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一蓮華《いちれんはな》は溺愛白狐《シロ》に守られている  作者: 猫邑 ゆか
第二章

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第39話:どどど、どういうこと?

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 「華の学校が終わったら、あそこ行くか……」


 そんな事を考えているうちに放課後のチャイムが鳴り響いた。しばらくすると華の姿が見えた。……と思ったら、いつもならゆっくり歩いてくる華が、今日は猛ダッシュでこちらへ走ってくる。


(……華、なんであんなに急いでるんや?)


 僕は木から降り、眉間に皺を寄せた。到着した華に疑問を口にしようとした、その時だ。突然腕を掴まれ、僕はそのまま引きずられるように走り出していた。人けのない路地裏へ滑り込むと、華は肩で息をしながら、焦った様子で事情を話し始めた。


「シロ!なんか、転校生の後ろに大きな虎さんがいたんだけど!?私をギランギランの目で睨んできたんだけどー!!」


 興奮しながら手足をバタバタさせて訴える華に、僕は目を丸くした。


「……え?虎?僕、全然わからんかったけど……」


 華に敵意をむきだしてくるくらいの悪意があるのなら、守護霊の僕が何か感じるはず。

 

(――やのに、僕は、何も感じへんかった。気配すらも……)


 背筋にぞくっと寒気が走る。

 こんな不安は出来るだけ早く解決するに越したことはない。


「華……僕、やっぱりなんかおかしいかもしれん。今から着いてきて欲しいところがあるんやけど……」



「シロが珍しく、行きたいところがあるって言うから、どこへ行くのかと思ったら神社かぁ!お正月に行ったっきりだなぁ。ここの神社、大きいよね」


 今の状況を解決できるのかは分からない。それでも、頼れる場所はここしかなかった。


 本当なら、主を連れて行くなど守護霊としてあるまじき行為かもしれない。けれど、今はブンタもいない。華を一人にはできないし、この状況を考えれば、背に腹は代えられなかった。


 手を額に添え、神社の石段を見上げた。

 ほんの数週間前に来たばかりなのに妙に懐かしい。


「……ホンマ大きい神社やんな。石段もとんでもなく長いで。さぁ、行こか」


 丁寧に磨かれ、前よりも登りやすくなった石段を二十段ほど登ると、上の方から二匹の子狐が四つ足で器用にぴゅーっと駆け下りてきた。


「あ!シロ狐だ!何しに来た?」「何しに来た?」


 華は足元をちょろちょろしている子狐たちに気が付いていないようで、僕と目が合うと嬉しそうに、にこっと笑いかけてきた。


(……っ!……可愛い、じゃなくて)


 跳ねる心臓を無理やり押さえつけ、僕は平然を装った。しかし、不自然な挙動はどうしても隠しきれない。


「……どうかしたの?」


 華は怪訝そうな視線で、僕をじっと見つめていた。

 僕は咳払いをして誤魔化しながら、子狐達がいる周辺を指差した。


「……華には見えへんと思うねんけど、小さい狐が二匹、僕の足元におる」


「えー!!子狐ちゃんたち!? うわぁ……シロ、羨ましい……!!」


「僕らはかわいいぞ!」「かわいいぞ!」


 腰に手を当てて、お腹をぽんと突き出し、満足そうな二匹。


 (……この恰好、この仕草。絶対に華が見たら大発狂するはずや。華に見えてなくて、ホンマに良かった)


 僕はキャーキャー言いながら子狐を愛でる華の様子を想像して、身震いしながら子狐達へ問いかけた。


「神格のことについて聞きたいんやけど、誰かおるか?」


「うーん……イナリ様はここにいない!カスイ様は出かけた!ニチゲツ様はいる!」「ニチゲツ様はいる!」


 子狐達は小首を傾げ、肉球を口に当て、あざとく答える。僕は別に可愛く思わんし、その手には乗らんと、しらっと返事を返した。


「ほんなら、ニチゲツのとこに連れて行ってや」


「わかった!」「わかった!」


 石段を登りかけていた子狐達は、こちらをふり返り、偉そうに言った。


「……努々《ゆめゆめ》、粗相を働くんじゃないぞ!」「働くんじゃないぞ!」


「そんな生意気な事ばっかり言うとらんと、しっかり修行に励みや。また怒られるぞ」


 偉そうな態度に呆れながら、ぴょんぴょん跳ね上がっていく子狐達の後に続く。 僕の声しか聞こえてないはずなのに華は楽しそうにしている。


 朱色の鳥居がいくつも過ぎ去り、長い長い石段を登りきる。前に比べていくらか早く到着したような気がするのは、隣に華がいるからだろう。一本道の参道を守るように、これまた朱色の大屋根に純白の扉が美しい、堅牢な門へと着いた。


 横に控えていた白狐が扉を開くと、華が目を輝かせた。


「おー!……自動扉?」


「自動扉ちゃうで。華には見えてへんやろうけど、白狐が何人かおって、両扉をガバッと開けてくれとる」


「えー!!ここにも狐さんが……!? くそぅ……全然見えない……」


きょろきょろと辺りを見渡すが、姿が見えない華は心底悔しそうにしょげていた。


さらに石段を登り、大きな門をくぐると、尖り屋根の見慣れた拝殿が現れた。


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