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歴史上初の女性騎士と、愛で結ばれた姫の物語  作者: 風見 咲良


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【第十話】 決別

第十話 決別


〜 ルカ side 〜


「女王様が、死んだ」


そう聞かされたとき、そんなことはないと思った。いや、そう願った。絶対にどこかで生きている、そう信じたかった。


 だが、具体的な状況を聞けば聞くほど、その気持ちに自信がなくなっていった。そんなことはない。そんなことがあるはずがない。


感情が目まぐるしく動きすぎて、その場に立っていられなかった。


私は言葉を発することなく、誰とも目を合わせることができず、自室へと急いだ。


 一人きりの空間になって、どういうことかと考えを巡らせる。

ただ動揺するばかりで、思考がうまく働いてくれない。思考よりも感情が先立って、大きな声を上げる。机を乱暴に叩く。


自分のなかで、止められない感情が暴れ続けている。だが、それが動作となって表面化されることは一切なく、私は燃え尽きた廃人のように、ただ一点を見つめて力なく椅子にもたれかかることしかできなかった。


空腹も感じず、感覚もなくなり、頭も働かない。それはまるで、生きたまま、死んだようだった。


◇◇◇


 それから女王様を除く一行が遠征先から城に帰還するまでの間、私はどのように過ごしたのか、なにをしていたのか、あまり記憶がない。


「ルカ様」


今日もまた、机に突っ伏したまま眠りに落ちていたようだ。首がひどく痛む。


「失礼。入りますぞ」


扉が静かに開かれて、爺やが部屋に入ってくる。


「間もなく、エゴ王配御一行が城に到着するとの知らせが入りました」


エゴ王配の一行。一行と言えど、そこに女王様は含まれていない。


「そうか。ありがとう」


私は、門に出迎えに行かねばと半ば機械的に立ち上がる。


「それから、エゴ王配からのご伝言です」


虚な視線を爺やに向ける。あれ、こんなにも爺やは小さかったかな、と思った。


私は言葉を発さず身動きもせず、爺やの言葉をただ待った。


「短い電報です。『帰城次第、直ちに部屋に来られよ』と」


「そうか、分かった」


頭がうまく働かないせいか、どうしても返事に同じような文言を並べてしまう。


 心配そうな爺やがなにも言わず、ただ私を見つめていた。そして、静かに部屋を後にした。


 私は顔を洗い、そのまま濡れた手で髪の毛を軽く整え、騎士団の制服に着替えて城の門まで向かった。


「私がついていながら、誠に……申し訳ない」


エゴ王配の開口一番がそれだった。私に深々と頭を下げる。その脳天を見つめ、私はなにも言うことができない。


 エゴ王配から押し殺した嗚咽の声が聞こえた。私はその様子を見ながら、この人も女王様を愛していたのだなと思った。


涙がこぼれ落ちないように、エゴ王配が目を強く押さえている。


その横で、側近のモンテが淡々とそのときの状況を説明し始めた。


「遠征先に到着したとき、向こうの出迎えは手厚いものでした。どの顔からも歓迎ムードに満ち溢れ、まずは休息をと、我々のために用意された各部屋へと通されたのです」


遠征前に、女王様を交えて四人で座ったソファで話を聞く。いまは女王様の代わりに爺やが加わって座り、私たちの向かい側にエゴ王配とモンテが座っている。


「エゴ王配と私モンテが同室に通され、女王様はメイドの者たちと一緒に別の部屋へと通されました」

私は鋭い視線をモンテに向ける。


「女王様のお部屋の扉前には護衛の者が複数名、待機しておりました」


テーブルの上に置かれた、騎士団による遠征記録の書類に目を通す。十分な人数と思える団員たちが配備されていたことが記されている。


「晩餐会の時刻が迫ってきたため、私とエゴ王配の二人で女王様のお部屋へとお迎えにあがりました。長旅でお疲れだったのでしょう。女王様の顔にはお疲れの色が見えました」


遠征先までは馬車でおおよそ七日ほどかかる。この度は悪天候で中間地で待機する日数が加わったこともあり、十日間の日数がかかったと聞いていた。


「それでもいざ晩餐会の場にご出席なさると、終始そんなご様子は垣間見せず、笑顔を称えてコンカ国の重鎮たちとご歓談を交わされていました」


晩餐会は三日間、連続で開かれる予定だった。


一日目は顔合わせ、二日目は城内の偵察や少し本格的な話を行い、三日目にはいよいよ本格的な会談に入り、重要な約束事を終結する。その後、追加で二日間は街の名産や産物を偵察するため、コンカ国の街に繰り出し、市場や繁華街を視察する予定だった。


