9個の宝玉と天空の国
!この小説を読むにあたっての諸注意!
・この小説は幻獣や精霊等が出て来ます。
・基本的にR18シーンはありませんが、ハグやキスだけはあります。
・精霊や幻獣の見た目などに関しては資料などを参考に、私の解釈で設定しています。
・私の妄想大全開の内容になっていますので、苦手な方は回れ右でお願いします。
以上の事が大丈夫であれば、どうぞお楽しみ下さい。
『…ブリーザ、寒くないかの?』
「うん、大丈夫」
膝の上にいるケット・シーに言われて答える。
『ケット・シー暖かいもんね!膝の上に乗ってたら膝掛けいらないね!』
ブリーザの肩の上で座っているコロポックルは言う。
「ホント。この時季は助かるわ」
ブリーザはケット・シーを撫でる。
『お腹を冷やしては赤子の機嫌を損ねてしまうからな…気をつけないとな』
側に立つガルダは少し膨らんだブリーザのお腹を見て目を細める。
そう、今ブリーザはヴェントとの子どもを身籠っている。男の子か女の子かは分からないが、ブリーザの後を継ぐ王なのだ。精霊たちも楽しみで仕方がない様だ。ヴェントも毎日お腹に触れて話しかけている。まだ聞こえる状態ではないと思うのだが、とても嬉しそうなのでそっとしておく事にした。
『ブリーザ。具合はどうだ?』
そう言って『王の間』に入って来たのはノームだ。
「大丈夫よ。どうしたの?」
『ヴェントと書庫の本を調べていたのだが、興味深い文献が見つかった』
ノームはブリーザの椅子の手摺に座り、持っていた分厚い本を開く。
『王国時代、村には王を守るために精霊の血を引く者がいた』
『今のフラム、テール、ゲリンゼル、プーヨ、シャグランでしょ?』
コロポックルは言う。
『そうだ。しかし、村にいた精霊の血を引く者は9人だったらしい』
『つまり、村にはまだ精霊の血を引く者がいるという事かの?』
ケット・シーは身体を起こし、ノームの開いている本を覗き込む。
『いや…あの村は王国が滅んだ後、一度侵略されている。その中で命辛々逃げお失せた村人もいるらしいからな』
ノームはブリーザを振り返って言う。
「…昔、パパから聞いた事がある。王国が滅び、火山が噴火した後、村は外から来た者たちに侵略された。侵略者は村人たちを奴隷とみなし、朝から晩まで働かせ満足に食事も与えなかった。村人たちは飢えに苦しみ、命を落とした者もいた。そして、そんな村で死を待つだけならと村を決死の覚悟で逃げる者もいた」
『うむ。そして、逃げお失せた村人たちは自らの血族で集落を築いたと』
『集落?』
ガルダは眉根を寄せる。
『この本によれば、空に2つ、地上に1つ、地中に1つ、精霊の血を引く者が作った集落があるそうだ。しかも、その者たちは宝石を持っている』
「宝石を?あの5個の他にまだあるの?」
ブリーザは聞く。
『その様だ。宇宙を包んだアメジスト、森を閉じ込めたクロムダイオプサイド、牧歌の音色が聞こえるヘソナイト、そして天空を吸い込んだカイヤナイトだ』
「集落か…」
『しかし解せないのぉ…魔王の騒動はわしらが言わずとも分かっただろうに。何も来ないとはな…』
ケット・シーは唸る様に言う。
「…分かる気もするけどね。村を逃げて、自分たちだけ助かった。いわば村の人たちにとっては裏切り者の集落だから、今更助けに来たと言っても村の人たちが受け入れるかって言ったら…」
『難しいだろうな』
ガルダは言う。
『しかし、村にとっても城にとってもこの4つの宝石は必要だ。何しろこの宝石が9つ揃っている事で王国と村は守られていたのだからな』
「どういうこと?」
ブリーザは首を傾げる。
「王国時代、9つの宝石が全て揃っていたからこそ王国と村は確固たる強さと太陽神フレイの守護を手にする事が出来たんだ」
ヴェントは『王の間』に入って来て言う。
「どういうこと?」
ブリーザは聞く。
「9つの宝石を持つ英雄たちは、王国時代に城を守護していた戦士だった。9人は太陽神フレイの守護を受け、城と村を守っていた」
『ある日、魔王は王国を襲った。9人の戦士は魔王を追い払おうとした。その戦いの中で、戦士の内の1人が命を落としてしまった。それがバンシーの血を引いていた者だ』
ノームは言う。
『なるほどのぉ…王がパールを持っていたのは、それを持っていた戦士が亡くなってしまったからじゃったのか』
ケット・シーは納得した様に言う。
