表の女王と裏の女王
!この小説を読むにあたっての諸注意!
・この小説は幻獣や精霊等が出て来ます。
・基本的にR18シーンはありませんが、ハグやキスだけはあります。
・精霊や幻獣の見た目などに関しては資料などを参考に、私の解釈で設定しています。
・私の妄想大全開の内容になっていますので、苦手な方は回れ右でお願いします。
以上の事が大丈夫であれば、どうぞお楽しみ下さい。
王国の神殿には沢さんの精霊が集まっていた。祭壇には5つの宝石が奉られている。その前に置かれた揺りかごにフウァールが寝かされている。
ブリーザは跪き、祈りを捧げる。村の祭壇にも4つの宝石が供物と共に捧げられている。エスパス王、フィルママン女王、イディル王、ヴァルト王は祭壇の天辺から見える太陽に向って片膝を突き、祈りを捧げる。
「太陽神フレイよ。今全ての宝石を捧げ、御前に額突き、永久の信仰を誓います」
宝石が光を放ち、村の祭壇に向って飛んで行く。村の祭壇からも光の束が飛んで来た。光は虹となり、祭壇同士の架け橋となった。地鳴りがする。村の周囲が光に包まれ、何かが姿を現す。その何かは村と城を囲い、高い城壁となった。
『…これが王国時代の要塞…』
バンシーは周囲を囲む要塞を見て言う。
「そして村には遥か昔に姿を消した石で出来た家が現れているはずだ」
ヴェントは祭壇の上にいるブリーザを見上げて言う。ブリーザは太陽の光を浴びてその加護を受けている。そしてフウァールも太陽神フレイの加護を受けている。ブリーザの身体は神々しい光を放ち、眩しいくらいだ。ブリーザは立ち上がり、揺りかごの中にいるフウァールを抱き上げる。振り返り祭壇の周りに集まった精霊たちを見回すと、フウァールを天高く持ち上げた。精霊たちから歓声が上がった。これで王国は安泰だ。
…と思ったのもつかの間、空に黒い固まりが現われた。
『ブリーザ女王!悪魔たちです!』
シルフが叫んだ。
「ヴェント。フウァールをお願い」
祭壇から降りて来たブリーザはヴェントにフウァールを託す。
『ブリーザ女王…』
ゴブリンが心配そうにブリーザを見上げる。ブリーザは微笑むと祭壇に上がって行く。祭壇の上にはすでに悪魔がいた。
『ブリーザ女王よ。久しいな。随分立派になったものよ』
悪魔は嘲笑う様に言う。その姿はまさにブリーザと瓜二つだ。背筋が凍る様なこの気配は悪魔のものとは思えない。
「…久しぶりですね。ブリーザ。村にいた時の私の弱い心、誰かを怨み妬ましく思う私の闇の心。王国の女王になった時に切り離されて以来ですね」
ブリーザは微笑んだ。
『お前はあれから女王として王国を治める様になった。そして私はお前たちに滅ぼされた魔王の後を継ぎ、新たな魔王となった』
魔王はニヤッと笑う。
「新たな闇の世界の女王よ。ご挨拶申し上げます。お前たちは何を望むのですか?」
『何を、か…そうだな。強いて言えば全て、かな?』
魔王は笑う。
『この王国も、女王の命も、全てを滅ぼす事こそ我が宿願。
…ブリーザ女王よ。お前は確かに私を生んだ。村の者たちを怨み、我らを蔑んだ者たちを憎み、憎悪を募らせた。今更改心した所でその憎悪がなくなる訳ではない。この手で村を滅ぼしてこそ、この心は満たされるのだ』
「私たちは村を守ります。例え私を阻害し軽蔑した者たちだとしても、私に許す心がある限り、私は村を守り続けます」
ブリーザは揺るがなかった。村の祭壇で太陽神に祈りを捧げている村人たちのために、ブリーザは負ける訳にいかなかった。
『…そうか。ならば仕方がない。殺れ!』