「初日の晩餐会がお開きになったのは、夜も深い頃でした。女王様をお部屋までお連れし、メイドたちにきちんと引渡し、護衛の姿も確認してから、私たちも部屋に戻り就寝いたしました。その翌朝、朝食会場で女王様とお顔を合わせましたが、そのときも変わらぬ様子でした。ただ、少し眠れなかったとはおっしゃっていました」


モンテの話を表情を変えずに聴き続ける。長旅での体力的な疲れに加え、晩餐会での気疲れなど、心身ともに疲労している状況で、眠れなかったと仰ったのであれば、絶対に『変わらぬ様子』ではなかったのだろう。私は女王様の状況を想像しては、胸が痛くなった。


「朝食を取った後は、コンカ国の案内人が城内の隅々まで私たち四人を案内してくれました。その間も女王様は飾られている絵画や金銀の装飾に目を光らせて、どのような経済状況と発展具合かを確認されているような様子でした。さらにお庭にも出られて、咲く花々を鑑賞した後、重鎮の一人と合流されて、なにやら熱心に立ち話されていました」


重鎮の一人、そこがやけに引っかかった。


「日差しの強いなか、歩き回ったため晩餐会まで少しお部屋に戻られて休憩することになり、またお部屋までお連れしました。晩餐会も一日目とは変わらず、無事に終了して、就寝のご挨拶をしました」


ここからだ。事件のあった三日目がやってくる。


「三日目の朝。女王様の考え込むようなお顔が気になったものの、他に特段変わった様子は見受けられませんでした。ご朝食を終え、部屋に戻ろうとしたとき、重鎮の一人がどこへ行きたいかと尋ねられておられました。その問いに対して女王様は一言『図書館を見学しても良いでしょうか』と」


図書館。


コンカ国には、国民たちが自由に利用することができる国立の図書館がある。


 いつしか、女王様がまだ姫さまのお立場だったとき、いつか我が国にもと話していた明るい顔が脳裏に浮かんだ。


「一行で図書館に参りましたが、特に変わった様子もなく、重鎮の一人とも親しげに話しておられるようでした。そこからお部屋に戻り、また晩餐会の時刻が迫ったときにお迎えへと上がりました」


その後か、と思い私はさらに集中して話に耳を傾ける。


「晩餐会では、その重鎮の一人と熱心に何かを語っておいででした。私たちは別の者たちと言葉を交わしておりましたので、内容までは把握できておりません。ですが、ほとんどの時間をその方とのお話に割かれていました。そして、夜も深まった頃、晩餐会はお開きになり、前日の同じように女王様をお部屋までお連れしました」


伝令では、この夜が深まったころ、事件が起こったと聞かされている。


「翌朝、みなの目が覚めるよりも少し早いころでした。女王様のお部屋に仕えていたメイドの一人が血相を変えて、私たちの部屋まで来たのです。『女王様の意識がない』と」


扉の前で護衛していた団員たちによると、女王様が部屋に戻られてからメイドの一人が部屋から飛び出してくるまで、人が出入りすることはおろか、廊下を通ったものすらいないと証言している。


「メイドの後を追い、我々もすぐさま駆けつけましたが、もうその時にはお部屋に女王様のお姿はなく、窓が大きく開かれて、部屋に風が吹き込んでいました。窓のすぐそばにある机に置いてあった装飾品が入った箱も手荒に弄られた形跡があり、幾つか無くなっていました。窓から見える限りの視界すべてを見渡しましたが、どこにもお姿はなかったのです」


強盗殺人か。それともそれらに見立てた証拠を残さないための手段なのか。


ずっと俯いていたエゴ王配が、顔を上げて掠れた声を出した。


「すぐさま城内に警告を知らせる鐘が鳴り響き、こちらの団員含め、大勢の者たちが駆けつけて探し回りましたが、どこにもお姿が見当たらなかったのです。まるで神隠しにあったように」


モンテが付け加える。


「さらに、第一発見者であったメイドによく話を聞くと、女王様の意識がないと気がついたとき、肌はすでに氷のように冷たく、脈を確認すると、指先に伝わってくるべき鼓動がなかった、と」


私は思わず、目を瞑った。


その時点ですでに女王様は事切れていたのか。直前の晩餐会の時点で誰かに毒を盛られ、その後に貴金属の強盗にあったということであれば、コンカ国の重鎮の誰か一人、その裏切り者が賊と手を組んですべてを仕組んだということか。


私は受け入れたくなかった。話を直接聞くまでは、どこか夢を見ているような感覚で、まだ希望が残っていることを信じていたのだ。


「それからは、コンカ国の護衛たちも総動員で国中を探させましたが、いまのところ女王様のご遺体は見つかっておりません」


コンカ国は最近にして急発展を遂げた大国だ。領地は我が国に比べ左程の差はないものの、鉱山から貴金属が発見されたことにより、経済が急激に発展した。だが、まだそれに伴う諸々の整備が追いついておらず、国民の貧富の差が激しい。


