牛乳配達と冷たい果実水
今日は牛乳配達の日だったわね、とカレンダーを見る。
瓶は洗ってあるからすぐ出せるのでよし。
それから果実水を作っておく。
今日はベリーを軽く潰したものを入れて、ミントを2枚ほど。
瓶は魔導冷蔵庫で冷やしておく。
私が昔生きてた世界では、こういうのは電化製品って呼んでたな。
魔導冷蔵庫は魔石を動力として動くので、電気のような線がいらないのが便利だなと思う。
私の記憶はそんなに鮮明ではないが、この世界には前世持ちが時々現れるらしく、噂では日本人街というものもどこかにあるそうだ。
なので味噌やしょうゆもこの世界にあるのだが、私の住んでいるこの辺りでは手軽に手に入るものではないので、口にしたことはほとんどない。
ぼんやりとした記憶の中で覚えているのは、手芸のことだから、たぶん今とそんなに変わらない人間だったのだろう。
帽子をかぶり庭に出て手入れをしていると、ガタゴトと配達用の三輪車の音が聞こえてきた。
牛乳配達のマテオさんだ。
バウも飛び出してきて、お出迎えする。
「やぁイリス!今日のお届けだよ」
門の前に三輪車を停めて、前の荷台から牛乳の入った瓶を2本持ってきた。
「ありがとう、ご苦労さま。良かったら果実水をいかが?」
瓶を受け取りながら私が言うと、マテオさんはニカッと嬉しそうに笑いながらバウをなでている。
「ありがとう、いただくよ!」
牛乳瓶を冷蔵庫にしまい、代わりに果実水を入れた水差しとコップを持って外に出て、マテオさんに渡す。
「今日は少し暑いから冷たいものは助かるよ」
果実水を一気飲みした。
マテオさんは口も大きくて、とても表情豊かな人だ。
30代と聞いているが、笑うと少し若く見える。
「ごちそうさま。生き返ったよ!」
コップと引き換えに空瓶を受け取ると、荷台にそれを置いて、三輪車にまたがった。
「それじゃあまた!バウもまたね!」
「ではね」
軽く挨拶を交わし、マテオさんはまたガタゴトと三輪車をこいで、もと来た道を帰っていった。
彼の黒髪が見えなくなるまで、バウは尻尾をふりながら見送っていた。
マテオさんは酪農家のベルナーさんのところで住み込みで働いている。
我が家には週に2回、牛乳を配達してくれている。
配達ルートは複数あって、私の家に来るルートはここが村外れなので最後になる。
なのでたまに軽くお茶をしたり、雑談したりしていくのだ。
さて、新鮮な牛乳があることだし、午後からプティングを作ろうかしら。
卵も昨日買ってきたし。
カラメルの代わりにベリーのソースにしてみようか。
そんな事を考えながら、籠を手にベリーを摘み始めた。