魔王の一声で悪魔たちが一斉にブリーザに突っ込む。しかしブリーザは不思議な何かに守られ、悪魔たちは弾き飛ばされた。
「…影の者たちよ。お前たちは確かに存在する。光があれば闇があり、陽のある所に影はある。お前たちと私たちはまさに表裏一体であり、どちらが欠けてもこの世は成立しない」
ブリーザは魔王を諭す様に言う。
「魔王は本来、王国時代の王が捨てた闇の心だと聞きました。つまり私たちが滅ぼした魔王は初代の王の一部…それが結果として王を滅ぼしたとは、何の因果だったのでしょうか…」
魔王は黙ってブリーザの話しを聞く。
「お前たちの居場所はこの私が責任を持って確保いたしましょう。私たちが暮らす世界の丁度裏側…そう。お前たちには私たちに寄り添う影となってもらいたいのです」
そう言うと、ブリーザの足下にある影が揺れ動き、ポッカリと穴を開けた。
「お前たちの世界は王の裏側、王の影の中に作られます。たとえ新たな王になろうとも、お前たちの世界は未来永劫王によって守り続けられる事でしょう」
『…太陽神フレイに守られし女王よ。お前は私たちを滅ぼさないと誓うか』
悪魔は鋭い目で言う。
「人間であろうと精霊であろうと、闇の心は必ずあるもの。お前たちを滅ぼそうというのはあってはならない事です。お前たちが太陽神フレイを滅ぼそうとしたのと同じ様に…
だからこそ、今ここで誓います。私たちはお前たちの世界を滅ぼさない。未来永劫、その誓いは破られる事はないでしょう」
すると、ブリーザの側に一つの宝石が現われた。銀色に輝く宝石はブリーザの手の中で鈍く光る。
「これはギベオンと言う名の宝石です。お前たちを守り導くための宝石。この宝石を継承して行く事こそ、私たちとの誓いが守られて行く証しです」
ブリーザは目の前にいる悪魔に宝石を手渡した。
『…ブリーザ女王。我々はここに誓う。もう二度と、お前たちの世界を滅ぼさないと』
悪魔は宝石を受け取ると、ブリーザの影の中に入って行った。それを見た悪魔たちが我先にと影の中に飛び込んで行く。悪魔たちが全員影の中に入ると、ブリーザは入り口を閉じた。
「…光が生まれ、影が生まれる。光が生き、影が生きる。光が滅びた時、影も滅びる。闇の者たちよ、永遠なれ」
ブリーザはそう言うと、祭壇に向き直り祈りを捧げた。
夜になり、ブリーザは揺りかごをそっと揺らす。フウァールはぐっすり寝ている。ゲリンゼルが作ってくれた掛け布団を肩まで掛けてやる。ヴェントが寝室に入って来た。
「寝たか?」
「うん。寝付きが良いみたい」
ブリーザは微笑んで言う。揺りかごを覗き込むと、可愛らしい寝息をたててフウァールは眠っている。生まれた時よりも少し成長している様な気がする。
「男の子だから精霊の力が強いわね。成長が早いわ」
ブリーザはフウァールを見つめて言う。
「1週間くらいでもう歩ける様になるって言ってたな」
「そうなったら大変ね。城中走り回る事になるわ」
「シルフだもんな」
「そうね」
クスクスと笑い合う。ふとブリーザの笑顔が愛おしくなる。そっと抱き寄せてキスをする。
「…ん。どうしたの?」
「さあな」
ヴェントはそう言ってブリーザを抱き締めると、ベッドの中に潜り込む。
「…珍しい。ヴェントが襲って来ないなんて」
「なんだよ。襲って欲しかったのか?」
「…駄目?」
ヴェントはキョトンとする。
「…どうした?熱でもあんのか?」
「失礼ね、もう」
ブリーザは苦笑してヴェントに擦り寄る。
「私だって甘えたい時はあるのよ」
そう言うと、ヴェントはククッと笑う。
「もう嫌だって言っても止めないからな」
「言わないもん…」
2人はどちらともなく唇を寄せた。




