第46話:言葉にならないクリスマスプレゼント②
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私とシロはソファに並んで、テレビをつけた。
画面の中では、お笑い芸人たちがクリスマスプレゼントを狙って賑やかな争奪戦を繰り広げている。それを眺めながら、私はふと切り出した。
「シロ、クリスマスパーティー楽しかった?」
「楽しかったで!伊吹のごはんも今日は特別豪華やったし!ケーキもふわふわで美味かったなぁ。毎年クリスマスは楽しそうにしとるなって思っとったけど、今年は入れてもらえて……なんか、すごい嬉しかったわ」
俯きながらはにかむシロの横顔。その表情を見ていると、愛おしくて切なくて、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。
「これからもっとたくさん思い出を作っていこうね」
「……ええの?華と一緒になんか出来るん、楽しみやわ!」
山のように抱えた膝に頭を預け、嬉しそうに見上げてくるシロ。そんな彼の無防備な姿に、私の心もじんわりと温かさで満たされていく。私はふうと小さく息を吐いて、幸せな気持ちとともにソファに身体を沈めた。
◇
ぼんやりとテレビを見ているうちに、肩にずしりと重みを感じた。
いつの間にか、華が僕の肩に頭を預けてウトウトしている。もう夢の中へ落ちかけている華の肩を優しく叩いて声をかけた。
「華。こんなとこで寝たら風邪引くで」
「う~ん……シロ……」
両肩を揺らしてみるが、華は小さなうめき声を漏らすだけで、瞼を開ける気配はない。
「これはあかんわ。完全に寝てしもてる……」
僕は華の首元と膝の裏へ腕を差し込み、グッと腕に力を入れて華を抱き上げた。無意識のうちに、華の腕が僕の首へ回される。
どこにもぶつけないよう細心の注意を払って階段を上り、華のベッドへ優しく降ろした。
すーすーと穏やかな寝息を立てる華の顔には髪が一房、頬にかかっていた。少し邪魔そうだ。ベッドの端に腰を下ろし、指先で優しくその髪を耳にかけた。
髪を払った指先で、そのまま華の寝顔をなぞる。
長いまつ毛が作る影、小さな鼻筋、微かに開かれた唇。そのすべてが愛おしくて、震えるような気持ちを抑えきれず、一つ一つに軽く触れていく。
華、かわいいな。
誰にも触れさせたくない。
僕だけのものにしたい。
――華のすべてが欲しい。
(……ッ!? 僕は何を思っとるんや)
ふと沸き上がった黒々とした渇望に、心臓が大きく波打つ。自分の中に潜む獣のような衝動に、思わず深く息を呑んだ。嫌な予感をグッと抑えつけ、自分を律するように両手を強く握り締めた。
「シロ……にゃむにゃむ……おすわり!」
「……っ……犬とちゃうわ!」
思わず出そうになった突っ込みを、極々小さな声で飲み込む。あまりに華らしい夢に、張り詰めていた心がふと和んだ。
眠りにつく前に、もう一度だけ華の匂いに包まれたくて、そっと首元へ顔を近づけ、目を閉じる。シャンプーの残り香の奥底で、華の甘さが静かにほどけ、深い安心感に満たされた。
ゆっくりと目を開け、ふと彼女の方へ目を向けると、なにやら険しい顔をしている。
(変な夢でも見てるんかな)
どんな夢を見ているのかは分からないが、嫌な夢はどこかへ飛んで行ってしまうようにと、自分のおでこを華のおでこに優しく押し当てた。
「おやすみ、華」
華の耳元へ、そっと挨拶をすませ、僕は床に身を投げ出して目を閉じた。
◇
シロが近くにいる気配を感じ、意識がゆっくりと浮上していく。
首筋に彼の吐息を感じた瞬間、心臓がバクバクと早鐘を打ち始めた。
(え、シロ……今、何してるの……?)
これは、夢の中なんだろうか。それとも、現実……?そう問いかけながらも、溢れる動揺のせいでどうしても瞼を開けることが出来ない。
ベッドがわずかに沈み込み、彼のお日様のような温かな香りがふわりと鼻をかすめる。そして、おでこに伝わるシロの熱だけが、ありえないほど現実味を帯びていた。
そして、わずかな静寂にその声が落ちた。
「――おやすみ、華」
耳元で囁かれた、目がまわるような吐息混じりの低い声。
鼓膜を揺らすその響きに、私の心臓はもはや限界を迎えた。
私は、目を開けることも、再び眠ることも出来ずに、朝日が昇るのをただ迎えたのだった。
……とんでもないクリスマスプレゼントを、もらってしまった。
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