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帰還

ボクは痛みを堪え全力で駆け出した

アイツがこちらに気づき少し遅れて追ってくる

ボクには分かっていた、なぜ彼女の方へ彼が行かないのか

彼女を殺す気があるのであればとっくに殺しているだろうからだ


(もう少し、もう少し!)


後ろから足音がどんどん近づいてくる


「悪あがきしてんじゃねえええええ!!」


ボクは足をとられ体勢を崩し前へ倒れこんだ


「ハァハァハァ、手間とらせんじゃねーって」


ボクは急いで立ち上がり彼の目を見る

彼の視線を下に向けさせるわけにはいかない

当然彼はボクの視線に気づきボクの目を見ながら近づいてきた


ガシャァーン!!


「グッ!ア゛ア゛!?いってええええ!」


やった・・・見事にかかった・・・


「てめぇ!トラバサミの罠かけ直してやがったのか!!」


かなりキツめの力でかけておいて正解だった

おそらく彼はもう歩くことすらできないだろう


「ゼェゼェ、ざまあみろ!」


限界が来てもう立っていられないボクは少し離れたところに座りこんだ

終わったのだ、とうとう


まるで鬼のような形相で彼がボクを見ている

そしてこう口惜しそうに叫んだ


「もう少しで終わったんだぞ?このクソガキがあああああああああああ!!」


そして彼が立ち上がる

ボクには信じられなかった

凄まじい執念である


彼はそばにある大きめの石を掴み殺意をボクに向けている

これ以上はもう無理だ、動けない

あっという間にボクの目の前に立ち、腕が振り下ろされる


パーン!パーン!


2発の銃声が鳴り響く

彼は駆けつけた警察官の銃撃によって静かに倒れた


「大丈夫かね!?キミ!?」


「は、はい・・・やっと来てくれたんですね・・・向こうに怪我した女性がいるはずです」


「応援と救急の手配急げ!」


まるで悪夢のような長い夜が終わった


「ううぅ・・・うっ・・・」


ボクは生きている喜びに涙が溢れた

男のくせにみっともないくらい・・・泣いた



──────────────────────────────────────



怪我の治療や長い長い事情聴取が済み警察署を後にする

現場から助けられたのはボクと長谷川恵さんの二人という事

他の人たちは全員亡くなってしまった事

たまたま近くをパトロールしていた警察官が不審車を見つけボク達を探してくれた事

死因の特定が現場ではできず司法解剖の結果を待っているらしい事

そして・・・犯人は川島さんという事


警察署を出て家に向かう為近くのバス停に行くとそこには長谷川さんがいた


「あら、あなたもやっと開放されたのね」


「はい、やっと家に変えれます」


「お父さんとお母さんに迎えに来てもらわなかったの?」


「子供じゃないんですから一人で平気ですよ、もうすぐ会えますし」


少し聞くのを迷いはしたが川島さんの事がどうしても気にかかる


「あの・・・川島さん亡くなったそうですね」


「えぇ・・・まさかこんなことになるなんて・・・」


長谷川さんの表情が曇る

その表情を見るとボクはそれ以上の事は聞けなかった


そろそろバスがやってくる


「家に帰ったらお父さんとお母さんにたくさん甘えなさいね」


「いやー、それは無いですよー!恥ずかしいですもん。長谷川さんはこれからどうされるんです?」


「私は・・・少し行きたい所があるの。それにしばらくしたら静かなところに引っ越そうと思うの」


「そうですか・・・あ、ボク向こうのバス来ちゃったんで行きますね」


「元気でね」


「はい、長谷川さんも」


自分の家が近づいてくるといつもの日常に戻ってきた実感が沸いてくる

玄関を開けると父と母が笑顔で出迎えてくれた


ボクは早くこの言葉が言いたかった


「ただいま!」

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