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風と狼  作者: 真朱マロ
7/11

そのなな  衝突

 森を抜け、山を越え、野を走る。

 ルヴァの姿は宿場では目立つので、街道ではなく野山を選ぶ。

 補給の回数を減らすため、人と馬だけでなく、ルヴァも小さな背鞄を背負っている。


 ソルの隊が育てた馬は、幸いなことに悪路にも強かった。

 領地を出ても馬の乗り継ぎが上手くいき、予定より二日ほど早く王都にたどり着きそうだ。

 ただ、好天の日も多かったので移動にはちょうど良くても、鳩を飛ばすには最適なので気も急いた。

 

 最後の乗り換え予定になる宿が近づいた。

 ソルと騎士は森に身を潜め、シャナとルヴァは風上から馬小屋に忍び寄る。

 身を隠し様子を伺えば、馬が落ち着きなくいななき始めた。

 ルヴァの匂いで怯えるのは、ソルの隊が用意した馬ではない。


 中の人に気付かれる前に、一行はその場を離れた。

 疲れの見える馬を気遣いながらも、刺客の手が迫るのを感じて、先を急いだ。

 

 王都が近づけば、それだけ身を隠せる場所も減った。

 軽く睡眠はとったが、ひたすら移動に専念する。

 最後の森を抜けて進めば、遠くに王都を囲む塀が見える位置までたどり着いた。


 通行門まで、あと少しの距離だ。

 最後の正念場である。


 この先は見晴らしの良い平原だけで、人は街道を通るしかない。

 早朝なので人影はなく、通りすがりの商隊にまぎれることもできない。


 旅人に擬態するには、いささか厳しい四人だった。

 絹の服より目立たないが、森の装備は辺境の村のもので、旅人と呼ぶには違和感がありすぎる。

 おまけにマントで顔を隠し、フードを深くかぶっていた。


 一目で訳ありとわかるが、いたしかたない。

 気は焦るが、疲れの見える馬を気遣って、並足で進ませた。

 ルヴァは犬の顔で横にいたが、しばらくして低くうなる。

 一瞬で変わる気配に、襲撃を知った。

 

「シャナ! ルヴァと行け!」


 ソルの叫びと同時に、シャナは短刀を抜き放ち、馬に括り付けていた荷の紐を切り落とす。

 次いで、ルヴァが警戒の唸りを向ける先。敵がいると思われる場所に向けて、短弓で矢を連続で放ちながら、刺客を牽制しながら離脱し、先行する。

 身軽になった単騎と一頭は、全速で街道を駆け、見る間に遠ざかっていく。

 

 現れた無頼漢は五騎で、冒険を生業にする者のいでたちをしていた。

 疲れ切った馬を全速で駆けさせても、すぐに追いつかれてしまうだろう。

 敵に囲まれる前に剣を抜き、ソルたちから襲うように切りかかった。


 覆面で顔を隠しても、修練を重ねた綺麗な剣筋は騎士のものだ。

 襲撃者に選ばれただけあって強かったが、ソルが連れている二人も精鋭である。


 数でこそ不利だが、やすやすと討ち取られはしない。

 なにより、救援が来るまで持ちこたえれば、ソルたちの勝ちだ。


 ただ、疲れた体に、襲撃者たちの剣は重い。

 切り結び、はじき返し、隙を突く事を繰り返せば、見えない疲労が蓄積していく。

 ソルを守護する二人の騎士も、逃避行の疲れが見え長期戦は難しいだろう。

 先行したシャナを信じて、三人は剣を振るっていた。


「愚か者どもめ! 私が死ねば、印璽の在処は永遠にわからぬと知れ」


 その言葉に、襲撃者たちはたじろいだ。

 領主着任には必須の品なので、印璽はソルの手にあるはずだった。

 継承される印璽がなければ、領土は国に返還されるだけとなる。


 動揺を誘っているのか、真実なのか、言葉だけでは判断できない。


「どこにやった!?」

「知るのは私のみ。簒奪が叶うと思うな!」


 鈍った剣筋に、殺意の濁りを感じた。

 圧倒的な不利の中でも付け入る隙が生まれ、ソルは不敵に笑うのだった。

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