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一蓮華《いちれんはな》は溺愛白狐《シロ》に守られている  作者: 猫邑 ゆか
第一章

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第27話:車輪が輪る、廻る

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 着付けをしてもらった部屋から境内へ出ると皆が揃っていた。


 おじいちゃん、お兄ちゃん、三葉、そしてお父さん。普段はお仕事でほとんど家にもいないけれど、秋の例祭の日は特別で、おじいちゃんを手伝うためにお休みをもらっている。


「お待たせ」


 私の掛け声に、みんなが一斉にこちらを向き、三葉が一番に歓声を上げた。


「わぁ!華、かわいい!」


「華…綺麗にしてもらったねぇ……うぅ……華が嫁入りする時のことを思ったら、もう涙が……ど、どまらないぃ……」


「何を言っているんだ、ただし!絶対に!絶対に!華は嫁にはやらんぞ!!」


「うぅ……お義父さん……それじゃあ華の幸せの邪魔をしてしまいます……」


「うわ~~~~!」


「おじいちゃん、お父さん……華が可愛いのは分かるけど、そのくらいにしないとお練りがはじまるよ」


「あはは!一蓮家はいつ見てもすごいなぁ」


 花嫁姿の私を見て大号泣するお父さんとおじいちゃんは、お兄ちゃんに呆れられ、三葉に笑われていた。


 そりゃあ、私だっていつかは結婚したいけど、今すぐ嫁に行くわけじゃないよ……。


 愛が重すぎる二人となだめている二人をその場に置いて、私は今日の予定を頭の中で確認する。


 秋の例祭のメインイベント、お練り行列。

『お練り』と略して呼ばれるそれは、古くからこの街に伝わる『狐の嫁入り』を模した神聖な儀式だ。花嫁役に選ばれた私と、花婿役の二人が人力車に乗り、その後ろを親族や街の人々がついて歩く。そうして、この街をゆっくりと巡るのだ。


 後ろからお兄ちゃんと三葉みつばがついて来てくれる予定だから、何かヘマをしてもフォローしてくれるはず。


 「華、ごめんなぁ! 本当は一番近くで見守っていたいんだけど、一蓮寺は例祭の主催も兼ねているから一緒に行けなくて……」と、涙目で本堂へ帰って行くおじいちゃんとお父さんを見送り、「大丈夫、やるしかない」と、小さく息を吐いて拳を握る。


 少し不安で緊張するけど、役目をこなそうと心の中で「えいえいおー」と気合を入れる。


 人力車に乗る前に付けてね、と着付け師さんから手渡されていたのは、お練りの間、素顔を隠すための狐の面。


 真っ白な狐の目には紅の色が差してある。それを被りながら、色々な気持ちに蓋をして、私は一歩、人力車へ向かって踏み出した。


 人力車に乗る時は、先に花婿役が乗って待ち、カーペットが敷かれた花道を通って花嫁役が乗るのが習わしだ。


 お面を被ると視界がひどく狭くなり、本当に自分の足元しか見えなくなってしまう。カーペットの上ではお兄ちゃんが介助役として、ふらふら歩く私の手を引いてくれた。


 歩幅は小さく、つま先を少し内側に向けて。慣れない白無垢の重みと草履に足をとられないよう、じっと下を向き、慎重に足を交互にだす。


 右、左、右、左。


 心の中で順番を呟かないと、なんだかきちんと歩けない。


 やっと、人力車の黒い車輪が見えた。なんとか、無事にたどり着いたという安心感と全身が緊張していたせいか、たった数十メートル歩いただけなのに、もう疲労困憊だ。


 花嫁役の私は、先に乗り込んでいる花婿役の人に手を取ってもらい、人力車へと乗せてもらうことになっている。


 スッと伸びてきた花婿役の方の手の平へ、私の手を伸ばす。


 手の平へ触れた瞬間。


――ドクン、と心臓が跳ねる。


 私は、気付いてしまった。


(……シロだ……)


 私の事をずっと治療をしてくれていた手に触れたのだ。

 間違うはずがない。


 シロの手にぐっと力が入り、私を車上へと引き寄せる。


 隣に座る彼の衣擦れの音と静かな吐息を感じる。

 肩から腕へと、シロと触れている部分が熱を持つ。


 手を離すタイミングを失い、私の手とシロの手は重なったまま、私たちの沈黙を乗せて人力車は静かに動き始めた。


お読みいただきありがとうございます。このお話の続きを楽しみにしてくださる方は、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。どうぞよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
ここまで拝読しました。 ずっとそばにいたシロが見えるようになって仲が深まったかと思ったら、ブンタの出現で過去を知ることになり、再び巡り会う……。 確かに、13話から胸が痛くなるような展開ですね。 ちな…
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