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一蓮華《いちれんはな》は溺愛白狐《シロ》に守られている  作者: 猫邑 ゆか
第二章

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第36話:まばゆいネオンにきらめくババア

 ギラギラとしたネオンが煌々と輝く、夜の繁華街。セクシーなおねえちゃんのお店も、ちょっぴり怪しいお店も所狭しと並んでいる。


 ちょーっとだけ夜の街に後ろ髪引かれる気持ちもあるけど、今はやらなあかん事があるからなぁ……しょうがない、と足早に駆け抜けた。


 この間、祭から帰って来た二人の纏っていた空気は和やかで、華とシロはもう大丈夫やとホッと胸を撫で下ろした。華のことはシロに託して、俺は調べものをしたり、なんだかんだとやらなあかん用事をこなしてる。


 あ、アロハシャツに短パンやないで。くたびれたワイシャツを着て、サスペンダーの付いたスラックスにジャケットを羽織る。俺のいつもの格好はこっちや。


 その、ちょっとした野暮用があった俺は、華やかなネオンから少し離れた路地の奥へと進んでいた。


 おもむろにポケットから出した煙草に火を点けた時、路地の角で、見るからに怪しげな婆さんに声をかけられた。


 「ちょい待ち。……おんやぁ?アンタ、人間のふりしちょるけど、人間じゃぁないね……その耳と尻尾、『狸』か?」


 俺は片眉をクイッとあげてそちらを見た。


 妖狸である自分を認識できる人間はごく稀にいる。だから、こういう事を言われるのは、まぁ不思議ではない。


 婆さんの座っている前には粗末な机と椅子が置かれ、机の上には何かの本と『易』と書いてある小さな提灯がぽつりと灯っている。


「お、そういう婆さんも人間って感じやないけどなぁ」


「じゃかあしいわい!……フン。まぁええわ。なんやら、アンタの近くにいる奴に物凄い不穏な空気を感じる……アンタの周りの空気まで巻き込んで変わってしまっとるぐらいのな。このまま放っておくと良くない事になるよ」


 手に持っている虫眼鏡をこちらへ覗き込みながら婆さんが投げかけてきた。婆さんの目が大きくなったり、小さくなったりを繰り返している様子はなんだか滑稽だったが、それでも今の俺には、その話題が非常に気になった。


「……不穏な空気?」


「うーん、齢は14歳……茶色い髪の女の子じゃな。――あぁ、白い狐も見えるぞ」


 婆さんの言葉に、俺は咥えていた煙草を落としそうになった。


 女の子、茶色の髪の毛、14歳。そこまではまぁ、よくあるのかもしれない。――でも、ここで『白い狐』という言葉がでるのは、おかしい。


 目を見開きながらそちらを見た俺に、婆さんは続けた。


「心当たりがある顔だねぇ。今度ここに連れてきてみなはれ。……はい、三千円」


 婆さんはニヤッと笑いながら、こちらへシワシワの手をすっと伸ばしてきた。


「ハァ!? 金取るんか!?」


「当ったり前じゃい!こちとらこれで、おまんま食うとるんじゃ!商売しとるんじゃい!」


 俺は大きく溜息をつきながら、財布から三千円札を抜きだし、婆さんに手渡した。


「必ず連れてくるんじゃぞ!待っとるぞ!」


 元気で現金なババアやな……ホンマ。


 ニッコニコで札を数え始めた婆さんを尻目に、俺は野暮用を片付けに路地の奥へと向かった。


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