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村外れの小さな家のなんでもない日々  作者: 翠蓮


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5/11

おとぎ話のような村 〈リラ視点〉

私は王都で生まれ育った。

学院卒業後はそのまま王都の一商会に就職し、毎日忙しく働いていた。

充実していると思っていた。

だけどある日突然倒れて、体が動かなくなった。

お医者様が言うには、心と体のバランスが崩れたのが一番の原因だという。

忙しさにかまけて、食事を抜いたり軽く済ませたり、睡眠時間が短い日も多かった。

ゆっくり休養をと言われて、仕事は辞めざるをえなかった。

商会の寮に入っていたからそこも出て、実家には帰ったものの、何もせずに一日を過ごすのは苦痛でしかなかった。


そんなとき、母の姉であるメリンダ伯母さんから、モンシレーヌへ来てはどうかと手紙が来た。

誰も知り合いがいない田舎なら、のんびりできるかもしれない…少しの期待を胸に、数日かけて馬車を乗り継いで、モンシレーヌへと向かった。



初めて訪れたモンシレーヌは、村人みんなが顔見知りでお互いのことをよく知ってるような、小さな村だった。


村に来てしばらくは家にこもっていたが、そのうち週に何日かは散歩に出るようになった。

村の人と顔を合わせることもあるが、「メリンダさんの姪っ子のリラちゃん」以上のことを聞いてくるでもなく、おせっかいしてくることもなく、そのことに私はとてもホッとした。


村からしばらく歩くと湖があり、その道はお気に入りの散歩コースになった。

その近くに住んでいるのがイリスさんだった。


イリスさんは、少し不思議な人だった。

村の人達は、穏やかながらも毎日忙しそうにしているが、イリスさんはのんびりと過ごしているように見えた。

最初はあいさつを交わすだけだったが、バウと遊ばせてもらってから時々お茶に招かれて、たわいのない話をするようになった。

イリスさんにも娘がいて、街で働いているのだという。

親子ほどの年の差だけど、なんだか気が合って、イリスさんの庭で過ごす時間は心地いい。

おうちも庭もいつもきれいに整っているが、イリスさんはあまりせかせかした感じがしないのが不思議で、尋ねてみたことがある。

そうしたら、「働き者のブラウニーがいるおかげよ」とイリスさんは軽く笑った。


ブラウニーとは、名前は聞いたことはあるけど、この村には本当にいるらしい。

他にも、湖には滅多に見れないがウンディーネもいるとか、たまに妖精がいたずらしていくとか、ごく当たり前のように聞かされた。


この村はおとぎ話のようだと思う。

王都では人間ばかりが生きているように見えるけれど、この村では普通に、「隣人」と呼ばれる彼らと共生しているらしい。

いつか王都に帰るつもりではあるけれど、それまでに「隣人」に会えたらいいなぁと、ひとつ願い事ができた。



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