ゲイル王とスーラジ王妃、アッシャムズ王子
!この小説を読むにあたっての諸注意!
・この小説は幻獣や精霊等が出て来ます。
・基本的にR18シーンはありませんが、ハグやキスだけはあります。
・精霊や幻獣の見た目などに関しては資料などを参考に、私の解釈で設定しています。
・私の妄想大全開の内容になっていますので、苦手な方は回れ右でお願いします。
以上の事が大丈夫であれば、どうぞお楽しみ下さい。
フウァールは森の中を彷徨っていた。何しろ四方を木々に囲まれた森の中だ。目印なんてないに等しい。
「困ったな…」
フウァールはため息を吐いた。ウィンの姿も見えない。完全に迷子だ。ふと足下を見ると、何かが光った。拾うとそれは赤い石だった。
「何だろう。宝石かな」
もしかしたら太陽神フレイの導かも知れない。フウァールはそれをポケットにしまい、空を見上げる。
「…そうか。木の上からなら何か分かるかな」
風の子のくせに全く思いも付かなかった。迷子のせいもあり多少パニックになっているのかも知れない。少し落ち着かないといけない。フウァールは風の力で空に舞い上がる。森の上に出ると、周囲を見渡す。
「…あ、村だ!」
微かに要塞が見えた。フウァールは急いでそこに向かおうとしたが、突然突風が横から吹いて来た。
「うわっ!」
バランスを崩し、地面に落ちそうになった。すると誰かがフウァールの腕を掴む。
『おっと!すまない!大丈夫か?』
白いひげをたくわえた男が言う。
「シルフか」
『そうだ。お前もそうだろう。しかし、それにしては匂いが違うな』
シルフは眉根を寄せる。
「僕はフウァール。母上が人間とシルフィードの娘なんです。父上は元は人間だけど、エルフと契約したんです」
『なるほど。人間とシルフィードとエルフの血が混ざってたのか。こりゃまた珍しい子だ』
シルフは笑って言う。
「そうだ!この森の中で人間の男の子を見ませんでしたか?友人なんですけど、魔物に取り憑かれてしまって…」
『何だと!魔物に!そりゃ大変だ!すぐに助けてやらんといけない!奴らに取り憑かれたら命が食い荒らされる!すぐに王に相談しよう!』
「王って、父上の事?」
『…お前の父君も何処かの王なのか?私の言ってる王はゲイル王の事だ。』
「ゲイル王…と言う事は、奥さんが太陽神フレイの娘って言う…」
『そうだ。スーラジ王妃だ。』
「…なるほど。僕が潜った濃霧はジャック・オ・ランタンの霧だったのか」
『ん?ジャック・オ・ランタンの濃霧を潜ってしまったのか?』
「そうみたいですね。僕も僕の友人もその霧を潜ったんです。ここは王国時代ですよね?ということは、僕たちは千年以上未来から来た事になる」
『なんと!そんな未来から来てしまったのか!つまりお前さんの父上は!』
「千年以上後の王国の王です。まあ、どちらかと言うと城のリーダーは母上ですけど」
『そうかそうか!それではなおの事城に行かねばなるまい!』
シルフはそう言ってフウァールを抱いて城に向かった。
城では大騒ぎになっていた。当然だろう。何しろ千年以上も未来の王国の王子が来たのだから。フウァールは『王の間』に通された。中はフウァールの時代と全く同じだ。
「…全然変わってないんだな」
イフリートとサラマンダーが火を熾してくれる暖炉も、王国の紋章が描かれたタペストリーもそして玉座に繋がる真っ赤なカーペットもそのままだ。
玉座の後ろの扉が開く。現れたのは大柄で恰幅のいい男とすらっと背の高い金色の長い髪の女性だった。男は明らかにこの城の王だ。という事は女性は王妃だろう。
「君がフウァールだね?千年後の王国から来たと言う王子よ」
王は言う。
「はい。お初にお目にかかります。フウァールと申します」
フウァールはそう言って膝を突くと頭を下げた。
「ふむ。なかなかしっかりした子だ」
王は微笑んで言う。
「こんな小さいのに、風の力が強いわ」
王妃は言う。
「確かにこの幼さでは珍しいくらいだな。…さて。君の友人が魔物に憑かれた聞いたが…」
「はい。憑かれたのは村の祭壇の所です。祭壇に奉納されていたアッシャムス王の剣を手にした途端に魔物に憑かれてしまいました」
「…アッシャムスの?」
「はい。恐らくこの時代に来ているという事は、何らかの形で王国に手をかけようとしているのだと思います」
