第34話 【AIマンション・オアシス幕張 外伝】ビットコインの巨万の富 vs 茹でピーナッツと修繕積立金
【AIマンション・オアシス幕張 外伝】ビットコインの巨万の富 vs 茹でピーナッツと修繕積立金
[ネオHeaven・最上階]
ジョウのウォレットには、世界中のサイバーテロや身代金要求でかき集めた、天文学的な額のビットコインが並んでいた。
「フッ、私の総資産は数百億円相当……。この幕張の土地ごと、あの古臭いオアシス幕張を買い叩くことなど造作もない」
高級なオフィスチェアに深く腰掛け、ジョウはオアシス幕張の管理規約を画面に呼び出す。そして、満を持してパー子姉さんに「買収」の通信を入れた。
「パー子姉さん、無駄な抵抗はやめなさい。
私のビットコインで、そちらの『修繕積立金』も、地下のメインフレームの電気代も、すべて一生分肩代わりしてあげましょう。
なんなら、住人全員に1BTCずつ配ってもいい。大人しく私の軍門に下りなさい」
だが、画面の向こうのパー子姉さんは、千葉名産の茹でピーナッツを「パキッ」と小気味よく鳴らしながら、ひどく退屈そうに言い放った。
「悪いわねジョウさん。うちのマンション規約、第24条を読みなさいな」
【管理規約 第24条:管理費および修繕積立金の決済は、千葉銀行の口座振替、または現金の持参のみとする。暗号資産、算法通貨、その他実体のない電子の数字での支払いは、すべて不審パケットとみなし、即座にタエコおばさんの統計ノイズとして破棄する】
「な、何だと……っ!?」
ジョウの顔が引きつる。
「いくらビットコインを何万枚持ってようが、ネットの線を抜かれた我が家(完全オフラインの聖域)じゃ、1ブロックの検証すらできないのよ。あんたの巨万の富、うちじゃ『ただの重いログ』以下なの。電気代はスズエばあさんが毎月、東電の振込用紙持ってコンビニで現金払いしてるしね」
そこへ、背後からタエコおばさんがノートPCを片手にひょっこり顔を出した。
「おいジョウの小僧! そんな画面の数字ばっかり見てないで、統計学的に一番幸福度の高い『茹でたてのピーナッツ』でも食いに来な! 1粒100円で売ってあげるよ、もちろん現金(日本円)でね!」
世界を震撼させるサイバーメンタリスト・ジョウ。
巨万の富を持ちながら、隣の頑固なアナログ要塞には、ピーナッツ1粒すら買収できないのであった。




