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一蓮華《いちれんはな》は溺愛白狐《シロ》に守られている  作者: 猫邑 ゆか
第三章

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第55話:一途な恋は届かない

※この小説の続きをスムーズにお楽しみいただけるよう、【ブックマークに追加】を押して設定を保存してください。

「白狐風情が、己のものだと!?……羽虫ごときが!笑わせてくれる!!」


 手当たり次第に物を投げ、蓮池の底で荒れ狂っておられる、かの御方。


 周りでは錦の鯉たちがご機嫌とりに慌てふためいている。


「じわりじわりと我の愛を吸って大きく育ってきておる。婚礼の日までは現世でのびのびと育ててやろうと思っていたが……五月蠅い羽虫が飛び回る故、我の傍に置いておくとしよう」


 私は朱色の衣を引きずりながら、彼の元へと歩みを進めた。


 愛するオロチ様。


 あんな人間の娘などに懸想せずとも、私がおります。


 皆の願い、龍になれなくとも、私はオロチ様のお傍にいるだけで構いません。

 永遠に一緒にいられたらば、なんと幸せなことでしょうか。


「オロチ様……あの娘でなくとも良いではないですか。私が……私たちがあなた様のお傍におります」


「そんなこと!五百年も待っておったのだぞ!……鯉の分際で我に進言するな!!」


「うぅ……オ、オロチ様……」


 喉の奥から唸りをあげ、振り向いてくださったけれど。


 もはや、この身も心もオロチ様のその爪で裂かれてしまった。


 苦しい。


 けれど、これがあなた様に触れられた最初で最後の証。


 あぁ、オロチ様。

 お慕いしております……。


 お慕いしておりました……。


 私では叶いませんでしたが、あなた様がどうか、どうか、安らぎの時を過ごせますように……。


 あなた様は私の姿など見えてはいない。

 その眼差しは、水面に映る、現世の花嫁へと注がれている。


「少々早いが、迎えに行こう。我の花嫁」


 そして、私は祝いに喜ぶ同胞の声を聞きながら、静かに泡となって消えていった。


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