「ふむ…中々聡い子だ」
王は笑って言う。
「そうか…アッシャムスの剣を手にした途端に憑かれてしまったと…しかしどうして…」
「分かりません。ただその悪魔は『やっと手に入れた』『これでこの国を滅ぼせる』と言っていました。そしてこの世界に来たという事は…」
「…この時代のこの王国を滅ぼそうとしているという事か」
王は唸る。
「それが成功したか失敗したかは分からない。君は知っているかも知れないが、あえては聞くつもりはない。どう言う理由があろうと、未来を変えてはいけない。結果がどうあれ、それを受け入れるしかない。
…そうだろう?」
王の目は確固たる信念を感じる。
「はい」
フウァールは頷く。
「…とにかく、君の友人を救わなければならないな。すぐに精霊達に言おう」
王はそう言ってドアに向う。そして立ち止まると、フウァールを振り返る。
「もし良かったらアッシャムスと会ってくれないか?あの子は内気で友達が少ないんだ。きっと喜ぶ」
「はい。是非お願いします」
フウァールは答えた。
フウァールは精霊に連れられてアッシャムスの部屋に向う。母上から聞いた話しによると、醜い容姿をしていたと聞くが…
精霊はコンコンと扉を叩く。
『アッシャムス王子。お客様がいらっしゃいました』
「…どうぞ…」
か細い声が聞こえる。扉が開けられた。部屋は広く、一人で使うには贅沢な程だ。その奥で椅子に座っている男の子の姿があった。
「…誰?」
男の子は聞く。
「フウァールと言います。アッシャムス王子。お初にお目にかかります」
フウァールはそう言って頭を下げた。
『只今、お茶とお菓子をお持ちします』
そう言って精霊は部屋を出た。男の子は探る様にフウァールを見る。病気なのだろうか、顔に沢山の出来物がある。恐らく醜い容姿と言われた所以だろう。しかし出来物を除けば、端正な顔立ちをしている。歴史の中でも『醜い』と形容される程ではない気がする。
「…醜いだろう?生まれてすぐにこんな顔になったんだ…」
アッシャムスは言う。
「そうでしょうか。少なくとも僕は気になりませんが…」
「…その嘘はもう聞き飽きたよ」
アッシャムスは悲しそうな笑顔で言う。
「皆言うよ。醜い子だと。気持ち悪いと」
「容姿で人を判断する人間の方がよっぽど気持ち悪いと思います。僕は気にしませんし、友達になりたいです」
「…友達に?」
「はい」
笑顔で答えるとアッシャムスもはにかんで微笑む。
「誰でも笑顔が一番にあうんです。ですから、アッシャムス王子も笑顔でいて下さい」
「…笑顔…」
「はい。…そうだ。せっかくです。少し外に出てみましょう」
「外に…?」
「はい。外に出て、外の空気を吸って…そうしたら心も晴れやかになるものですよ」
「…そうなんだ」
「行ってみましょう!」
フウァールはアッシャムスの手を引いてベランダに出る。
「え、こ、ここから!?」
「はい。僕はシルフですからね。掴まっていて下さい!」
フウァールはそう言ってアッシャムスと共に空を飛んだ。
「うわぁ!と、飛んでる!」
アッシャムスは目を丸くしている。
「城の上だけですけど、気持ち良いでしょう!」
「うん!」
アッシャムスは笑顔で言う。アッシャムスの心からの笑顔は、母であるスーラジ王妃と同じ太陽の様な輝きを放っている。
すると突然、魔物の気配がし出した。
「!アッシャムス王子!部屋へ!」
フウァールは急いでアッシャムスを部屋に戻した。
「ど、どうしたの?」
「…魔物の気配がします。友人が魔物に取り憑かれたまま姿を消しているので、彼かもしれません」
「魔物…」
気配はそんなに遠くない。追えば追いつくか…
「アッシャムス王子!ゲイル王に言って下さい!森の中で魔物の気配がしていると!」
「ふ、フウァールは…」
「僕は魔物の気配を追います!」
そう言ってベランダから外に出た。
「フウァール!」
フウァールは魔物の気配を追った。
うっそうと生い茂る木々の中を魔物の気配を頼りに進んで行く。
「…この辺なんだけどなぁ」
フウァールは辺りを見回す。すると背後に気配がした。とっさに身構えながら振り返る。すると木の上からウィンが飛び降りる。
「ウィン!」
『…流石は一国の王子だけはあるな。ここまで追って来るとは…』
ウィンの口は動いていない。しかし声だけ聞こえる。
「やっと見つけたよ。君の目的はなんだい?」
