行方
コンコン!
「誰か居ないんですか?」
車の中をライトで照らす
薄々分かってはいたが中に人の姿は見当たらない
「どうした?何か問題ありそうか?」
パトカーからもう一人年配の警察官が降りてきた
「巡査長、こっちに来てこれを見てください」
顔を車のガラスに近づけ、車の後部座席を照らされると数人分の荷物が浮かび上がってきた
(クソ・・・手さえ自由になれば!)
もはや足の痛みなど気にすることはできない一刻も早く助けにいかなければいけない
そう思った
時折人なのか獣なのか判断の付かないうめき声が聞こえる
恐ろしさですぐには立てなかった自分を悔やむ
しかし館に自ら入るまでもなくあの男が廃墟からゆっくりと出てきた
とうとう、ボクと彼が相対する事になる
「みんなはどこだ!?みんなに何をした!?」
何もしないよりは話が続けば時間稼ぎくらいにはなるだろう
時間が稼げれば好転する目だってなくはない
「他のやつとは違ってキミはとても機転が利くようだ、正義感もある」
「いいだろう、キミになら少し聞かせてやっても・・・いや、キミは聞かねばならない」
「そうすることで完成するんだから」
彼はそう言うとボクに手を出すこともなく語り始めた
「少し前に暴走車が歩道に突っ込み大事故を起こしたニュースは知ってるかい?」
そういえばそんな事件あったような・・・しかしちゃんとは思い出せない
よくある類の事件だからだ
「ピンと来てないようだね・・・あー、うーん・・・そうだ!同じ日に横浜で起きた事件!
知らないかい?風俗店の女性が殺害された事件の犯人が飛び降り自殺しただろう?それで思い出せないかい?」
「あっ!」
頭の中の霧が一気に晴れたようだった
そうだ!その日父が事故について仕事から帰ってきた後話していた!
確か父の会社の近くで事故があったそうで警察が騒がしかったと言っていた
それを聞いたボクはそのニュースをテレビで見ていた
確かに暴走車が歩道に突っ込み歩行者を巻き込んた大事故
双方亡くなったはず
そして失踪した被害者の風俗店勤務の女性が遺体で発見されるという当時マスコミで連日話題になっていた未解決事件
容疑者として男が浮上したもののは行方がわからくなっており未解決のままであった
その後、その男がマンションから飛び降り謎の自殺を遂げるというニュースもやっていたのを思い出した
確かにその日事故のニュース、事件のニュース両方を見た記憶がある!
しかしボクの中で疑問が浮かぶ、それがなにか関係があるのかと
「あぁ、良かった。思い出したみたいだね」
安心した彼は続けて語りだす
「ボクはあの事故現場に居合わせたんだ。その時に神から素敵な贈り物を授かった」
気味の悪いことを・・・特に言い回しが鼻につく
本来ならばこんなやつの話などまともに聞く気にならないが
今は状況が違う、これで時間が稼げるのだ
時間を稼げば誰かが助けに来てくれるかもしれない、ここに残された人が逃げれるかもしれない
誰かが助けを呼びに走ってくれるかもしれない
少ない可能性でもこんな状況では潰すわけにはいかない
「事故から始まったこの物語り、そのまま終わらせるのはもったいないだろ?」
彼は本気で言ってるようだ
ボクの目を見て離さない
「探したよ、繋がりのある人物達を・・・でも、そんなに手間はかからなっかった」
探偵でもやっとたのか自分で探したのか?それにしても手間もお金も時間もかかって当然だろう
「視る事ができるって素晴らしいだろう?おかげで今日は特別な日になった!」
彼は自分では納得言った話しなのだろうがボクにとっては理解しがたい
だが今日一緒だった人たちを以前から狙っていたということだけはなんとなくつかめた
「厚みが増したこの物語り、じゃあなぜキミなのか・・・不思議かい?」
「当たり前だろ!ボクはなんの関係も無いじゃないか!」
やれやれという顔をしている
「キミが関わることでオレの物語りと繋がっていくんだ、素晴らしいだろ!」
「はぁ!?なんであんたとボクが繋がるんですか!?」
ボクは当然のように問い返した
「キミのお父さんには大変世話になってね!」
「父さんの知り合いとでも言うのか?なんだよそれ!そんな理由でこんな目に!」
「今日の出来事を経験したキミを視ることで何の接点も無かった二つの物語が輪のように繋がる!」
そして全てがオレに帰結する!!
狂ってやがる・・・・・・
「警察もバカじゃない。一人でも殺せばほぼ間違いなく捕まるだろう。捕まらずとも身動きがとり辛くなる」
まだ時間を稼ぐ必要があるボクは頭をフル回転させ話を合わせた
「途中で終わらせるわけには行かない、そこで一気に視てしまう計画を立てた・・・そういう事か?」
「キミは素晴らしいな、今日殺すのが惜しくなってしまうよ」
「だが・・・そろそろ時間だ」
(これまでか、、、)
結局は時間を稼いだところで好転はしなかった
逃げてもすぐ追いつかれるのは目に見えている
でも、ボクは決して諦めることはなかった
(一瞬で良いアイツに隙が欲しい・・・あの距離くらいなら追いつかれずにいけるかもしれない)
神にボクの願いが届いたのか、奇跡が起きた
彼女が生きていたのだ
「健一君!や」
アイツの視線が彼女の方へ動いた
これが一か八か最後のチャンスになるだろう
ボクは怪我の痛みなど気にせず、ある方向に向かって全力で駆け出したのだった