『魔王は心が弱っていたアッシャムスに取り憑き、王国を衰退に追い込み、そして滅ぼしてしまった。アッシャムス王の代になり、パールをその手中に収めた魔王が目論むのは当然、他の宝石。残り8つの宝石だった』
ガルダは腕を組む。
『村は侵略者によって支配されていた。魔王にとっては格好のタイミング。侵略者の中の頭に取り憑き、村の財宝を差し出させた』
コロポックルは頷く。
『当然、魔王の狙いに気が付いた戦士たちはとにかく宝石を守る方法を考えた。そこで思いついたのが、森を抜けて行った先にある村に助けを求める事。そこで4人の戦士が村を脱出し、森の中を彷徨う事になった』
ノームは本を撫でながら言う。
「そしてどう言う経緯だったかは分からないが、先に逃げていた村人たちが村を救うために戻って来た。そうなると気になるのが、どうして戦士たちが戻って来なかったかだが…」
ヴェントは唸る。
『王国が再建されるまで、あの荒廃した村と城に戻っても太陽神フレイの守護を受ける事は敵わない。しかも侵略者たちの支配によって、王国や精霊たちの存在、ましてや太陽神フレイの事を信仰する者も少なくなってしまった。戻っても無駄だと分かれば、とにかく宝石を守る事を優先して考えたかも知れんのぉ』
ケット・シーはブリーザの膝に寝そべって言う。
「宝石を守るために、あえて村には戻らなかった。魔王が追い払われたとは言え、残ったのは滅びた王国と信仰心を失った村じゃあね。またいつ魔王に襲われるかも分からない場所に戻るよりは自分たちで集落を築いて行った方が良い」
ブリーザはため息を吐く。
『しかし、この王国を守るためには、もう一度戦士を呼び戻す必要があるぞ』
ガルダは言う。
「そうね。とりあえず、一番近い場所にある集落は何処?」
ブリーザは聞く。
『そうだな…ここからだと、ユニコーンの集落とペガサスの集落だな。この2つは隣り合わせで建っているそうだ』
ノームは言う。
「じゃあ、ユニコーンとペガサスに言って。例によってノームも行って欲しいの。あと、ガルダもお願い。何かあった時に、今の私じゃ戦えないから」
「おい、その荷重で行くのは危険だ。こっちが気がきじゃなくなる。俺が行くから、ユニコーンとペガサス、ノームと俺だ」
ヴェントはノームを見て言う。
『王の御意のままに』
ノームはそう言って椅子を降りると、旅支度をしに部屋を出て行った。
「ヴェントにばっかりやらせる訳にいかないもの。それに、助けを求めるのに私が行かないと…」
「妊娠中だって言ったら向こうだって納得してくれるさ。今は子どもの事も考えないとな」
ヴェントはブリーザのお腹に触れて言った。
「そりゃそうだけど…」
『…ブリーザ。ヴェントの言う通りじゃ。今のブリーザは大人しくしていた方が良い。何かあっては困るからのぉ』
ケット・シーは目を細めてブリーザを見上げる。
「…お願い」
「ああ、任せとけ」
ヴェントはブリーザの頭を撫でて『王の間』を出て行った。
「よし。行くか」
ヴェントは旅の支度を済ませて言う。
ペガサス、ユニコーン、ノームも準備万端だ。
城の天辺に位置する高見台から出発する事になり、精霊たちが見送りに出て来ている。
「気を付けてね」
ブリーザは心配そうに言う。
「ああ、行って来る」
ヴェントはちょこんとキスをしてペガサスの背中に跨がった。
『行くわよ!』
ペガサスはそう言って一気に空へと舞い上がった。空白も一つない晴天。まさに絶好のタイミングといた所だ。
「しかし、まさか空の上に城があるとはな…」
ヴェントは言う。
『誰も知らないでしょうね。私もシルフィードに招かれて城に住む様になってから、行くのは初めてなのよ』
ペガサスは言う。
『ペガサスとユニコーンは古くから仲が良くてな。ユニコーンの集落と並ぶ様にペガサスの集落があるんだ。とは言え、俺も行くのは久しぶりだからな。集落がどうなってるのかは分からないけど』
ユニコーンは背中にノームを乗せて言う。
『私も天空の集落というのは初めてだ。何しろ対局の世界で暮らしている種族だからな』
ノームも言っている。
「ん?あれか?」
ヴェントの指した先には確かに、左右に大きな大陸と雲が浮かんでいるのが見えた。
『あれがペガサスとユニコーンの集落か…』
ノームは目を細めて言う。
『雲の上に建っているのがペガサスの城ね』
『という事は、大きな大陸みたいなのがユニコーンの集落か。どっちから行く?』
ユニコーンはヴェントを見る。
「とりあえずペガサスかな。近いし」
ヴェントは言う。