それに伴って治安は悪くなる一方で、賊が出没するとの噂は事前情報としてしっかりと捉えていた。


女王様のお体のみならず、高価な装飾品だけが一切なくなっていたことから、窓から侵入した賊が装飾品を身に付けた女王様の亡骸をもそのまま奪い去ったのではないか、それし可能性が考えられない、それが数日間の調査による結論との話だった。


 私は顔を上げて、モンテとエゴ王配に強く言う。


「もしも、私が側に仕えていれば、女王様を決して一人にする瞬間など生み出さなかった」


涙を堪えながら続ける。喉が貫かれるように酷く痛む。


「それを、貴方たちは、この国での権力に目が眩み、思うままに操ろうと表面下で卑劣な謀を行った。私個人に対する優れない感情を元に、私に偽りの罪をきさせて。それが女王様の身の危険に繋がる愚かな行為であるにも関わらず、だ」


私は、自身の立場など、もはやどうなっても良い覚悟で言った。


「貴方たちが女王様を死なせたのです。その責任は、限りなく重い」


エゴ王配が力なく頷く。


その隣で、モンテが私のことを睨んでいる。


私は勢いよく立ち上がり、モンテを見下した状態で言う。


「エゴ王配。もし貴方様が本当に女王様を愛していたのであれば、これが最後のチャンスでしょう。女王様のため、それはすなわち我が国のため、ひいては我が国民のため。この度の惨事を生じさせたモンテ殿を処分する覚悟が貴方にお有りなのなら」


モンテが力の限り、私を睨みつける。私は気にせず続ける。


「ただの一騎士が、我が身分を弁えず、このような強い言葉を王配にかけることは重罪に当たることは承知の上です」


エゴ王配が私を見上げる。涙に滲んだその目が、赤い。


「私は、たとえ投獄され、この称号が剥奪され身分が無くなっても良い。残りの生涯を獄中で過ごすことになっても構いません。最初から女王様に捧げたこの身です。いまさらなにも恐れるものはありません」


私はエゴ王配に言い続ける。


「女王様亡き後、女王様が生涯を捧げて守ろうとしたこの国を脅かすものは、私がどこまでも追いかけて成敗します」


睨み上げるように見ていたモンテが口を開く。


「フフフッ、ルカ殿。勘違いなさっては困りますな。いくらエクセスの称号を持つからと言って一騎士に、そんな権限はございませぬぞ」


「分かっています。いま申し上げたように、私はエクセスの称号すら捨てても構わない、投獄されても構わないと。覚悟がありますので」


人を蔑むように笑いながらモンテが続ける。


「エクセスの称号を失えば、なおさらのこと。さらに投獄された身では、貴方にはなにもできますまい。なにより此度の事件で真っ先に疑いがかかっているのは貴方様です。コンカ国と通じて謀をしていた、とね」


まだそんなことを言うのかと、私は呆れて言葉も出ない。


「いや、ルカの投獄など私がさせまい」


泣きつかれた様子で、いままで会話を傍観していたエゴ王配がやっと口を開いた。


「ルカ・エクセスが謀を行っていたという確固たる証拠は、結局なにも見つからなかった」


声色が先ほどまとは打って変わり、一気に王配としての威厳を含ませ始めたことに気がつく。


「モンテ。お前が私に告げ口をした通り、私も事の初めにはルカが謀者なのではないかと疑った。それは、お前もエルサのことを第一に考えての疑惑だと捉えていたからだ」


モンテがいきなりなにを、と緊迫した表情に変わってエゴ王杯の横顔を見る。


「だが、そうではないと私はある時点で気が付いた。皮肉にもこの遠征で。確固たる証拠が一向に出ないのにも納得した。そればかりか、裏でどうにか証拠を捏造しようと必死になっているお前の思惑にも気がついた」


モンテが、なにをご冗談をと言った様子で、こわばる顔で笑顔を作ろうとする。


「愚かなものだ。いまさら様々なとに気が付いたところで、エルサはもういない」


対面に座っていたエゴ王配が立ち上がる。立っていた私より、少し高い目線の高さとなる。


「ルカ・エクセス。いまさら詫びの言葉など、なんの意味も持たないが、誠に申し訳ない。すべて私の責任だ。もっと早くに気づき、目覚めるべきだった」


その瞳を真っ直ぐに見据える。揺らぎのない目だった。そのままエゴ王配が口を開く。


「爺や。いますぐ重役と団長を招集してくれ」


歯切れのいい命令だった。

爺やがすぐさま立ち上がり、すぐさま廊下へと出ていった。


 モンテが慌てた様子で、立ち上がる。エゴ王配の隣でより一層小さく見えた。


「モンテ。お前はこの国から出て行け。我が国を、亡きエルサ女王を敬わない者は置いておけない。今までお前に世話になったことは確かだ。だが、もはや我が母国ドゥーロにいた頃の私とは違う。私はこの国に嫁いだ王配、この国の運命を背負う者だ。エルサ女王亡きこの国で、この国を第一に考える立場にいる者なのだ」


