表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一蓮華《いちれんはな》は溺愛白狐《シロ》に守られている  作者: 猫邑 ゆか
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/50

第38話:噂の転校生

※この小説の続きをスムーズにお楽しみいただけるよう、【ブックマークに追加】を押して設定を保存してください。

 落ち葉が舞い散り、温かなカーディガンに身を包む、朝のホームルーム。担任の浅間先生が、黒板の前に立ち、朗らかな声で切り出した。


「おはようございます。皆さんの間でもさんざん噂になってしまっているようですが、今日からクラスに新しい仲間が加わります。数ヶ月の期間限定ですが、皆で一緒に楽しい時間を過ごしましょう」


 教室のどよめきと同時に、先生の隣に立ち、にこやかな笑顔を向けている一人の男の子へと視線が集まっていく。


 先生が黒板へ向き、美しい所作でさらさらと白いチョークを走らせている音が響いた。


沙門さもん璃九りくくんです。」


「初めまして!沙門璃九です!皆さん、短い期間ですが、どうぞよろしくお願いします!」


 彼が一歩前へ出て、ハキハキとした口調で挨拶をした瞬間、女子たちのひそひそ話が波のように広がった。


「背、高くない?」

「……スポーツも勉強もできるって」

「顔も声もいいなんて……」

「爽やかイケメンだし」

「……しかも眉目秀麗。隙がない」

「へぇ、全部盛り……完璧ね」


 私の席は窓際の一番後ろで、彼の姿はよく見えない。


 声だけ聞くと元気で活発そうな男の子だなぁ、なんて思いながら、どんな人物か確かめようと、私は上半身を右へ傾けて覗き込んだ。


 そこには、陽の光を丸ごと浴びたような眩しい笑顔が輝き、教室を照らしていた。飛び交う噂話も、あながち大げさではないのかもしれない。そう思わせるほどの、圧倒的な陽のオーラが彼にはあった。


「へぇ……すごい人が来たなぁ……」


 後ろの席でも十分に分かる彼のオーラに圧倒され、心の声が漏れたと同時に、私には見えてしまった。


 彼のすぐ後ろにいる大きな虎が。


 脳が一瞬でフリーズした。その直後、反射的に立ち上がった私の絶叫が、教室中に響き渡る。


「……えッ!? 虎!?」


「どうしました? 一蓮さん?」


 怪訝な顔をする先生と教室中の視線が、一斉に私へと突き刺さった。


「いや……えぇっと……と、と、時計…じゃなかった……大きな虫がブゥンって飛んできて……いえ、なんでもないです。すみません」

 

 どうにか誤魔化そうとしたけれど、とりあえず謝るしかなかった。なんとも恥ずかしい。


 教室中がどっと笑い、私は静かに着席し、先生は続きを話し始めた。


 みんなに見えていないという事は、シロと同じ守護霊か他の何かのはずだ。


(見えていない。私には何も見えていない……)


 そう、自分に言い聞かせて、視界の端に居座る巨大な存在を無理やり思考から追い出した。


「沙門さん、彼女の隣の空いた席へ座ってください」


「はい!」


 先生の言葉に、沙門くんは清々しい返事をして、きびきびと歩き出した。席へ向かう道でも、周囲の子たちに「これからよろしくね」と朗らかに声をかけている。


 見本のような返事に、眩しい笑顔。

 誰に対しても分け隔てない態度で接する。


 沙門くんは、私と住む世界が違いすぎる。


(絵に描いたような超元気リア充タイプなんだろうな。……あ、隣に座るってことは、あの虎も私の近くに来るってこと……!?もふもふしてかわいいけど、さすがに虎さんは怖いよー! 沙門くんと私の間に座ったらどうしよう。さりげなく腰の辺りをもふもふ出来るかな……いや、でもやっぱり怖い!)


 私の気持ちとは裏腹に彼は、ついに隣の席へとすっと座り、眩しい笑顔を向けてくる。学校の机を丸ごと二個並べたよりも大きそうな虎が、彼の真後ろにどしんと腰を下ろした。


 私の視線に気が付いた沙門くんが、挨拶をしてくれた。


「一蓮さん?はじめまして、よろしくね!」


 少女漫画のヒーローのように爽やかに差し出された手を前に、私は戸惑いながらも握手を返す。


「う、うん、よろしくね……」


 挨拶をしながら、どうしても私の目は沙門くんの後ろへと視線を動かしてしまう。


 彼に憑いている虎さんはギランギランと光る鋭い瞳で、真っ直ぐに私を睨みつけてきて、さすがに生きた心地がしなかった。



 僕は最近、胸の奥が名付けようもない、ほわほわとした感情で満たされている。白くピンと立った耳は絶好調。尻尾の毛艶も良い!と、夢うつつの気分で、今日もいつもの木の上で寝転がっていた。


(この間から……華が可愛い。なんかわからんけど、嬉しいような恥ずかしいような、変な気持ちや……)


 潤んだ瞳で見つめ、僕のことを気にかけてくれる優しい華。二人が互いを想う気持ちが重なり合って、胸の奥がこそばゆく感じられた。


 熱に浮かされたようにこの間の出来事を何度も反芻しているうち、一つ疑問が浮かんできた。


(――そういや、僕、イナリのとこで掃除しまくって神格上がったはずやのに、ちーちゃんとかいう先生に《《見られていなかった》》……?)


 そして、それと同時に脳裏に浮かんだイナリの言葉が妙に引っかかった。


『《《長い髪》》の艶もようなった』


「……ッ!?」


 僕は勢いよくガバッと起き上がり、自分の頭をあわてて触る。両の手でさらさらと肩につかないくらいの短い髪を掴んだ。


(――じゃぁ、今のこの短い髪の毛は神格下がってしもたんか!? どうする!?今はブンタもおらんし――)


 色々案を考えてはみたものの、僕がこの件で頼れる先は、やっぱり一つしか無かった。


お読みいただきありがとうございます。このお話の続きを楽しみにしてくださる方は、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