ブルーベリータルトとお客さま
色づき始めたと思ったら、あっという間に食べ頃の実が鈴なりになる。
昨日の晩から、今日はブルーベリータルトを焼こうと思っていた。
伯母さんは料理好きで、調理器具もいろいろ持っていた。街に住む従兄弟夫婦と同居するためにこの家を離れる時、ほとんどのものはここに置いていった。
おかげで私は、大抵のものは作れる。
上手にできるかどうかは別として。
伯母さんから教えてもらったレシピを書き留めたノートを開く。
お菓子作りは分量をきちんと守らないとうまくできない。
まずはタルト生地。
粉をふるって、バターは溶け出さないように手早く混ぜる。
まとまったら一旦冷蔵庫で休ませて。
その間に卵液とブルーベリーを準備しておく。
頃合いを見て生地を取り出して、麺棒で伸ばしてタルト型にはめていく。
伯母さんから教わったのは、アーモンドパウダーと砂糖を混ぜたものを底に入れて、その上にブルーベリーを敷きつめて一度焼く作り方。
こうすると、ブルーベリーから出る水分で、生地がぐちゃぐちゃにならないのよ、と伯母さんの言葉が毎回頭の中を流れていく。
それから卵液を流し込んでもう一度焼く。
甘くて香ばしい香りが家中に広がって、焼き上がりを待つ間もソワソワしてしまう。
バウもずっと鼻をヒクヒクさせながら、部屋の中をウロウロしている。
焼き上がったタルトをオーブンから取り出して、冷めるのを待つ。
うん、今日も美味しそうにできたわ。
成功に気を良くして外を見ると、家の前の道を上がってくる人影が見えた。
「こんにちは、リラさん。お散歩?」
庭に出て、柵越しに声をかけると、その子は少し控えめに微笑んだ。
「こんにちはイリスさん。ええ、今日は湖の道を」
「今ちょうど、ブルーベリータルトが焼き上がったところなの。よかったらお茶していかない?」
「いいんですか?」
「もちろん。さあどうぞ」
リラさんを招き入れ、ウッドデッキのテーブルに案内する。
お茶を淹れ、まだ温かいタルトを取り分けて、私も席に着いた。
「今年もたくさん実ったの。さあどうぞ、召し上がれ」
「わぁ…美味しそう」
目尻を下げて、美味しそうに食べてくれると、作ったこちらも嬉しい。
私もタルトを口に入れる。
火が通ってやわらかくなったブルーベリーが、じゅわっとつぶれる。
リラさんは3カ月ほど前にこの村にやってきた。
農家のメリンダさんの姪っ子で、ここには療養に来たらしい。
都会の喧騒から離れて、心身を休めるにはここはとてもいいところだと思う。
リラさんの散歩コースの一つがうちのそばを通るので、あいさつを交わしているうちに、時々こうやってお茶をするようになった。
「メリンダさんにもタルト持っていって。夏野菜の収穫で今忙しいでしょう」
「そうなんです。畑が忙しくて。わたしも家のことはちょっとだけお手伝いしてるんですけど」
リラさんは少し申し訳なさそうに話して、それからまた微笑んだ。
「おばさんも甘いもの好きだから、きっと大喜びしますね」
「ふふふ、だったらうれしいわね」
いい子で待っていたバウも、タルトを食べ終わったリラさんに遊んでもらって満足げだ。
そんな2人を見ながら(正確には1人と1匹だが)、私はお茶のおかわりをカップについだ。