部屋中に響き渡るような、重く低い声でエゴ王配がそう言い切ったとき、風に吹かれた窓が音を立てた。


「そんな」


モンテがそう口にしたとき、エゴ王配が言う。


「私は、エルサを愛している。それはこの国をも愛するということ。ただ、それだけだ」


 爺やが引き連れてきた重役たちと団長が部屋に入ってくる。


 モンテは騎士団員たちに身柄を確保され、そのまま部屋から出ていった。エゴ王配の瞳には悲しい色が映っていた。


 即座にエゴ王配の証言を元に、モンテ国外追放の書類が作成された。


 翌日の朝礼でそれが発表され、それ以降、モンテが我が国に関与することは一切無かった。

それと当時に私にかかっていた容疑も撤回され、私はまたエクセスの称号を持つ騎士として、国に仕えることとなった。


◇◇◇


 女王様の亡き後、どれほどの月日が経っただろう。


風の匂いが変わり、陽の出ている時間が変わった。そのように季節は着々と進むものの、心だけが置いていきぼりになったように、ただ時間だけが残酷に過ぎていった。


 私は淡々と日々の訓練や、エクセスとしての責務をまっとうする日々を生きていた。


 その後まもなく、爺やは女王様のお仕えとしての任が解かれた。

女王様がいなくなってしまったことに加え、爺や自身の年齢が高齢に差し掛かっていたこともあり、解任後は城から離れた牧草地で暮らすのだと語ってくれた。


「ルカ様。城に仕えるのは今日が最後になります」


最初に出会った頃より、ひと回り小さくなったように見える爺やがそう言う。


長年のお仕えに敬意を表して、私は敬礼をする。

その姿に爺やが優しく微笑み、ゆっくりと深く頷いた。


そのまま爺やが少し考えるような表情を浮かべてから、おもむろに口を開く。


「本当にエルサ様が幼き頃からお側に仕えてきましたが、往年の、いや、ルカ様と出会われてからのエルサ様はどこか生き生きとして、表情が穏やかになったことが印象的でした」


私と出会う以前の女王様と、私と出会ってからの女王様。


「以前はその重たすぎる責務を一人で背負い込んで、どこか心閉ざして塞ぎ込む様子がしばしば見受けられました。私ですら、その心の扉を開くことは不可能でした」


なにを急に話すのかと、私は爺やの表情を伺いながら話を聞く。


「それが、ルカ様。貴女様が目の前に現れてから、エルサ様の顔色は良くなり、口から出る言葉は光を灯したものになり、空を仰ぎ見られるほど、上を向くようになられました。とある日、エルサ様が私に言った言葉がいまだに忘れられないのです」


爺やは遠い日を振り返るように、窓の外の景色を見ながら言う。


「『爺や、今日は花が、空が、風が綺麗ですね』と」


今度は静かに頷きながら、そのときの様子をもう一度味わうように爺やが続ける。


「普通のことだとお思いになるでしょう。ですが、そんなふうに日々の自然の綺麗さに目を向け、口にするのは、エル様が大人になられてから初めてのことでした」


爺やの深い皺が刻まれた目元、もはや落ち窪んだ瞳に涙が浮かぶ。


「まるで幼き頃の心が戻ったかのように、また再び心を動かされているエルサ様の様子が伺えて私は嬉しかった」


シワを辿って落ちそうになる涙を、爺やが手の甲で拭う。潤んだ瞳で、爺やが私を見る。


「また、それ以上にルカ様。貴方について話されるエルサ様は、本当に愛くるしい様子だったのですよ」


私は心に言葉を染み渡らせるように、静かに頷いた。


「老人の戯言かもしれませんが、私はまだエルサ様がどこかで生きておられるような気がしてなりません」


私もだ。私も、ずっとそんな気がしている。


爺やがにっこりと笑って、私の手を取る。


「ルカ様。いつでも息抜きに爺やが暮らす牧草地まで遊びにきてください。田舎ですが、自然が豊かなところです。ルークとチェスの散歩がてらでも」


私は爺やの手に自分の手を重ねて、しっかりと握った。


「必ずや、近いうちに参ります。どうか、それまでお元気で」


爺やがうんうんと頷く。


「ルカ様、どうか城を頼みましたぞ」


私たちは固い握手を交わした。


 翌朝、雲ひとつない澄み切った青空の日、爺やを乗せた馬車がどんどんと遠ざかっていくのを私はまたバルコニーから見ていた。


女王様を最後に見送ったあの日のように。

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