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歴史上初の女性騎士と、愛で結ばれた姫の物語  作者: 風見 咲良


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【第四話】姫さまの専任護衛、騎士ルカの任命式

第四話 姫さまの専任護衛、騎士ルカの任命式


~ 姫エルサ side ~


 今日から、ルカが私の護衛として正式に任命される。


いつものような朝。でも、どこか違う。

今日から私に護衛がつく。護衛として私のそばにいてくれる人がいる。さらに、その人はルカだ。


孤独だと感じていた道も、少しはマシになるだろうか。


 護衛への任命が公に発表される朝。

いつもと同じように朝礼へと向かう。朝礼が開かれる大広間のバルコニーへと出る。


 幾度となく、もう数え切れないほどここへ来ては同じような朝を迎えてきた。いつも変わらない景色。いつもと変わらない景色こそが平和。それを、穏やかな日々を守って国民を安心させるのが私の勤め。


 でも、そんな数々の日々と今日はなにかがやはり違う。

そう感じているのは私だけなのだろうけれど。


 一段高くなった大広間の舞台にルカが団長と並んで立っている。


 私はバルコニーからルカを見下ろす。


 真っ直ぐ先を見据えた鋭いルカの眼差し。朝日が差し込んで明るく照らされた広間に、そのすらりとした長身はしっかりと自分の両足で立っていた。


広間に整列している団員たちとは異なり、正装のマントを右肩にかけている。白色のフリンジが紺色の制服に映えて、その姿は立派なものに見えた。


エクエスの称号を得たものは、このフリンジが金色に変わる。ルカが言っていたことを思い出す。


「私は、エクエスの称号が欲しいのです」


国から与えられる名誉ある騎士の称号。エクエス。


貴方は名誉が欲しいのか、それとも名誉ある貢献を国にしたいのか。そのどちらなのだろう。


もし、ただの称号目当てで私の護衛を務めるのであれば、それは間違ったことだ。ルカとは出会って日が浅いけれど、私はその瞳を信じたかった。いや、その瞳を信じた自分を信じたかったのかもしれない。


「本日より、ルカ・ギブリ・シロッコを姫さま専任の護衛として任命する」


団長が野太い大きな声で広場に整列する団員たちに伝える。それは静寂な広場に響き、騎士団員たちの鼓膜を揺らした。静寂は守られているものの、どよめきのような団員たちの感情の揺れがバルコニーにも伝わってくる。


整列した大勢の騎士団員たちに向かい合う形で、ルカへと視線が集まる。


ルカはその視線たちを一心に浴びて、騎士団伝統の敬礼をした。


その透き通った眼差しは、朝日が差し込む天井近くの窓へと注がれていた。まるで明るい未来の光を見つめるかのように。


 正装のマントがかかった右肩が大きく揺れ、白いフリンジが動いた。

差し込んだ朝日がそのフリンジをスポットライトのように指し、金色のフリンジのように見えた。目の錯覚だと了承していたけれど、私は心のどこかで予感していた。直感にも近い感覚で分かっていた。


その錯覚が、近い日に現実になるであろうことを。


◇◇◇


「姫さま、本日の御予定です」


 朝礼が終わり、自室へと急いでいると爺やがいつものように廊下を並んで歩きながら、今日の責務を伝えてくれる。その爺やが息切れをし始めたのはいつの頃だっただろう。私も大人になった分、爺やも歳を取った。この役割もじきにルカへと引き継がれていくのだろう。


 ルカは私の部屋のすぐ隣の部屋に住み込むことになった。


我が国は国土も領地もそこまで大きくはない。だけど、この国で生まれ、この地に住み、この国の言葉を喋る人々が大勢いる。私たちはその人たちを守り、ひいては国を守っていかなければならない。


 今日の責務の段取りを考えながら、自室に続く廊下へと曲がると、自室の扉の前に正装姿のルカと団長が立っていた。


 ルカが私に気がついて、姿勢をあらためて敬礼をする。

泉とはまた違う真面目なルカの様子に、私は思わず頬が緩む。


「本日から正式にルカが護衛となりましたので、恒例の祝杯を」


団長が、爺やにそう言う。


爺やは頷いて、近くにいたガールたちに声をかける。ガールたちが速やかにどこかへと向かい、人数分の祝杯が運ばれてきた。


 爺やが扉を開き、私、団長、ルカの順番で部屋に入る。


騎士団の正装はルカに非常によく似合っていた。

凛とした姿勢とは裏腹に、緊張した面持ちで団長に従うルカは、まだ新人そのものといった様子で初々しく、私は思わず笑いそうになってしまう。


「では、ルカの任命に」


それぞれが杯を持って、私の言葉を合図にそれを頭上へと掲げる。皆で一斉に飲み干す。まるで感情の高まりが込み上げるように喉がカッとに熱くなる。


ルカと目が合う。


「信念を持ち、誠心誠意、姫さまにお仕えいたします」


私は笑みを讃えようとしたが、その真剣なルカの眼差しに気がついて、応えるように見つめ返した。


「こちらこそ、よろしくお願いします。ルカ」


私たちの視線はどこまでも互いを貫いて、なにか聖なる誓いを立てたようだった。

団長や爺やの存在は意識から消え、あたりはどこまでも澄み切っていた。

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