『了解。行くわよ!』
ペガサスは雲の上を目指して加速した。
雲の上の街なのに大きな海が広がっている。沢さんの家があり、奥の方には城もある。
『どうする?直接城に入る?』
「いや、それは失礼だ。あそこに大門がある。そこに降りよう」
一行は城の大門の前に降り立った。門番はビックリした様な顔をしている。
「俺はヴェント。地上にある村の外れにある城の王妃の夫です」
『地上の…もしや太陽神フレイの城か!』
美しい女性の門番は言う。
「はい。是非、この城の王にお会いしたいのですが…」
『何用かな?』
もう1人の門番の女性が言う。
『端的に言えば遥か昔、地上の王国時代にいた9人の戦士の力を、我らがブリーザ女王が必要としている。この城にはかつて王を守るためにあったカイヤナイトと言う宝石があるはずなのだ。ペガサスの血を引く戦士がその宝石の力を借りて王を守っていた』
ノームは言う。
『…その話しなら聞いた事がある。伝承でだがな』
門番は言う。
『女王に伝えよう。少し街の方で待っていてはくれないか?』
「分かりました」
ヴェントは答えて街の方に向った。
『ふぅん。昔より繁栄してるわね』
ペガサスは辺りを見回して言う。
「村よりも人数が多いな。ペガサスは女性が多いんだろ?」
『そうね。ノームとは反対に一夫多妻なの』
ペガサスは人の姿になり答える。
「なるほどな」
街には確かに見目麗しい女性が多い。真っ白な翼を持ち、美しい容姿をしている。街の人たちはヴェントたちを物珍しそうに見ている。
『これでも男性は多い方ね。やっぱりペガサスの血筋だけじゃないからかしら』
「人間の血が入ってるからか?」
『そうでしょうね。この街の人は皆親戚みたいなものよ。王は雲の上に助けを求め、そこに暮らしていたペガサスたちの街に入った。
しかし、ペガサスたちも主を失ったばかりで内紛で混沌としてたわ。そこにペガサスの血を引く地上の戦士が来た』
『戦士はこの街の王になる事で平穏をもたらした。その時には村は侵略から解放されていた。戦士は宝石を守るために、この街に城を建てた』
ノームは人型になったユニコーンの肩に座って言う。
『戦士はどんな気持ちだったんだろうな。4人全員に言える事だけど。結局は村を見捨てたと言われても仕方のない状況だからな』
ユニコーンはため息を吐く。
『…自責の念にかられていたと、伝え聞いております』
聞き慣れない声に振り返ると、そこには美しいペガサスがいた。
『遅くなりました。私がこの街の王の、フィルママンと申します』
ペガサスは人型になって頭を下げる。
「いえ、突然申し訳ありません」
ヴェントも頭を下げる。
『話しは聞きました。今一度、戦士の力が必要だとか…』
「はい。魔王は何とか滅ぼす事が出来ましたが、何時また狙われるか分かりません。遥か昔、王国が滅んだ後に起きた侵略の時代をまた繰り返すわけにはいかないのです」
『…よく分かりました。しかし皆様もお分かりの通り、我が祖先は村を自らの手で守れなかった事をとても悔やんでおられたと伝え聞いています。その自責の念に耐えかねて、自ら命を絶ってしまったくらいに…』
『それは初耳だ。まさか自殺していたとは…』
ノームは眉根を寄せる。
『幼い子どもを残して命を絶ってしまったため、子供は大変悲しんだと聞いています。その子どもが亡くなった母親の代わりに王位を継承し、街を繁栄させて行ったと言われています。そして宝石ですが…』
「城にありますか?」
『もちろんです。城の、街の宝として守られています。
しかし問題は、初代の女王が亡くなられて以降、共鳴した者がいないという事です』
フィルママンは困ったように言う。
「では宝石の力は…」
『今はまだ封印されたままです。共鳴しない原因は分かってはおりませんが、おそらくは最初の女王が自ら命を絶ったからではないかと言われています』
『なるほどな。あり得るかも知れないな。でも、地上に行って祭壇の宝石の近くに持って行けば何とか…』
『それが出来ないのです』
ユニコーンの言葉を遮る様に言う。
「と言うと?」
『宝石は触れる事すら許してはくれない。私も共鳴しておらず、故に宝石に触れる事が出来ないのです』
『拒否されるのか…それは困ったな…』
ノームは腕を組んで言う。
『それだけではありません。現在ユニコーンの街ともめており、連携が取れない状態なのです』
『喧嘩?』
ペガサスは首を傾げる。
