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一蓮華《いちれんはな》は溺愛白狐《シロ》に守られている  作者: 猫邑 ゆか
第二章

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第32話:昨日の思い出と一緒に

※この小説の続きをスムーズにお楽しみいただけるよう、【ブックマークに追加】を押して設定を保存してください。

 朝、目を覚ましてすぐ、机の横にかけている学生カバンをチラリと見る。


 そのカバンには、あのお祭りでシロが取ってくれた狐のぬいぐるみが、ちょこんと顔を覗かせていた。尻尾がふわふわで、耳もピンと立っているシロによく似たぬいぐるみ。ゆらゆら揺れてとてもかわいい。


 この子が視界に入るたびに昨日の楽しかった思い出と、幸せな気持ちが蘇って、今日もいい日になる気がする。


 鏡の前でカバンを持った姿を確認して、くるりと回ってから玄関を出た。


「おっはよー! あ、新しいキーホルダーつけてる! 狐のぬいぐるみ、ふわふわで可愛いね!」


 合流した三葉にもすぐに褒められたし、かなり後ろからついて来ているシロからもなんとなく満足気な気配がしている。

 ……曲がり角からじっと見ている様子は、不審者みたいだけど。



 昨日の夜、寝る前。シロと私は、私の部屋の床に座り、今後の『姿が見えること』について深刻に話しあった。


「お父さんには見えてないみたいだけど、お練り行列からお祭りの間、お兄ちゃんだけじゃなくて、三葉や他の人達にもシロが見えてたよね? これって、これから先もずっと皆に見えちゃうってことだよね?」


「そう、かもなぁ。でもなんか、あかんか?僕が傍におったら悪い虫も寄ってこんしな」


 腕を組みながらこちらを真っすぐ見るシロには、この事の深刻さがわかっていないようだ。


「だめだよ! 耳や尻尾は消せても、髪の毛も白いし……か、顔も整っているんだから!……シロはもう学校へは来ちゃだめ!」


 シロの姿形はもちろん、こんな顔面偏差値の高いシロが学校に来たら、絶対キャーキャー言われるに決まっている。女子中学生とはそういうものなのだ。正直それは面白くない。


 心の中で沸き上がるモヤモヤを整理して、私がきっぱりと告げると、シロは心外そうに片方の眉を上げた。


「えぇ…それはあかんやろ。華と一緒におらな、意味ないやん。僕、守護霊やで?」


「でも……見つかったら、警察に捕まっちゃうよ!」


「警察のお世話になるのは嫌やな……守護霊やのに」


「研究施設に連れていかれて、実験体にされちゃうかも!」


「う……それは怖い話やわ」


 半分本気で半分冗談の話に、シロはおどけて自分自身をぎゅっと抱きしめ、身震いした。私はため息をつきながら、最後の案を出した。


「じゃあ、姿消せる?」


「……うーん?まぁ、やってみるわ」


 胡坐をかき、何やら難しそうな顔をしたシロがうんうん唸っている。


「……全然。私には、見えてる」


「あかんかぁ」


 ブンタさんは自由に姿を変えたり、消えたり出来るみたいだし、シロももしかして……と思ったけれど、それは叶わなかった。右斜め上へと視線を動かし、どうしたものかと首をひねる。


「もしかしたらお兄ちゃんには見えない、かも?」


 藁にもすがる思いで、隣の部屋で大学のレポートを書いていたお兄ちゃんを引っ張ってきた。


 私の部屋へ来たお兄ちゃんは呆れ顔でちょこんと胡坐をかいているシロの方をじーっと見る。


「えー……なに? ん? いつものシロだけど? 何やってんだ、お前ら」


「……あかんか」


「……だめだね」


 やっぱり、シロはシロのままだった。


「よく分からない事を言ってないで、早く寝なよ」


 そう言い残して、お兄ちゃんは終わらない課題に頭を掻きながら、隣の部屋へと戻っていった。


 結局、一緒に『いる』『いない』の押し問答をしたけれど、やっぱり前にブンタさんが言っていたように、守護霊がいないというのはよくないとの正論で押し切られた。


 今回の問題の折衷案として、登校する時はすごくすごーく離れて歩いてもらい、私が学校にいる間はいつもの木の上にいるということになった。


「……離れて歩くなんて、僕としては納得いかへんけどな」


 シロは不満気にブツブツと文句を言っている。そう言われても、事情が事情なので、仕方がない。


 まだぶすくれているシロを横目に、私は『明日も早いし』と心の中で言い訳をして、早々にベッドへと滑り込んだ。


お読みいただきありがとうございます。このお話の続きを楽しみにしてくださる方は、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。どうぞよろしくお願いします!

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