出会い6
この小説は、迂闊十臓さん(@ukatujyu)のイラストから着想を得た小説です。
迂闊さんには、イラストイメージの使用を許可していただき感謝いたします。
ガニラが意識を取り戻したとき、僚機はもちろん、他の部隊員も撃墜していた。
彼女の機体だけがほぼ無傷だった。
さきほどまで荒れ狂っていた《天使》の声はまったく聞こえない。
不思議なことに、これまで感じたとこのない奇妙な平穏が心を満たしていた。
思考を戦闘機のチェックに割り振ると、外部センサーや火器管制が生きていることをコンピュータが教えてくれた。そして、戦闘を中止し、基地に帰投せよと忠告してくる。
だが、翼もエンジンも、すべて戦闘が可能なぐらいには動いている。
「本来なら帰投しなきゃならないけど……」
両手をセンサーパネルの上に置いて、大きく深呼吸する。
「できる気がする」
パイロットスーツによって汗を流さないよう体温制御されているが、それでも緊張による発汗が一筋、額に流れた。
意識を外部センサーへと切り替え、《天使》の位置確認をこころみる。
《天使》は、後方数キロの位置にいて、自機をにらんでいるようだった。
「いくかっ!」
機体を傾け、機首をぐんと引き上げて急旋回する。
パイロットにかかる地球標準重力加速度は十を優に超える。
Gを和らげるために設計されたシートは、めりこんでくる彼女を包み込むように形状を変え、血が下に落ちないように腰から下を強く圧迫して、血液が下半身に落ちて脳に血が行き渡らなくなり、ブラックアウトしないように調節した。
だが、これだけの加速度の中ではいくら鍛え上げた人間でも失神は免れぬ。
「ぐっ!」
ガニラの視界が一気に暗くなり、それを感知したフィジカルセンサーが慣性緩和装置を作動させた。完全な慣性制御を可能とはしないが、短時間ならばある程度の慣性を緩和可能だ。
急激な戦闘機動による意識喪失を防いだ。
ターゲットサイトが、視界内でふわふわと揺れる《天使》をとらえる。
「ロック。フォックスワン、フォックスツー」
呟くと、主翼下につられていた小型のミサイル二機が発射される。対象はすでに視線でロック済みだし、思考操作しなくても命中は間違いない。
はずだった。