『どうやらユニコーンの城の者たちがこちらの悪口を言っていたと…直接聞いた訳ではないので詳しくは分からないのですがね』
「それで話し合いが出来ない状態だと…」
『はい。ユニコーンの方、つまり王であるエスパスはそんな事は言っていないと言っておりました。
しかしこちらの者たちがかなり怒っているので、どちらも感情的になってしまっていて…』
『ユニコーンの方と何とか仲直りしてくれないと、地上に行っても協力できないわよ』
ペガサスはヴェントを振り返る。
「そうだな…とりあえずお互いの城の者たちに話しを聞きたいな。ペガサスたちはその悪口を直接聞いたのか。またユニコーンの方もそう捉えられてしまう様な事を言わなかったかどうか」
『…俺が聞いて来る』
ユニコーンはそう言って、ノームを降ろすと軽やかに飛び去って行った。
ヴェントたちはペガサスの城に招かれていた。香りの高いエスプレッソにケーキが出されている。
『このエスプレッソとケーキは、特別なお客様がいらっしゃった時に出される物なんですよ』
フィルママンはそう言っていた。出された紅茶は地上では飲んだ事のない様な香りのするもの。ケーキは巻貝型のパイ生地にリコッタチーズを使ったクリームが入ったスフォリアテーラと言うお菓子だとペガサスが教えてくれた。出されたエスプレッソとよく合う。部屋の扉が開き、豪勢な装飾を施されたカートが運ばれて来た。ペガサスは懐かしい様で、嬉しそうに食べている。
『フィルママン様。お持ち致しました』
側近なのであろう女性はフィルママンに言う。
『ありがとう。…これが、我が城に伝わる宝石、カイヤナイトです』
フィルママンは言うが、それは祭壇に奉納されている宝石とは違っていた。宝石は光を失い、鈍い霧の様な物を漂わせている。
『…宝石の力が封印されている。これでは確かに私ですら触れる事は叶わないな』
ノームは宝石を見つめて言う。
『宝石は歴代の王を拒み続けております。地上で魔王の一件があったと聞き加勢したいと思っておりましたが、宝石が力をかしてくれない今、いくら王と言えど丸腰と同じ。ブリーザ女王の足手まといになるだけと判断し、ここから太陽神フレイに祈る事しか出来なかったのです』
フィルママンは静かに言う。
「そうだったんですか…」
ヴェントは頷いた。
『しかも、魔王が滅びた直後にユニコーンの所との内輪もめが始まってしまい、ブリーザ女王にご挨拶を申し上げる事も出来ずに月日が経ってしまいました。』
「魔王が滅びた直後…」
ヴェントは眉根を寄せる。
『どうしたの?』
ペガサスはヴェントを見て首を傾げる。
「いや。そう言えば魔王を倒した後、悪魔たちが一斉に退避したけど、彼奴らはそんなに諦めの良い奴らじゃないと思うんだ」
ヴェントの言葉にノームは目を細める。
「悪魔たちは何としても魔王を蘇らせたいと思っているはずだ。その為には宝石の力を浸かってブリーザを動けなくする事が俺たちにとって一番の痛手だという事も分かっている。でも、祭壇の宝石には手を出せない」
『…それならばと他の4つの宝石を狙おうと企んだ。まず手始めに、王と共鳴していないカイヤナイトを』
ノームは言う。
『しかし、私だけではない。他の者も宝石に触れる事は出来ないのですよ?』
フィルママンは動揺を隠せないでいる。
『…悪魔たちにとっては誤算だったでしょうね。共鳴していないばかりか、触れる事さえ出来ないなんて思ってなかったでしょうから。あれじゃあ祭壇の上の宝石と同じね』
ペガサスは言う。
『そこで予定を変更してユニコーンの方に取り憑く事にした。ユニコーンにペガサスの悪口を言わせて争わせる事によって、平穏を掻き乱し宝石を奪おうと…』
ノームは唸る。
『では、ユニコーンの方が私たちの悪口を言ったというのは…』
「悪魔たちの策略、という可能性もあります」
ヴェントはフィルママンの言葉を拾う。
『どうやらヴェントたちの推理は正しいみたいだぞ』
そう言ってユニコーンが入って来た。その姿は傷だらけでボロボロだった。
「ユニコーン!どうしたんだ!」
ヴェントは目を丸くする。
『ヴェント王。すぐにユニコーンの城へ。魔物たちが街を襲い、人々が内戦を起こしている。エスパス王が止めに入っていたが、大怪我をしていて何とか城に避難させたが…』
「…!ペガサス!ノーム!直ぐに行くぞ!」
ヴェントは急いで城をでた。
新年明けすぎましておめでとうございました。←
第三章を投稿していきます。よろしくお願いします。




