第30話:お祭りの後は
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厳かなお練り行列が終わり、ここからは待ちに待ったお祭りの本番だ。
私はシロと並んで賑やかな屋台を巡る。
「おじさーん! 綿あめ、ひとつください!」
「おっ、花嫁役のお嬢さん、お疲れさん! 景気よく多めに巻いてやるからな!」
割り箸にぐるぐると巻きつけられた綿あめは、シロの尻尾みたいに大きくて白くて、ふわふわだ。ひとくち齧れば、口いっぱいに幸せが広がる。
「シロもどうぞ」
訝しげに綿あめを一つまみして、口へと運ぶシロ。
「……めっちゃ甘いな、それ」
「美味しいよ? シロは甘いの苦手なの?」
「……お好み焼きとか、そっちのがええわ」
甘いのに苦い顔をして舌を出すシロを見て、思わず笑ってしまう。
次は私の今日の目標、射的だ。
「今日は絶対に一発当てる!」
気合を入れて、射的の銃を構える。狙いを定めて、一発。
パァン!
……音だけは一丁前だ。
二発目、三発目、四発目……最後の五発目も景品をかすりもしない。
「あぁ……やっぱりだめだぁ!私に射的の才能はない!」
がっくりと肩を落とす。
「ははは!惜しかったなぁ」
射的のお店のおじさんが笑うその横で、シロが射的台へとお金をバンッと叩きつけた。そして、おじさんへ指をくいっと曲げ、銃を寄越せと合図をする。
「お兄ちゃん、やるねぇ!頑張って彼女にとってやんなよ!」
「か、かのじょ……だなんて!おじさんったら!」
私は顔から火が出そうなほど恥ずかしくなって、思わずおじさんの肩をバンバンと叩いた。そんな私を余所に、シロは涼しい顔で銃を構えた。
パァン!
乾いた音が響き渡り、景品がころりと転がった。
「ん。華に、やる」
シロは当たり前のように私へ景品を差し出した。
「あ……ありがとう!シロ、まさか一発でとるなんて!すごいね!」
興奮して褒めちぎると、彼は少しだけ視線を逸らし、耳の先を赤く染めていた。渡されたのは、白い狐の小さなぬいぐるみ。ふわふわでとっても可愛い!
その後も、りんご飴を食べて舌を真っ赤に染めるシロや、尻尾がないのが落ち着かないのか、時折そわそわと服の上からお尻を触っているシロの姿が可笑しくて、私たちは笑い転げた。
お好み焼きは出店のおじさんが「花嫁さんへのサービスね!」と言って、お好み焼き増量、ネギもたっぷりにしてくれたから、シロが食べられなくなって、お土産になっちゃったけど。
たくさん笑って、お腹もいっぱいになって、最高に楽しいお祭りだった。
◇
祭の最中、誰かが噂していたのを耳にした。
『お練り行列の花嫁役に選ばれた娘さんは良縁に恵まれる』そうだ。
華が良い縁に恵まれ、幸せになればいい。
遠くから聞こえていたお囃子の音はいつしか止み、代わりに屋台を片付ける物音が、夜の冷気に低く響いている。
人影はまばらになり、提灯の灯りもだんだんと消え、祭ももうおしまい、か。
ふいに華が振り返り、僕に手を伸ばした。
「シロ、お家へ帰ろ?」
僕は頷いて、華の手をとる。
僕よりも小さくて、優しく触れなければ壊れてしまいそうな、あたたかな手。
もう二度と触れることが出来なかったかもしれないその手。
秋の気持ちよい風に吹かれながら、少し埃っぽい道を二人で、何も言わずに歩いた。
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