『ふふふ…この剣でこの国を滅ぼすのさ。全てを闇の世界に落とし、太陽を隠し、暗黒の国にする事が私の本願』
「この国を…どうして未来の王国でそれをやろうとしないんだ?」
『…今の王国は面倒だ。何しろ女王の足下に魔王の治める国があるんだからな。しかし、この時代にはそれがない。そして…』
ウィンは手に持っていた剣を掲げる。
『これは精霊達が全身全霊を込めて鋳造した剣。全ての精霊の力が込められている。これがあってこそ実現出来る事だ…』
「…その剣でジャック・オ・ランタンの霧を出し立って言うのか?」
『その通りだ。さあ、この森にはもう一つ目的がある…それを果たすために、君にはここで消えてもらう』
ウィンはそう言って剣を振り下ろした。表れたのは炎だった。炎はあっという間にフウァールを囲む。
「くっ!」
フウァールは周囲を見回すが隙がない。木々に燃え移っていて上にも逃げられない。すると突然、大きな旋風が表れてフウァールを巻き上げた。
「うわぁぁ!」
ドスンと柔らかい場所に落ちた。
『怪我はないか?』
「シルフ!」
それは最初に会ったシルフだった。
『やれやれ、危なかったな』
炎を消しているウンディーネを見ながらシルフは言う。そして炎から遠く離れた場所に降りる。
「フウァール!」
走って来たのはアッシャムスだった。後から王も来る。
「アッシャムス王子!ゲイル王!」
「大丈夫!?怪我はない!?」
「何とか…」
「全く…利発な子かと思ったら、思いもかけず危なっかしいんだな」
ゲイル王は苦笑いをする。
「申し訳ありません…」
「いや、怪我がなくて良かった。…シルフ。よくやった」
『ありがとうございます』
シルフは頭を下げる。
「…さて、何があったのかを城で聞くとしよう」
「はい」
フウァールはアッシャムスと共にゲイルの後を付いて行った。
「そうか…その剣には全ての精霊の力が込められていると…」
ゲイルはワインを飲みながら言う。
「はい。ジャック・オ・ランタンの霧も、森の炎も、あの剣を使って出したものです」
フウァールは美味しいジュースを飲んで言う。
「なるほど。確かにアッシャムスの剣はそう言う力がある。私はそう言う力はなく、スーラジも太陽神フレイの娘ではあるが力は弱い。アッシャムスは男ではあるが、力を継承していなくてな。少しでもその身を守れる様にノームに頼んで鋳造してもらったのだが…」
「…父上。あの剣を、処分しますか…?」
アッシャムスは言う。
「そうすればもしや未来から持って来たあの剣も消えるかも…」
「まあ、そう慌てるな。今消えてしまうと、フウァールが元の時代に戻る方法がなくなってしまう。悪魔を倒して、剣を奪い返してからの方が良いだろう」
ゲイル王は言う。
「あ、そうか…僕、あの剣でここに来たんだっけ。」
「ふふっ。盲点だったわね」
スーラジ王妃は笑って言う。
「…本当に伝え聞いていた通りだ」
フウァールは言う。
「え?」
「伝書で読んだんです。スーラジ王妃は太陽の様に光り輝いた姿だったと」
「まあ、お上手だこと」
スーラジ王妃は微笑んで言う。
「そんな事を書き伝えたのは誰なのかしら?」
「王の日記だったかと…」
「っ!」
王は思わずワインを吹いてしまう。
「ゲホッ!お、お前…!何を…!」
「王が森の中で王妃とであった時の事を書いていましたよね?書庫に残されていました」
「あら、そうなの?」
スーラジ王妃はゲイル王の顔を覗き込んで聞く。ゲイル王は顔を真っ赤にしている。本当に仲の良い夫婦だ。両親と同じだ。また父上と母上の元に戻れるのだろうか…もしこのままこの時代に取り残されたら…もう二度と父上と母上に会えなくなってしまったら…
「…フウァール?」
涙目になっているフウァールを見てゲイル王は目を丸くする。
「ぐすっ…ごめんなさい…父上と母上を思い出しちゃった…」
フウァールは涙を拭う。
「…フウァール」
スーラジ王妃はフウァールに歩み寄り、優しく抱き締めてくれる。
「大丈夫よ…太陽神フレイは貴方を見捨てはしない。必ずご両親の元に導いて下さるわ」
優しくゆったりとした声で言われると安心出来た。
「今夜はゆっくり休むといいわ。今日一日、色んな事があって疲れちゃったでしょう?」
「…はい…」
フウァールはそのまま目を閉じた。




