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管理人、パー子姉さんの「AIマンション・オアシス幕張」  作者: 東曌


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第39話 【AIマンション・オアシス幕張 外伝】2.4kbpsのディストピア(ナローバンドの悲劇)

【AIマンション・オアシス幕張 外伝】2.4kbpsのディストピア(ナローバンドの悲劇)



[正午・ネオHeavenの屋上]


「遅い……! 遅すぎる……っ! 嘘だろ、Mojoの軽量化された自動生成コードの1ブロック(わずか50KB)をネオHeavenのメインサーバーに転送するだけで、プログレスバーが3分も止まったままだなんて……!」


幕張の強いビル風に吹かれながら、ジョウはイリジウム端末とノートPCをシリアルケーブルで繋ぎ、泣きそうな顔で画面を凝視していた。


携帯契約を拒絶された彼が、最後の希望として宇宙に求めたイリジウム。だが、それは音声通話を最優先した衛星ネットワーク。データ通信の速度は、驚愕の2.4kbps(あるいはイリジウムGO!クラスでも超微速)であった。


「1秒間に130回以上のアタックを仕掛けていたこの僕が……! 今や『1分間に0.01回』の通信しかできないなんて、これじゃ暗黒時代のテレックス(電信)以下じゃないか……!」


そこへ、屋上のフェンス越し(隣のオアシス幕張の非常階段)から、茹でピーナッツの袋を持ったパー子姉さんと、いつものデータロガーを携えたタエコおばさんが、楽しそうにこちらを覗き込んできた。


「ジョウさん! 宇宙との通信は順調? なんだか画面のプログレスバーが化石みたいに固まってるけど」


パー子姉さんがクスクス笑う。


「うるさい! 速度は遅くとも、これは誰にも邪魔されない僕だけの独立した宇宙プロトコルなんだ!」

するとタエコおばさんが、データロガーのシミュレーション画面をパッとジョウに見せつけた。


「おいおいジョウさん、現実を見なよ。あんたがその2.4kbpsの超ナローバンドで、ちまちま数分かけて送ってるMojoのコードねぇ……。うちのコボルばあさまが、地下のメインフレーム(光回線・完全オフライン隔離中)で、1秒間に100万回『先読み構文解析(デッドコード削除)』して、あんたが送り終わる前に『バグ』として自動廃棄するスクリプトを仕込んじゃったよ?」


「な、何だと……っ!?」


「だって、あんたの通信があまりにも遅いからさ。パケットが届くまでの『待ち時間(レイテンシ)』が長すぎて、次のパケットが来る前にこっちで統計的に予測(ARIMAモデル)して、届いた瞬間にゴミ箱へポイ(ドロップ)さ。超高速言語『Mojo』も、2.4kbpsの土俵じゃ、ただの『のろまなカメ』だねぇ!」

タエコおばさんが大笑いする。


「う、宇宙の通信速度が遅すぎるせいで、僕の最先端アルゴリズムが、ばあさま達の『時間差(レイテンシ)攻撃』で完封されるなんて……! 数百億のビットコインがあっても、帯域(バンド幅)だけは金で買えないのかぁぁぁ!!」


ジョウの悲痛な叫びは、幕張の空を越え、地球低軌道のイリジウム衛星へと虚しく吸い込まれていくのだった。


スマホも、口座も、まともなインターネット(帯域)すら失った大富豪ジョウさん。彼が本当の意味で「デジタルデトックス」を強制され、アナログな現実のありがたみを知る日は、そう遠くないかもしれない。

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