわの耳が鎮座し、緊張しているのか、その先端がピクピクと動いている。


(うぅ……かわいい……!触りたい……!)


 そんな心の声に負けそうになるのをぐっとこらえながら、私は首を振って雑念を飛ばした。


 耳をぺたりと寝かせながら、シャンプーを泡立てて髪を洗い、トリートメントで艶々に整える。耳の根本も優しく丁寧に。そういえば、シロは人間の耳はないタイプなんだ、なんて観察しながら洗い上げる。途中でぴょこっと飛び出てくるケモ耳に動悸を覚えるが、私は必死に深呼吸をして、荒ぶる心を鎮めた。


 さて、次はいよいよ、髪を切る番だ。


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