庭のベリーとベリーのようなビーズ
庭のブルーベリーが熟し始めた。
「バウ、あなたも一緒に来る?」
足元で丸くなっていた犬が飛び起きた。
少したれがちの丸い目が、期待でキラキラと輝いている。
ドアを開けると私の横から飛び出し、庭を駆け回りだした。
走って、たまに立ち止まって匂いを嗅いで、また走り出す。
長いフサフサの毛が、おひさまの光を受けてキラキラと金色に輝く。
個人的には、焼きたてのパンのような美味しそうな色、と思っているのだけど。
私は籠を手に、柵に沿って植えてあるベリーたちの方へ向かう。
ベリーのある庭は私の憧れだった。
ブルーベリーは、この家の前の持ち主である伯母夫婦が植えていたもので、毎年たくさんの実をつけてくれる。
私がブルーベリーを摘み始めるとバウも近寄ってきて、実へそっと鼻を近づけてクンクンと嗅いでいた。それから期待を込めた目で私を見上げる。
「少しだけよ?」
よく熟した実を一つ摘んで、バウの鼻先に差し出すとあっという間にばくりといった。
ほかのベリーもたくさん見をつけている。
実のなる植物は大好きだ。それが食べられるものならさらに最高だ。
でも園芸家というほど庭仕事に没頭したいわけではないので、植えてあるのは比較的手のかからないものを選んでいる。
好きなものは多いが、私は基本的に面倒くさがりなのだ。
ラズベリーの実も赤くなっている。
今年はジャムがどれくらい作れるかしら。
籠に入れながら、合間に自分の口にほうりこみ、みずみずしい甘酸っぱさを味わう。
今日採れた分は、まだ使い切れないほどの量ではないから、生食用にしよう。
収穫したベリーを魔導冷蔵庫にしまい、庭を見るとバウはまだ家の中に戻る気はないようだ。
資材棚からビーズを入れてある籠を取り出す。
少し大きめの、かわいい色合いのビーズたち。
丸く並べたらベリーのタルトのように見えたのよね。
そういうデザインで作ってみようか。
こうやって素材を眺めながら、とりとめもなく考えてる時間がとても好きだ。
このビーズにはこのパーツが合うかしら。
そうやって次々出すものだから、作業机の周りがすぐに散らかるのは仕方ないと思う。
青と水色の間のような少し落ち着いた色味のビーズを並べて刺繍していくと、ブルーベリーのようにも見える。
周りをつや消しの金のスパンコールで囲むように刺していく。
「ブルーベリーのタルトに見えなくもないかな?」
握った手のなかに、すっぽり収まるサイズの小さなタルト風モチーフ。
何に仕立てようか。
モチーフを掲げて色々な角度から眺めてから、窓の向こうを見る。
バウは今度は、蝶を追いかけながら跳びはねていた。




