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村外れの小さな家のなんでもない日々  作者: 翠蓮


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9/11

牛乳配達と冷たい果実水

今日は牛乳配達の日だったわね、とカレンダーを見る。

瓶は洗ってあるからすぐ出せるのでよし。

それから果実水を作っておく。

今日はベリーを軽く潰したものを入れて、ミントを2枚ほど。

瓶は魔導冷蔵庫で冷やしておく。

私が昔生きてた世界では、こういうのは電化製品って呼んでたな。

魔導冷蔵庫は魔石を動力として動くので、電気のような線がいらないのが便利だなと思う。

私の記憶はそんなに鮮明ではないが、この世界には前世持ちが時々現れるらしく、噂では日本人街というものもどこかにあるそうだ。

なので味噌やしょうゆもこの世界にあるのだが、私の住んでいるこの辺りでは手軽に手に入るものではないので、口にしたことはほとんどない。

ぼんやりとした記憶の中で覚えているのは、手芸のことだから、たぶん今とそんなに変わらない人間だったのだろう。


帽子をかぶり庭に出て手入れをしていると、ガタゴトと配達用の三輪車の音が聞こえてきた。

牛乳配達のマテオさんだ。

バウも飛び出してきて、お出迎えする。

「やぁイリス!今日のお届けだよ」

門の前に三輪車を停めて、前の荷台から牛乳の入った瓶を2本持ってきた。

「ありがとう、ご苦労さま。良かったら果実水をいかが?」

瓶を受け取りながら私が言うと、マテオさんはニカッと嬉しそうに笑いながらバウをなでている。

「ありがとう、いただくよ!」

牛乳瓶を冷蔵庫にしまい、代わりに果実水を入れた水差しとコップを持って外に出て、マテオさんに渡す。

「今日は少し暑いから冷たいものは助かるよ」

果実水を一気飲みした。

マテオさんは口も大きくて、とても表情豊かな人だ。

30代と聞いているが、笑うと少し若く見える。

「ごちそうさま。生き返ったよ!」

コップと引き換えに空瓶を受け取ると、荷台にそれを置いて、三輪車にまたがった。

「それじゃあまた!バウもまたね!」

「ではね」

軽く挨拶を交わし、マテオさんはまたガタゴトと三輪車をこいで、もと来た道を帰っていった。

彼の黒髪が見えなくなるまで、バウは尻尾をふりながら見送っていた。


マテオさんは酪農家のベルナーさんのところで住み込みで働いている。

我が家には週に2回、牛乳を配達してくれている。

配達ルートは複数あって、私の家に来るルートはここが村外れなので最後になる。

なのでたまに軽くお茶をしたり、雑談したりしていくのだ。


さて、新鮮な牛乳があることだし、午後からプティングを作ろうかしら。

卵も昨日買ってきたし。

カラメルの代わりにベリーのソースにしてみようか。

そんな事を考えながら、籠を手にベリーを摘み始めた。




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